一般財団法人上月財団
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事業紹介

第14回上月情報教育研究助成 論文要約


保護者向け啓発用情報モラル研修パッケージの開発


岡山県情報モラル教育推進協議会

代表 石井 聡

岡山市立伊島小学校(岡山県)
(前任校:岡山市立五城小学校)


 本研究では、主にPTA総会や学年の保護者会での活用を想定し、保護者向けの啓発用情報モラル研修パッケージを開発した。研修パッケージの中身としては、研修会のプログラム、その際に提示するプレゼンテーション、学習指導案、配付資料などからなる。小学校中学年児童、高学年児童、中学生、高校生を持つ保護者を対象として、各段階の研修パッケージを作成した。

 研修内容としては、情報モラルの中で、インターネット等でのトラブルから身を守る「情報安全教育」に重点を置き、児童生徒の発達段階に応じた内容を保護者にも研修してもらうものである。

 具体的には、次のようなアプローチを行った。

  1. 先行研究の分析
    情報モラル指導に家庭や地域社会がどのようにかかわっているかを、研究発表や教育委員会の取組、各種団体が実施したアンケート調査の結果を分析した。

  2. 保護者向けの啓発用研修パッケージの開発
    人権教育の研究授業とその後の懇談会及びPTAの総会での活用を想定し、プレゼンテーション、学習指導案、配付資料などからなる研修パッケージを学校種毎に作成した。

  3. 研修パッケージを用いたPTA総会や保護者会等での実践
    研究メンバーが所属するいくつかの小学校、中学校、高等学校のPTA総会や保護者会等で実際に研修パッケージを活用し評価した。

 実践の機会は数多く設けることはできなかったが、授業での児童生徒の反応や、懇談会後の保護者の感想から、おおむね目標は達成できたと考えられる。今後の課題として、社会教育、生涯学習との連携を視野に入れていくことが挙げられる。


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小学校における表現力・思考力育成に視点を置いたSqueak活用授業


グループ研究

代表 荻田 弘樹

四日市市立八郷西小学校(三重県)


 著者の勤務校では、コミュニケーション力育成のための取り組みを進めてきた。話す力や聞く力は以前より身についたが、一方的に自分の考えや思いを話すことに留まっているようであった。子どもたちには、聞き手を意識した「聞いてほしい」といった他者を意識した自己表現が必要であると感じた。そこで、子どもの表現力・思考力を育成するソフトウェアとして注目されているSqueakに着目した。学校現場ではSqueakを利用した活動はまだまだ少ない。本研究では、Squeak活用授業の創造を目的とし、総合的な学習の時間を用いて実践を行った。同時に、授業遂行のための支援法についても考察した。子どもたちの多くはSqueakを使った活動を楽しんでおり、自分の感じていることを表現しようと一生懸命であった。また、自作マニュアル(スクイークナビ)やWeb作品集による支援法の有効性が認められた。


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情報端末を用いた協同学習環境で育てる児童の情報リテラシー


神村学園 初等部

代表 神村 裕之

神村学園 初等部(鹿児島県)


 近年のIT(情報技術)の発達は著しく、社会の様々なシステムのみならず、身近な生活の中にも溶け込み、インターネットやメールが普及している。これは、教育現場においても同様で、様々な形で教育の中に活用されている。だからこそ、これからの社会を生きていく児童にとって、コンピュータに関する知識、スキル、モラルなどを身に付けることは必須である。コンピューターを利用して情報を効率的に収集し、効果的に情報機器を活用し、コミュニケーションしていくことは、これからの社会(ICT)を生きるうえで重要な資質であると考えた。

 さらに、教育現場における授業形態も変わりつつある。これまでは情報も中央都市部と地方都市では格差が大きかったが、近年地方にいても多くの情報を手に入れることができるようになり、情報に関しては、中央都市と地方都市との差が少なくなっているのを感じる。しかし、学習環境(専門的分野のエキスパートの授業や講義を聴く・大きな博物館などを見学するなど)に関しては、都市部との格差はぬぐいきれない。故に、地域に関係なく良い授業を多くの児童・生徒に提供したいというのが、地方で子どもたちを導く教職員の願いでもあり、本研究がねらう大きなテーマである。

 そこで本校では研究実践の場として、社会科・理科・総合的な学習(英語・交流)などの各教科の学習の中に位置づけた。交流学習や遠隔協同学習を通して、それらが目的とする学習内容のみならず、情報教育が目的とする「情報活用の実践力」や「情報社会に参画する態度」の育成を図ることもねらって研究を進めた。その中で育てたい能力としては、共同/協調作業能力、情報活用・情報発信能力とコミュニケーション能力の向上を掲げ、研究を推進してきた。具体的には、1年生から6年生まで様々な教科で実践してきた。その中で、算数科「複合問題」(鹿児島にいながらにして、東京の教授の授業を受ける。)・総合的な学習「CMづくり」(鹿児島・北海道・沖縄など計7校でそれぞれの地域の紹介をする)などをここでは中心に紹介する。更に、限られた教員のみならず学校職員全員が、コンピューターに関する知識、スキル、モラルを理解し、一般教科学習の中でもコンピューターを活用した授業が出来る様、校内研修体制を確立し、研究・実践してきた。


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論理的・科学的な思考力を育成する課題解決学習の開発と情報教育の実践


徳島の情報教育を考える会

代表 定國 雅洋

小松島市立児安小学校(徳島県)
(前任校:羽ノ浦町立岩脇小学校)


 現代の子どもたちは、答のはっきり分かる事象や問題(例えば算式や穴埋め、拓一問題)に対しては、その解決のために意欲的に取り組み、結果として、基礎的・基本的な知識と技能を習得することができている。しかし、課題解決を必要とする場面(例えば文章問題や意見発表、実験の考察)では、自分の意見を構築したり、知識や技能を活用して課題を解決したりすることを苦手と感じている子どもたちが多い。

 そこで私たちは、子どもたちが苦手としている知識や技能を活用したり応用したりする力の中で、特に「論理的・科学的な思考力」を育成することを目的として、研究に取り組んだ。前提として、「論理的・科学的な思考力は、子ども自身が主体的に課題解決に向けて、情報を収集し、分析、総合、比較、関係づけしていく中で、自分なりの判断を発信する過程で育成される。」と私たちはとらえた。このように考えたときに、論理的・科学的な思考力とは、情報教育で育成すべき力である「情報活用の実践力」と深く関わっていることに気づいた。

 それゆえ、この思考力を育成する第一歩として、日々の学習活動と情報教育の目標リストとを照らし合わせ、深く関わっている部分を洗い出した。そして、さらに、「情報教育の目標リスト」の<課題解決における情報活用>の内容を学習場面に位置づけることで、有益な結果を導きだせるのではないかと考えた。

 このような認識に立ち、本研究では、

  1. 「論理的・科学的な思考力を育成する課題解決学習」を開発する
  2. 課題解決場面での学習活動と情報教育の目標との関連を明らかにする

ことを目的として、研究を進めた。

 情報教育の目標と深く関わっている単元について授業を実践したところ、基礎的な知識と技能の習得とともに、論理的な考え・科学的な視点を表現する子どもたちが増加した。これは、教師が単元構成において、情報教育の目標と学習活動とを意図的に関連づけたことが発端であり、次に教師が、「情報教育の目標リスト」を意識することで、子どもが学習課題に主体的に取り組めるような指導やことば掛けをして、考え方を示す道標となった。加えて、情報を判断、処理し、伝えたい相手に的確に伝えることができるような時間を設けて授業をしたことも、功を奏したと考えられる。このような実践の積み重ねにより、子どもたちの論理的・科学的な思考力が養われ、将来、実社会でも活かせるのではないかと考えている。

 また、課題解決の過程で、課題を表や記号などのモノに置きかえるときに、教師が情報手段を適切に活用し誘導することで、論理的な考え方の支援をすることができた。これは、論理的・科学的に考える力は、課題をモノに置きかえることで問題を構造的に単純化し、解決に導く力であるととらえることができ、考える力の育成と教師の適切な指導が適合した場合、子どものポテンシャルを引き上げることができるからである。

 このように、論理的・科学的な思考力を育成するためには、情報教育との関連を考慮し、適切な課題を与え、解決する学習を繰り返し行うことが有効であると考えられる。


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情報の科学的な理解を深めるためのプロジェクト型学習教材の開発に関する研究
〜 情報教育における試行活動と教え合い活動を重視した問題解決学習の設計 〜



個人研究

佐藤 和浩

千葉市立千城台東小学校(千葉県)
(前任校:千葉市立おゆみ野南小学校)


 本研究は、情報教育の柱とされている情報活用の実践力、情報の科学的な理解、情報社会に参画する態度の中から、小学校段階では実践の少ない情報の科学的な理解に焦点をあてた。

 情報の科学的な理解を深めるために、プログラミング体験やロボットの制御体験を取り上げ、さらに共通の課題を提示したグループで試行活動と教え合い活動を行うことによって、学習の効果が上ることを確認した。


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情報活用能力を身につける情報教育の単元及びテキスト開発
〜 小学校における情報社会の仕組みを考える学習の効果 〜



ITTD(情報テキスト開発研究会)

代表 谷口 義昌

鳥取市立醇風小学校(鳥取県)
(前任校:鳥取市立福部小学校)


 社会の進展により、情報社会は多くのメリットをもたらしている。子どもたちも情報社会の一員として影響を受けることも少なくない。そのため、小学生から情報社会に参画する態度を養うことが必要となってきている。小学校段階において情報社会に参画する態度を養うためには、社会における情報の役割について取り上げて学習することが有効ではないかと考えた。

 そこで、情報がやり取りされることにより私たちの生活が支えられている事例を教材とした小学生向け情報教育用テキストを作成した。情報がやり取りされることによって支えられている社会の仕組みについてテキストを用いて学習することによって、情報社会の仕組みに気づき、情報の果たしている役割について考えることができる。

 そのために、“食品の流通と情報活用”及び“献血と情報活用”の2つの単元を開発し、テキスト化した。日常生活の中で当たり前のようになってしまっている情報をもう一度取り上げて学習することで情報に興味関心を持ち、そういった情報社会の中で具体的に自分たちがどのようなことに気をつけて生活していけばよいのかを考えることができるようになった。日常的によく聞く情報という言葉にきちんと向き合い、学習することで、子どもたちに学習成果をもたらした。子どもたちに自分自身の学習した成果を実感できるようにワークシートも作成した。

 作成したテキストは、中国地方を中心としたメンバーで、議論をし、深めていった。限られた地域のみではなく、幅広く活用できることやいわゆる情報教育主任のように情報教育を得意とする教員以外でもやってみたいと思えるものをイメージしながら作成した。そのため、作成したテキストは、主に児童が使う児童用テキストだけでなく、いわゆる指導書的な教師用テキストと2種類作成した。児童用のテキストを見ただけでは、学習のねらいやポイントは理解できない。そこを教師用テキストで補完した。

 子どもたちに情報活用能力を育むためには、単発的な学習活動ではなく、積み上げがかかせない。そのためには、学校のカリキュラムの中に位置づけられる必要性がある。そこで、複数の教師が同じ視線で授業実践にのぞむことが出来るように指導案も作成した。

 以上のように作成してきたテキスト・指導案・ワークシートに授業時に活用する画像を含めて、授業用のパッケージとしてまとめ、WEB上に公開用サイトを構築し、広く、授業実践活動をひろめていく。

 今後は、今回の研究を通して得たテキスト作成のノウハウを活かし、児童の実態に合わせて、テキストを加筆修正したり、活用実践者との交流をしたりしながら、新たなテキストも開発していきたい。


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情報活用能力を基にした“生きる力”の育成
〜 自ら学び、課題解決に向かう子どもを育てる 〜



京都情報教育グループ

代表 寺田 潤子

京都市立伏見住吉小学校(京都府)
(前任校:京都市立藤城小学校)


 平成15年度より、校内LANが京都市内で構築されはじめ、情報教育を推し進めていくことの大切さが教員の間でようやく認識され始めたというのが現状である。そこで、情報教育の実践研究、および取り組んだ内容について京都市内の学校へ、個々の教師にひろげていくことを目的としてグループを立ち上げた。

 研究グループの会員は、京都市情報教育推進センターの委託を受け、情報教育の推進役として活躍しているメンバーであり、情報教育カリキュラム作成やICT機器の有効的な活用・教材コンテンツ・情報モラル教材の開発等に携わってきた。

 本研究グループでは、「生きる力」としての情報活用能力の基礎とは何かを探り、子ども達が主体的に生きていくために、情報や情報手段を自ら活用し、問題解決できる方法を身に付ける学習活動をどう展開したらよいかを考え、汎用的な情報教育のモデルカリキュラムを開発し、実践・検証していくことを目的とした。

 情報教育のねらいとしての「生きる力」の育成のために、基礎・基本の習得と共に、自らの問題解決のために情報手段を適切に活用し、収集した情報を整理・要約し、新しい情報を創り出し、発信する力―情報活用能力―を身に付けることによって、より豊かな見方や考え方を生み出すことができる。そのために、各教科・総合的な学習の時間の学習において、関連性を考えた学習をプロジェクト学習として、子ども達に確かな学力を身に付けさせるために、授業実践を通して考察していった。その中で大切にしたことは、常に相手を意識しながら情報を活用できるコミュニケーション能力の育成であり、国語科・各教科を貫く言語能力の育成のための実践プログラムを基礎・基本の力の習得として進めていった。このような観点で、各校で情報教育のねらいが達成できるような実践ができるよう研究を進めていくようにした。

 子どもが自分で課題を見付け、自ら考え、課題を追求していく中でわかる喜びを味わい、確かな学力を身に付けていくこと、さまざまな学習活動の場面での問題解決を通し、達成感や充実感を味わい、獲得した知識・技能を基盤として、自分の夢や生き方を探究していこうとする生き生きと活動する姿を目指し取組を進めている。また、自らが伝えたいことを表現し、それを受け取った相手は内容を理解し、さらに自分の考えを付け加えて表現するという双方向の伝え合いである、コミュニケーション能力はすべての学習の場で共通に求められる能力であり、その育成を通して、自己のアイデンティティが確立されていくと同時に、相手を思いやる心も培われると考える。

 また、現在構築されつつある校内LANを有効活用したプログラム作りや教材コンテンツ・情報モラル授業の試行実践にも取り組み、京都光ネットに発信し、教材の提示を行った。


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地域の人々と連携し、地域の素材を活用した動画コンテンツづくりを通して、
子どものコミュニケーション能力及び情報リテラシーを向上させる方法についての研究



高知ネット

代表 西本 文雄

高知市立昭和小学校(高知県)


 子ども自身がビデオカメラで撮影した動画を編集しテレビ番組として完成させるという活動を通して、コミュニケーション能力と情報リテラシーを向上させるという実践を報告する。

 この学習では子どもが音声、映像(動画)、テキストを扱い自分で調べたことを他人にわかりやすく伝えるためにはどのような工夫をすればよいのかということを学ばせたい。教員自身が初めて行う学習内容であったので、プロの方から様々なことを教員自身も学びながら学習を進めることとした。

 地域で活動している団体から子どもたちに番組作りの依頼があったという設定で、子ども自身が動画のコンテンツ作りを行うのか、行わないのかの決定をすることから始めた。そして子どもたちがもつテレビ番組に対するイメージの集約を行った後、テレビ番組を完成させるためにはどのような学習を行いたいかということも子ども自身に決定させた。教員が学習計画の決定をするのではなく、子どもがどのような方からどのような内容を学習したいかということを決めることによって子ども自身に学習に対する責任をもたせるようにした。そして、どのような人から何を学びたいかということが決まると、地域で活動している団体に依頼し、講師の選定および調整をしてもらった。教員だけのネットワークでは講師を選定する際に無理な場合も出てくるが、地域の団体が間に入ることにより様々な方に指導をしてもらえるようになった。

 子どもの活動は撮影技術の習得などの基礎的な段階と、自分たちでテーマをもって撮影・編集と行う段階に分かれる。テレビ番組完成という目的がはっきりしているので子どもの学習意欲も継続する。そして、個人で行う活動よりもグループで行う活動が多いため、意見を出し合い関わり合う中で、より良いものにしていくための話し合い活動が生まれる。その結果、今まではあまり仲のよくなかった子ども同士であっても自然と協力の輪ができるようになった。

 しかし、1年目では出来あがった作品を他校の小学生に見てもらうと大変わかりづらいという評価をもらった。作り手にとっては楽しさがあるし、自分たちがよくわかった内容であるのできっと視聴した人はわかりやすいと答えてくれるだろうと思っていたのにそうはならなかった。その原因として指摘されたものが話す言葉が速すぎるというものであった。

 2年目には1年目の反省をもとに計画を練り直した。1年目の子どもの作品を見せて、子どもたちに評価をさせることを行った。子どもたちは1年目の活動よりいいものをつくりたいという意欲を持ち、1年目のテレビ番組の長所と短所を見つけ、何をしたらよいのかを考えていた。その結果、2年目の作品はより違った工夫の見られる作品として仕上げることができた。


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自ら学びをひらき、心豊かな児童を育む図書館教育
〜 表現力(書く力、伝え合う力)豊かな児童の育成をめざして 〜



南部町立会見小学校

代表 三上 恵子

南部町立会見小学校(鳥取県)


 本校は、鳥取県の西部にある山間の小学校で、全校児童数は207名。児童は読書が大好きでおよそ、1年間に1人あたり90冊の本を読んでいる。本校は、図書館教育を学校運営の中核に据え、児童に豊かな感性(読書指導の面から)と確かな学力=情報活用能力(調べ学習から)をつけようと研究している。

 本県では司書教諭が全校配置となっており、本校の司書教諭も全学級に授業に入り児童に力をつけている。司書教諭は、読書指導はもちろんのこと、調べ学習における“学び方”の指導、情報活用能力をつけるべく、情報機器の使い方も情報教育主任とともに指導を行っている。「情報教育年間指導計画」に沿って1年生から基礎・基本を指導し、6年生では、情報機器を目的に応じて使いこなせるように計画を立てている。それによって、児童は、課題解決のための情報を自ら収集・選択し、まとめる力が身についてきた。本校は、先導教科を国語科とし、全学級を授業公開し、読書指導や調べ学習の指導のあり方を研究し、教師の指導力向上にもつながった。

 そして、昨年度からは、調べ学習で分かったこと、自分の力でまとめたものを広く地域にも発信する力の育成に力をいれてきた。児童は、本年度になってから特に情報機器を使っての発信ができるようになった。学習発表会では、パワーポイントをつかって上手に学習したことを発表し、伝えたいことをしっかりと伝えることができた。さらに、今後も情報教育と図書館教育の密接なつながりを重視し、児童に確かな学力を身につけさせたい。そのために、教員もスキルを高め学年に応じた指導ができるよう、力をつけていくことが大切である。


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情報活用能力の育成につながる地域連携・校内研修の実践的研究


人吉球磨情報教育研究協議会

代表 溝口 博史

人吉市立中原小学校(熊本県)


 本研究では、教科や総合的な学習の時間などにおいて、児童の情報活用能力を育成することをねらいとし、地域に密着した情報教育の学習や情報教育に主眼を置いた校内研修を計画的・段階的に展開した。

 地域に密着した情報教育の学習展開では、テレビ会議システムを活用し、地域の公共施設との共同学習を継続的に実施することで、子どもの関心や意欲、思考力を高めるとともに、共同学習による学習効果を検討した。

 また、「情報社会に参画する態度」の育成を目標に、学校と家庭とが連携した情報モラル指導を重視し、ブログ活用を通した、情報の発信者として気をつけること、守るべき事を考える授業を展開した。子どもの意識調査から情報モラルの高まりを検証するとともに、保護者を対象とした情報モラル講習会を実施し、その効果を検証した。

 さらに、学校全体で情報活用能力育成を推進する際には、教師のICT活用指導力を高めていくことも重要な要素であると考え、そのための方策として、教職員への情報提供や情報交換の場としてのwebシステムの開発運用を行うとともに、校内研修の一環として、情報教育推進に関するe-ラーニングを用いた教員研修等を実施した。

 これらの研究実践を通して、テレビ会議システムを活用した地域施設との共同学習が、子どもの学習の意欲を高めるとともに、考えの明確化、発表力向上につながることが明らかになった。また、情報モラル学習でのブログ活用や保護者対象の講習会を実施したことで、子どもの情報モラルの育成とともに、家庭、学校との連携が必要だという保護者の認識を高めることができた。

 また、教師用のwebシステムの開発運用や、校内研修でのe-ラーニング研修を行ったことで、教師のICT活用への意識を高めることができた。


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ドリトルによるプログラミングを用いた論理的思考能力の育成


青谷

代表 足利 裕人

鳥取県立鳥取工業高等学校(鳥取県)

(前任校:鳥取県立青谷高等学校)


 プログラムはロジックそのものの集合であるため、「論理的思考能力の育成」に、プログラミング学習が効果的な手段であると考えた。中学生・高校生は、論理的な力が発達する時期であるので、抽象化の考え方に触れながら、問題解決のアルゴリズムを考え、プログラムを完成させる成功体験を積み重ねながら実行し、デバッグを繰り返しながらプログラムを完成させていくことにより、論理的思考能力を育てることが可能になると考えた。プログラム学習には日本語教育プログラミング言語であるドリトルを用いた。ドリトルは、JavaやC++のように、現在主流の「オブジェクト指向」型であり、現実の社会で利用されているソフトウェアに結びつける機能やすぐれた拡張性を備えており、プログラミングを用いた問題解決、ネットワーク演習、情報の発信と共有・交換など様々な学習に対応できるよう設計されている。また、ひらがななど日本語文字を主に使うことで、発達段階に応じ、抵抗なくプログラミングの学習に導くことができる利点を持つ。

 松阪市立飯南中学校では、技術・家庭科の授業におけるプログラミング学習の体験が、思考力や創造力においても学習者によい影響を与えていると考え、学習効果のアンケート調査を実施し、また対照実験調査を行い、特に数学の一次関数の理解にどの程度影響しているか検証を行った。

 青谷高校では、論理的思考の評価問題を作成し、プログラミング学習の事前事後における論理性の評価を実施した。また、授業アンケートを実施し、プログラミング学習によって、学習者はどのような能力が育成されると考えるか調査を行った。


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ロボット利用によるアルゴリズムの理解、制御システムの理解と実践


ロボット授業研究グループ

代表 岡山 茂彦

大阪府立枚方なぎさ高等学校(大阪府)


 本校は2005年に開校した、普通科総合選択制の高等学校である。情報科の科目としては、1年生では「情報C」を全員が必修履修し、2年生で「情報と表現」、3年生では「コンピュータデザイン」「マルチメディア表現」「情報リテラシー」「プログラミング入門」を選択履修している。本研究が2年間の設定であったので、1年目は3年生の情報の科目を選択している生徒を中心に授業実践をし、2年目は1年生の「情報C」の中で、「情報B」の目標の一つである「情報の科学的な理解」としての「ロボット」を授業の中でどのように展開できるかを研究してみた。

  1. 「ロボット」の選定に当たって
    「ロボビーMS」と「ロボビーi」を考えた。その理由はロボットの製作している本社が大阪にあり、授業を展開していく際に協力依頼ができるという理由からであった。そこで、1年目は理想を高く設定し「ロボビーMS」で授業をすることとした。2年目の授業はこの授業実践を踏まえて「ロボビーi」での授業をしていくことにした。2年間とも従来の授業を詰めながらの「ロボット」の授業であったが、生徒にとってはロボットに対する興味・関心が広まりとても良かったという評価を得た。

  2. パソコン部における少数精鋭の展開
    本校には開校以来コンピュータに興味を持つ生徒が数人入学している。彼らはコンピュータのある部分については教員以上の知識・技能を身に着けている。我々が授業で何か新しいことをしようとするときは先ず彼らに授業の概要的な部分・全体には少し飛躍があるかも知れない部分を実施してみることがある。本研究においても、ロボットの製作・模擬授業はこのパソコン部で行うことにした。

  3. 3年生の「情報」に興味のある生徒を対象とした授業
    1年目の研究は、2年目の全員を対象とした授業に向けて、我々が一定の信頼関係が深く結べる、少人数展開で授業をしている、3年生を対象に「ロボット」の授業を計画した。先ず年間授業計画の中で何時間がこの「ロボット」授業に当てられるかを討議し、土日の授業展開も一定考えながら行った。

  4. 1年生の全員を対象とした授業
    本校は普通科総合選択性の高等学校であるために、生徒の女子の割合が高く(大体2:1)制御プログラムに深追いするとロボットそのものに拒絶されてはと思い、ロボットは1年目の「ロボビーMS」から「ロボビーi」に変更した。

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高校の「短期集中講座」と大学生のインターンシップを利用した
2つのねらいを持つ教育活動
〜 高校生の情報教育に役立つ手厚い指導体制づくり 〜
〜 情報科教員を目指す大学生の意欲と資質を高めるための支援 〜



神奈川県立横浜清陵総合高等学校

代表 工藤 剛司

神奈川県立横浜清陵総合高等学校(神奈川県)


 本校は総合学科高校としても、情報教育の水準は高い部類に入ると考えている。また、情報機器を利活用した学習活動は、学校の活性化にも成果を挙げている。情報の授業がその基盤を支えていると言っても過言ではない。しかし、理数系進学を考える生徒が時間割の中で情報の発展科目を履修することが困難なことに直面した。そして、現在は複数の教員で全分野を分担してカバーできているが、教員の異動によって科目の維持が困難になることも予想できる。

 この2つの問題、すなわち学習意欲の高い生徒を伸ばすための時間割上の工夫、および、今後の教育を支える教員の養成を同時に適えるための取り組みを行ってきた。具体的には、夏休み中の短期集中講座に、情報の教員を目指す学生をインターンシップ生として招くシステムを実践してきたのでモデルとして紹介させていただく。高校生は多くの補助員がいることで、安心してつまずくことなく学習を進めることができた。大学生には教えることの楽しさを体験するだけでなく、教科情報には大学での専門以外の分野もあることに気づいて以後の学習に役立ててもらう。当初の目的どおり、受講する高校生への手厚い指導体制と、情報の授業の体験が少ないまま情報の教員を目指す学生の意欲と資質を高めることができた。特に、大学生にとっては教科情報へのなじみが薄いために、貴重な機会として捉えられていた。

 一方、普通教科情報(情報A・情報B・情報C)の設置でとどまっている学校、専門教科情報に携わっていない教員は圧倒的に多い。大学の教職課程担当者においても、情報科の採用数が少ないことを掲げ、専門教科情報に通用する情報科教員の育成までは至っていないのが実情である。新しい学習指導要領でも、小中学校での学習を踏まえて高校では一層深い内容を求め、専門教科情報の科目数も増加している。今後も、生徒のスキルと望む内容、さらに機器の性能やソフトウェアの充実度も高まることは自明であり、大学で体系的にしっかりと学んできた教員の投入が求められる。

 10年後には教員の半数が入れ替わるという状況。今後の情報教育を支えていくために、教員養成の必要性をアピールすることが新たな目的として現れた。その意味で、次世代の教員を養成する取り組みの一例としても報告させていただく。


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デジタルコンテンツを利用した授業展開ができる教員を増やし、
その教員を中心に各学校の授業改善を推進する方策に関する実践的研究



化学教育兵庫サークル

代 表 中澤 克行

兵庫県立神戸高等学校(兵庫県)
(前任校:兵庫県立須磨東高等学校)


 教育の情報化が進められ、ICT活用実践はどこの学校でもできる条件整備が進められている。しかしながら、一部の教員しか活用していない現状がある。これを克服し、できるだけ多くの教員が活用する状況を作るために教員の自主的活動でどのような取り組みが可能かということを実践を通して検証をしてみた。

 [実施内容]

  1. 教育実習においてICT活用の奨励をすることの効果の検証
  2. より効果的な研修会の開催内容の検討
  3. 青少年のための科学の祭典・兵庫県内大会のデジタルコンテンツ化
 [実施結果]
  1. 2年間にわたり教育実習においてICT活用を奨励したところ、非常に効果があることが検証できた。実際に取り組んでみて、6割弱(10/17)の実習生がICT活用実践を行った。
    また、現職教員にも多大の刺激(効果)を及ぼすことも検証できた。若い学生のICT活用能力の高さに現場の教員から驚嘆の声が上がった。今後のさらなる展開に期待したい。

  2. 研修会のその場で教材を作ってもらい、持ち帰って現場で即、実践をしてもらうという内容の研修をすると参加者の約7割が実際にICTの活用をしていた。
    また、研修会への参加者を増やすための魅力ある内容として、例えば「具体的な自作教材の提示」と「フリーソフトの活用事例の紹介」が効果的だということが分かった。

  3. 教員団体で自作したデジタルコンテンツ(短編のムービー集)は、使い勝手も良く、口コミで利用が広がっている。教員にも生徒にも好評で、デジタル教材を身近に感じてもらうことができ、利用の促進に役立っているようである。また、その内容を授業において利用してもらっている。身近な、先生方や生徒たちが説明していることもあり、生徒も興味深く鑑賞していたようで、効果が上がっているといえる。

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携帯電話を活用した情報教育の取組と教育支援活動
〜 家庭学習の充実と授業での積極的主体的発言を育てることと
自主的な学習活動を育成するために 〜



新野高等学校情報国際課

代表 中原 正治

徳島県立新野高等学校(徳島県)


 携帯電話が日常の道具として生徒間に普及しているにも関わらず、学校教育の取組で有効に利用されていない。また、携帯電話自体についても、有効に教材化されていない。

 家庭学習の時間がテスト期間中でもゼロという生徒が多くいる現状で、生徒の学力向上を取り組む手立てとして、ケイタイ・ドリル(クイズ)とケイタイ・BBS(掲示板)を使った取り組みを行った。システムは四国大学の奥村英樹先生にサポートしていただいている。

 高校生たちが日常利用している携帯電話のメールを使い、家庭学習時間をゼロからプラスへ変える。教科内容や基礎的内容を材料にした選択問題のクイズを作成し、授業との関連を図るとともに、授業で行う小テストプリントと連動させて、学習へのモチベーションを高める指導を考えてきた。取り組みでは、担当教員の声かけなど、ちょっとした指導が成果を上げるために必要と考えている。また、そのことが授業での生徒−教員間のコミュニケーションを広げ、授業にプラスに働くことが実感できた。

 取り組みでは、教員の負担感が大きいという教員アンケートの回答があった。クイズ問題は、大学のサポートを得て、テスト範囲の問題を作成していただいた。教科担当は作成されたクイズを確認して使うだけだ。教員にとって、明らかに利用のための敷居は下がり準備作業も軽減された。しかし、意欲的な教員は増えない。教員の負担感は、心理的なものがより大きいということが推察される。

 一方、授業の活用例としては、クイズ問題を生徒が自分で作り、授業選択生徒みんなでその問題を解くという活動を実施した。主体的に教科内容を考え学ぶきっかけになった。メールで感想を書く掲示板と連動することで生徒の戸惑いや意欲、教科でのつまずきなどが見えて来ている。

 1年の情報Bの授業では中学までの凸凹なレディネスに対して、専門情報選択科目の履修に必要なベースラインを設定し、その課題をクリアできるように取り組んでいる。タッチタイピングの実技課題として毎日パソコン入力コンクールの級認定を、知識的理解課題としてパソコン検定を利用している。知識・技能の評価には、「見きわめテスト」を実施し、意識・態度やコミュニケーション力の向上のために、授業ノート・「メディア・ログ」の取り組みを行った。見きわめテストや授業ノートを作成実施することが生徒の学習のためだけでなく、教育内容の質の向上と教員の資質向上(授業のスキル、生徒把握の技量、情報活用の自信)につながる。

 ケイタイBBSは、教育活動だけでなく、生徒への連絡網としても機能した。修学旅行の取り組みでも活用することができた。

 学習のための態度やスキルが身についていない生徒の現状を考えると、親を含めた学習への取組みを進める必要を感じている。学校の枠を超えて、保護者や地域・市民の感覚を学校の教育活動に生かせるようにするために、学校設定科目「メディア・リテラシー」の授業のサポートとして徳島メディアリテラシー研究会をスタートした。


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教科情報(専門)における「マルチメディア表現」の授業モデル構築について


教科「情報(専門)」研究チーム

代表 藤本 英彦

三重県立宇治山田商業高等学校(三重県)
(前任校:三重県立松阪商業高等学校)


 平成15年度施行された新学習指導要領において、高等学校に新設された教科「情報(専門)」は、専門科目であるため、開設を行なっている学校が少なく、授業実践例も少ない。さらに教科書すら出版されていない科目もあり、学習指導要領において、教育目標は示されているが、具体的な教育課程が示されているわけでもない。そこで、「マルチメディア表現」における授業モデルを開発し、その妥当性の検証を行なった。


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