一般財団法人上月財団
一般財団法人上月財団
Contents 財団のご紹介 事業紹介 ビデオニュース サイトマップ TOP

事業紹介

第12回上月情報教育研究助成 論文要約


福祉教育の情報化に関するカリキュラム開発および実践研究
〜 テクノロジーは児童の体験をどう変えるか 〜



淑徳小学校

代表 新井 麻規子

淑徳小学校(東京都)


 本校「情報」のカリキュラムは、福祉的なテーマを取り上げており、盲体験や施設訪問など、様々な体験学習を重視している。児童は学んだ知識をもとに自分で体験をすることで、「福祉」について自分に引き寄せて考えるきっかけを持つ。

 今回の研究では、コンピュータやデジタル教材等、情報テクノロジーを活用することで、児童の学びがどう変わり深まるか、福祉学習を中心としたカリキュラムの整備を行った。また、関連する他教科との連携も図るよう努めた。

 デジタルカメラやデジタルビデオカメラを用いて、児童の体験を記録・教材化し、これらを用いて学習を客観的に振り返ることで、児童の学びがより深いものとなるようにした。

 そのほかテクノロジーを用いたコミュニケーションを取り入れることによって、海外をより身近なものと捉え具体的なイメージを持たせながら、ボランティアの目を国外へも向けて行けるようにした。

 現代のテクノロジーを手がかりに、地域や社会の中で小さい自分でも何ができるかを考え、実践や行動ができるような児童の育成を目指す。


Back


「情報活用の実践力」を育成するグループ別学習の在り方
〜 小学校算数科におけるIT(デジカメやPC等)を活用した問題作成活動を通して 〜



情報教育推進を考える会

代表 須田 正人

岡山市立第三藤田小学校(岡山県)
(前任校:岡山市立福浜小学校)


 従来の「知識伝達型授業」を「児童参加型授業」へ変えるべく、PC、ディジタルカメラ(以下デジカメ)、電子情報ボード等のITを積極的に活用したグループ別学習活動を実践した。小学校算数科での児童による問題作成活動「チャレンジ!みんなで算数クイズづくり」を通し、「情報活用の実践力」の中で特に判断力の育成を図ろうと考えた。小学校第1学年「20までのかず」、「100までのかず」「たし算(2)」、小学校第3学年「あまりのあるわり算」で、身近な生活場面のデジカメ写真を利用し、判断力を必要とするグループ別問題作成活動を取り入れ、相互に協力・評価する授業を展開した。その効果は、アンケート、問題作成シート等の記述内容や活動の様子のビデオ映像を分析し、児童の「判断力」に焦点を当てて判断しようと考えた。また、こうした取り組みを通して、次のような児童の高まりを期待した。

  • 「情報活用の実践力」の育成:ITを活用したグループ別学習により判断力が身に付く。
  • 問題を解決する方法の一つとして進んでITを活用するようになる。
  • 身近な暮らしの中から、学習している単元に関る算数的問題を発見・認識するようになる。
    また、主体的にその問題に取り組もうとする意欲の高まりも見られるようになる。

 さらに、こうした取り組みを実践していくことによって、次のような効果も期待した。

  • 算数科の目標を効果的に達成しつつ、情報教育を誰もが無理なく進められるようになってくる。
  • グループの構成を変えて取り組む活動内容を分析することにより、児童の「情報活用の実践力」特に判断力の育成につながる効果的なグループ学習の在り方や指導法が明らかになってくる。

Back


インターネットGISを活用した交流学習
〜 産官学連携によるモデルカリキュラム及び学習環境デザインの実践的研究 〜



WebGIS研究会

代表 花崎 進

宝塚市立西谷小学校(兵庫県)


 総合的な学習では、生物調査を通じた環境学習が各地で実践されているが、調査しただけにとどまり、分布域の相異の要因把握や他の地域との広域的な分布比較までされるケースはあまり見られない。また、冬場に見られる生物が少ないこともあり、冬場の生物を取り上げた取り組みもほとんどない。

 そこで、冬場でも全国的に見られる“渡り鳥”のカモを共通素材に取り上げ、インターネットGISにより全国の分布状況や地域差を見られるようにし、分布と周辺環境との相関・渡りの時期の相異・渡りの南限・渡りのルートの決定要因等について全国的に把握することにより、これらをテーマに環境交流学習の実践を試み、これらの試行実践を通じ、インターネットGISの学習ツールとしての有用性を評価することとした。

 これに加え、インターネットGISといった学習ツールを用いることにより、相関関係への着目→仮説構築→課題設定→仮説検証・課題解決という内発的・自己発展的な学習スパイラルが形成され、科学的な情報分析能力や総合的な理解力の醸成へ帰結するかについても評価することとした。

試行実践にあたっては、モデルカリキュラム案を策定して学習スパイラルの具体的な形成プロセスを提示し、これを基に各参画校で独自にアレンジを加えたカリキュラムの策定と試行実践を試みることとした。

 また、インターネットGISの小学校特化版へのカスタマイズ、交流学習支援としてのコミュニケーションボード機能・インターネット発表会機能の追加、専門研究者の研究会・メーリングリストメンバへの参画による社会教育施設連携、自然環境情報の参考資料としてのカモ図鑑サイト・ガンカモ類南下北上前線サイトの構築・リンク、実地観察支援としてのカモの観察・同定パウチの作成など試行実践のための支援体制の整備を図った。


Back


児童用Web情報発信支援システムの開発とその利用効果


津市情報教育研究会

代表 小山 史己

津市立西が丘小学校(三重県)
(前任校:津市立南立誠小学校)


 ここ数年間で、Webページを持つ学校の数が飛躍的に増加している。

 しかし、発信内容を見てみると「学校紹介」「教育目標」「沿革」「地域紹介」等、一度発信されたらその後の更新をあまり必要としない「パンフレット型」のものが多い。 

 また、Webページ発信や作成に関しては、情報担当等の一部の教師が行っていることが多く、児童や学校全体の職員が関わっているところは少ない。

 そこで、児童が、学習の様子や学習成果を自分たちの手でWeb作成・発信していくことができれば、保護者や地域の人、さらに他の小学校の仲間にも学習成果を伝えたり、互いの学習に役立てたりすることができ、従来とは異なる情報発信型教育を実践していくことが可能となり、新たな学習効果が期待できる。

 しかし、小学校のクラスの児童全員が限られた時間内(1時限45分)にそれを実現するためには個人差への対応など多くの問題が存在し、そのハードルは高い。また、ホームページ作成ソフトの操作スキルや発信方法に自信がある教師もまだ少ない実態がある。

 そこで、本研究では児童が手軽にWeb作成・発信を行うことができる支援システムを開発し、それを実際に児童等に活用させて有効性を検証した。その際、従来のテキスト情報だけではなく、静止画や動画を積極的に使うことができる仕組みを工夫した。

 システムは大きく分けて、「作成支援」「発信支援」「活用支援」の3つの部分で構成されている。ここではそれを、「児童用Web情報発信支援システム」と呼ぶ。

 「作成支援」では児童の実態に応じて選択できる数種類のWeb作成マニュアルを用意した。「発信支援」では情報発信に際して気をつけなければならない情報モラルへの配慮を児童が主体的にチェックできる仕組みを持たせた。「活用支援」ではこのシステムを使ったユーザー情報を作品事例集・投稿情報として集め蓄積する。

 そして、このシステムを使って教職員・児童それぞれがWeb作成を実施し、有効性を検討した。

 その結果、このシステムが児童や教職員にとって手軽にWeb作成できるツールとして活用できる可能性を見いだすことができた。


Back


小学校における情報教育カリキュラムの作成と
それを達成するためのシステムおよび教授パッケージの開発



東京教育メディア活用研究会

代表 二見 美佐子

目黒区立不動小学校(東京都)
(前任校:稲城市立城山小学校)


 本研究会は、東京都町田市の教育研究所でコンピュータ関連の研究員として技能や理論と授業実践について、包括的な研究を続けていた小学校・中学校の教員が中心になって、平成15年に自主的に発足した研究グループである。会員は異動や新規の加入等で町田市以外の区市にも広がり、各校で情報教育を担当したり、メディアの活用のあり方を研究したり、コンピュータの教材(コンテンツ)を開発したりして活躍している。

 本研究ではこのような会のメンバーの特色を生かして、小学校・中学校の系統性を検討しつつ、小学校の各学年における情報教育のカリキュラムを作成し、このカリキュラムに対応した単元群や、目標群、授業展開群、具体的な教材群を収集・作成しパッケージにして提供しようとするものである。また単なる教材やコンテンツ、資料を集成したものではなくて、教員が情報教育の授業を設計し実施し評価していく上で、このパッケージを効果的に活用し、授業改善を図っていかれるよう、授業設計・実施・評価の研修システムを組み込んだものとして開発することである。

 本研究のテーマは情報教育の大枠を包含しようとすることから、各内容について開発・作成と実践試行、評価、修正を繰り返し継続して取り組む課題である。会員も開発の過程を通し授業改善を図ることができる。まず先行研究や会員校を中心に、情報教育のカリキュラムを収集し分析や検討を行った。情報活用の実践力・科学的な理解・参画する態度の3項目を縦軸にして、今日の課題や社会の要求に対応し、中学校、高等学校での情報教育の学習内容の系統性をも考慮して、本会としてのカリキュラムの大枠を作成した。その上で、16年度17年度は、緊急的な情報教育の課題として社会的な要求が浮上したインターネット活用について、モラル教育、セキュリティー教育、健康教育、情報の科学的理解と活用の教育をコンセプトにした小学校用パッケージ(以降ネット教育指導用パッケージ)の作成をまず先行させることにし、テーマにせまることにした。

 パッケージの開発は、パッケージに含ませる目的、概念、内容をまず検討し分担作業で試行版制作―授業での試行―評価検討―修正分担作業―配布版制作―会員外の学校で授業での試行―評価の後、会員が所属する区市の全小学校と一部中学校に、教育委員会を経由して寄贈し活用をよびかけた。


Back


幼小中一貫における国際コミュニケーション能力の基礎となる
「マルチメディア学習」のカリキュラム開発



広島大学附属三原幼稚園・小学校・中学校

代表 簑島 隆

広島大学附属三原中学校(広島県)


 本学園(広島大学附属三原幼稚園・小学校・中学校)では「確かな語学力を基にさまざまなメディアを駆使して多文化を理解したり、人々と国際的にコミュニケーションしたりする能力(国際コミュニケーション能力)」の育成をめざして、情報教育と国際理解教育を効果的に融合する形で研究開発を進めている。本学園の情報教育(マルチメディア教育)においては、情報活用能力の向上はもちろんの事、それらを踏まえたメディアの活用能力の向上を目指す。

 そこで本研究では、国際コミュニケーション能力の基礎となる「大量の情報の中から必要な情報を主体的に読みとり、効果的に活用する能力」の育成を目的とした「マルチメディア学習」の幼小中一貫カリキュラムを開発した。具体的には、様々な情報に対して多面的に評価することのできる能力、すなわち「メディアリテラシー」を軸とした「情報活用能力」を育成するための「マルチメディア学習」の単元開発(学習内容・教材開発)を行った。さらに、実践授業を通した評価方法を併せて検討することで、幼稚園から中学校3年生に至る12年間の一貫カリキュラムを検討した。

 2年間の研究を通して、カリキュラムは段階的に単元を配置しおおむね完成に近づきつつある段階にある。また、朝日新聞、TBS、フリーカメラマンなどの外部講師による教員研修を行うことを通して、本学園のマルチメディア学習の学習スタイルや目標などを、学園内の多くの教員に理解してもらえたことも成果として挙げられる。

 今後は国際交流学習との関連性を高めることも研究の視野に入れることが重要ではあるが、学園内において双方の学習を「一緒にできそうだから」といったような意識で安易に統合・融合することは避ける必要があると考えた。そのような意識で統合・融合した場合、マルチメディアの学習が、ただメディア機器の使用法を学ぶためだけのものになってしまう恐れがあるからである。本学園がめざす国際コミュニケーション能力の育成においてはメディア機器が使えるようになることも重要であるが、人と人とのコミュニケーションが、メディア機器という無機物を媒介とした途端、対面してコミュニケーションを行う場合とは全く異質なものとなってしまうことがあるのは周知のことであろう。国際交流学習は、お互いに対面した場合の国際的なコミュニケーションスキルを育む学びであり、マルチメディア学習は、国際的な交流に欠かせないメディア機器を介してのコミュニケーションスキルを育むための学びとして、双方が国際コミュニケーション能力を育成する両翼を担っているということを基本理念として、今後も研究に取り組むことが重要であると考えている。


Back


校内特許データベースを軸にした知的財産権学習と情報活用の実践力の育成
〜 中学校技術科「ロボットコンテスト」における試み 〜



長野Jrロボコン実行委員会

代表 土田 恭博

中野市立中野平中学校(長野県)
(前任校:中野市立南宮中学校)


 中学校の技術・家庭科の技術分野(以下技術科)では近年ロボットコンテスト(以下ロボコン)が盛んに行われるようになってきた。ロボコンでは創造工夫の力が重要視されており、創意工夫の力をより伸ばすために、ロボット製作の過程で機構や製作上の工夫などを擬似的な特許として申請する校内特許制度を創案し、長野県の中学校において実践をした。実践の進展に伴い、複数校で特許情報を共有するために、Jr特許データベースを開発した。Jr特許データベースを活用し、体験的な知的財産の学習をすることで、知的財産への意識やアイディアの表現力といった情報活用能力の育成が期待される。

 本研究は、校内特許データベースを軸にした知的財産学習をより効果的に行うために、校内特許データベースの改良と作品データベースの開発及びその教育効果の検証を目的とした。前年までの実践分析にもとづき、仕様を検討し、校内特許データベースの改良と作品データベースを開発し、長野県の中学生ロボットコンテスト大会で活用をした。

 実践の中では、多くの権利情報が参加各校によって登録され、権利情報を共有することができた。実践校の生徒を対象に調査した結果、知的財産の役目や重要性の理解や創意工夫などに伸びが見られた。表現力については今後の改題である。指導教師を対象にした調査の結果、知的財産の学習に肯定的な評価を得ることができた。

 以上のことから、本研究が目的としたシステムは開発できたことと、知的財産を中心とした情報活用能力の育成に効果があったことが示された。今後は、作品データベースの活用を進めると共に、さらに詳細な分析をしていく予定である。


Back


マイクロコンピュータ搭載ロボットを情報教育へ導入する試み


グループ研究

代表 松本 和憲

東京都立小石川工業高等学校(東京都)
(前任校:東京都立世田谷工業高等学校)


 本研究は、マイクロコンピュータを搭載したロボットの製作から操作までの作業過程を通し、高校生を対象にコンピュータの構成についての基本的な理解や基礎的なプログラム作成能力の習得をさせるとともに、ロボットという同じ教材を用いても高校生ひとりひとりが独自の作品を完成させる場を設け、計画から問題解決までの過程を体験させる情報教育のカリキュラムを考案し、そのカリキュラムに用いる教材およびコンテンツの開発をし、その評価方法について検討することを目的としている。

 研究の内容並びに成果は以下の通りである。

  • 教材の開発
  • カリキュラムの考案
  • Webを用いたロボット情報教育の考案と実施
  • 講習会の実施およびアンケートの実施
  • 大会の実施およびアンケートの実施
  • ファジィ推論を用いた評価方法の提案
  • 各種大会の視察

 これを踏まえ、マイクロコンピュータ搭載ロボットを情報教育へ導入することについて、考察を述べる。


Back


情報教育におけるメタ認知能力の育成を目的とした評価法の研究
〜 普通教科「情報」における観点別評価とルーブリックの作成を通して 〜



グループ研究

代表 廣野 尚敏

兵庫県立加古川北高等学校(兵庫県)


 メタ認知能力とは、自分の考え方のパターンや知識の限界、感情などを知り、自分自身の思考や推論を客観的に評価する能力である。この能力が優れている者は「知的な初心者」と呼ばれ、初めて取り組む課題に対しても高いパフォーマンスを発揮することがわかっている。文部科学省のいう「確かな学力」にある「問題解決能力」は、解決策を立案する思考力と、解決策を実行する能力に分かれる。解決策の立案には、十分な知識と経験、さまざまな推論、偏りのない検証が必要である。したがって、メタ認知能力が高いと「問題解決能力」も高くなるといえる。

 コンピュータ操作が速くても、問題解決能力がなければ答えは出せない。逆に問題解決能力が高ければ、コンピュータを使うことによって、時間の節約ができ、迅速に仕事が進められる。本研究では、普通教科「情報A」の授業を通して育成されるメタ認知能力が問題解決能力に結びつくと解釈し、メタ認知能力の育成と評価法についての試案を作成し、その検証を日々の授業実践の中で行ったことの報告である。


Back


高等学校「情報C」授業ノート(教員用)・(生徒用)の作成
〜 授業展開試案の提示 〜



グループ研究

代表 沢田 和哉

早稲田大学系属早稲田実業学校(東京都)


 研究題目を「「情報C」授業ノート(教員用)・(生徒用)の作成」としたように、今回戴けた貴重な研究機会では、教科「情報」のカリキュラムとして、「情報C」を選択した学校で、授業をより効果的に行うためのサブノート作りを目指した。

 カリキュラムに含まれる学習項目の中から研究課題を選ぶのではなく、どのようにしたら「情報C」が指導者にとっても扱いやすく、生徒にとっても理解し易い科目になるのか検討して作成した。市販のワークブック形式的のものとは距離を置き、実際に活用してもらえれば、授業が成立するような教材を目指した。「授業ノート」という聞き慣れない名前をつけた理由は、市販教材と差別化を図ろうとした試みのためである。

 但し、本論文では、紙幅の関係から「情報C」で履修すべき範囲を網羅した「授業ノート」全てを掲載することはできない。「授業ノート」自体は、「授業ノート」の抜き刷りの一部見本として、教員用、生徒用ともに、この論文の添付資料として別途提出させて戴いた。

 そのため、ここで研究論文として別途著した内容は、「授業ノート」作成に至る背景、過程、構成、そして活用方法などについてまとめたものにすぎない。簡単にいえば「授業ノート」のアウトルックともいえるものである。

 数年前、世界史に始まった『未履修問題』は、残念ながら情報教育とは無関係ではなく、世界史に続いて未履修が多かったのが教科「情報」に属する科目である(社団法人 情報処理学会ホームページ、http://www.ipsj.or.jp/12kyoiku/Highschool/credit.html参照)。そのため、「授業ノート」自体には、ここで触れるような様々な事柄を書いていないので、とりわけ作成にいたる問題意識と作成過程での諸問題が、現在の情報教育のありかた、そして今後の情報教育の歩むべき道を考える一つのきっかけになり得るように思える。

 本研究では、「授業ノート」の拠り所を探り、教科書で用いられている学習項目を例にとって具体的な項目の検討を行った。そして「授業ノート」の構成に触れ、実際に利用しているこの教材のコンテンツや利用方法について述べた。多くの実習を伴うこの教科で、どのように授業を維持して成立させていったらいいのか、私たちなりの考えを甚だ僭越ではあるが示させて戴いた。


Back


実社会で通用する情報処理技術を育成するシステムの構築
〜 商業科・工業科・情報科のCollaboration 〜



グループ研究

代表 村上 明夫

静岡県立静岡中央高等学校(静岡県)


 コンピュータに関する技術は非常に幅広くかつ高度で、しかも高速に発達しているので、ひとくちにコンピュータを使えるといっても、いったいどの程度の技能を示しているのか判断することが大変難しい。また、資格試験もあるが、幅広い分野を包括する試験がない、ペーパー試験では実務的能力を量りがたいという課題が残る。このことは、求人・求職の際の大きな問題となっている。本研究では、システム設計・ハードウエア技術などを専門とする工業科、メディアリテラシー・企業経営などを専門とする商業科、情報に関する全体をマネイジする情報科が協同して企業やカリキュラムを研究するので、コンピュータに関する技能・知識を実用レベルで広範囲かつ高度に育成するシステムを開発することが可能となる。例えば「顧客が購入したコンピュータのセットアップはもとより、ハードウエアの不調対策や顧客の要望にあわせた情報システムの提案ができ、必要な場合は的確な専門家を紹介できる営業社員」の育成などを目標とするのである。そして、それを21世紀の高度情報化社会をリードするビジネスマンというひとつの人材モデルとして提案するものである。


Back

情報教育の評価に関する実践的研究(情報A,B,C)


静岡情報教育研究会

代表 池田 敦

静岡県立湖西高等学校(静岡県)
(前任校:静岡県立浜松湖南高等学校)


 本研究は、静岡大学情報学部情報社会学科杉山研究室の高大連携プロジェクトの一環として始まった。毎週土曜日に静岡県西部地区の情報担当教員が集まり、大学の学生と共同でいくつかのテーマを決めて研究を行っている。情報教育の評価に関する実践的研究(情報A,B,C)は、その1つとして取り組んだ研究テーマである。本研究は、高等学校に新規に導入された観点別評価は評価規準の作成が始まったばかりで具体的な運用はこれからという認識に立ち、「何をどこまで教えるか」ということについて学習指導要領に基づいた評価規準の作成、及び評価規準に見合う適切な実習課題の創出・検証が急務であると考えたことが発端である。

 本研究では、観点別評価の具体化、実習課題のデータベース化、評価基準を取り入れた総合評価の3点を研究目的とした。これにより、学期末に行う総合評価に四つの観点が偏り無く取り入れられた授業計画の作成が可能となり、また新たな教材開発のヒントを提供すると考えている。今回、生徒が取り組んだレポートを事例としてデータベース化することにより、情報A,B,Cの区別にとらわれることなくキーワードで検索できるようにしようと取り組んだが、現時点では完成に至っていない。ただ、評価基準表と相互にリンクすることにより、使い勝手はよくなったので、生徒がどのように考える傾向にあるのか、どのようなことに困難を感じているのかを把握できる資料として、有効に活用できよう。さらに、定期テストをPDFにして保存・整理していくことにも取り組んでいる。教師が生徒に要求する学力水準は、定期テストに如実に反映される。定期テストは、授業で解説したこと、実習で取り組んだこと、学び取ってほしい知識の集大成であるが、情報という科目の性質上ペーパーテストだけで評価することは適切ではない。本研究に参加した各学校の定期テストを公開することにより、「何をどこまで教えるか」の議論が活発になり、学力のレベルが標準化していくきっかけになればと期待している。

 学期末に行う総合評価では、いろいろな要素に四つの観点を偏り無く取り入れることを当面の目標とした。授業経験から、特定の生徒が実習課題でいつもよい評価をとるとは限らないので、単純に合算してしまうと絶対評価で上位の評定が出にくいという結果になった。点数化して段階値に区切っていくだけでは従来の相対評価とたいして変わらないので、評価基準表を使った新たなる視点を提案した。

 これらのことが、情報教育に携わる実践者にとって参考となれば幸いである。


Back


高等学校の教科「情報」の展開におけるQ&Aシステムの開発に関する研究


静岡県「JK勉強会」

代表 山下 進也

静岡県立磐田北高等学校(静岡県)


 本研究は、静岡大学情報学部の杉山岳弘先生の高大連携プロジェクトの一環として始まった。このプロジェクトは、毎週土曜日に、静岡県西部地区の様々な高等学校の先生方が集まり、大学の先生、学生とともにいくつかの課題を決め研究を行っている。そのひとつとして高等学校の教科「情報」の授業展開における、「Q&Aシステム」の開発に関する研究を行った。

 平成15年度より、全国の高等学校において実施されている、教科「情報」を展開するにあたり、教育実践現場の担当者は、今、手探りの状態で授業を進めている状態である。そのため、多くの悩みと不安を抱えている。

 情報教育を担当する教育実践現場の教師が、悩みや不安を共有し合い有効な情報交換に寄与することを目的として、静岡県西部地域で、地元の高校教師と静岡大学情報学部の教官とでつくる「高大連携」型の教師コミュニティを形成し、現在、悩み・不安や問題点などを活発に出し合い、今日的課題を検討している。

 しかし、高校現場での授業実践に結びつけるためには、さらに、そこで出た今日的課題を、生きた知見としてまとめ、授業展開上に有効な形でフィードバックする仕組みが必要となる。

 情報の授業担当者が抱える悩み・不安については、授業展開する上での問題点として、以下の四つの分野に分類した。

  1. 指導内容
  2. 教師のコンピュータスキル
  3. 評価について
  4. 教員の研修

 私たちは、これらに対応するため授業展開上に有効なものとして、「Q&A」形式のデータベースシステムを提案した。「Q&A」形式は、情報教育を担当する教育実践現場の教師自らが、授業展開上に有効なものとして提案したものである。今回は、Q&A掲示板システムを構築する。構築に当たり、それぞれの項目について集計分析の上、問題点を洗い出した。そして、静岡大学情報学部の技術協力を頂きながら、それに対する解決方法としてQ&A掲示板システムの成果を教育実践現場にフィードバックさせ、生徒の「新しい学力観」の形成に寄与することを目指した。


Back


弱視児童・生徒が見て探せる! 声で入力できる!
画面に触れて検索できる! Web利活用
〜 現場(盲学校教員)がニーズに応えて作り出した弱視用ユニバーサル機器 〜



横浜市立盲学校理科教育研究会

代表 太幡 慶治

横浜市立盲学校(神奈川県)

 視覚障害教育において、情報処理機器の発達は授業形式や組み立てまで変えてしまう劇的な変化だった。10年ほど前までは、サーモフォームや立体コピー、オプタコンなどの触覚を主に利用する教材や機器が主流であったのに対し、ウィンドウズ98以降の環境では聴覚を主とする音声対応が一気に進んだ感じがする。さらに、CPUの高速化や光回線によるブロードバンド化が進んだ現在では、日常から弱視や全盲の児童生徒が音声対応のメールやネットサーフィンをするようになった。ポケットタイプの英和辞典も点字図書にすると数十冊の辞書になり、持ち運びができない。これを電子化するとフロッピーディスク1枚にでき、音声にしたり点字ディスプレイに表示することができる。紙でかさばる点字本より電子データにして配布がおこなわれたりすることが盲学校では日常的になっている。そのため、在学する視覚障害児童生徒の学習でのバリアが減りつつある。一方、小学校・中学校・高等学校(以下一般校)に在学する弱視児童・生徒は理科授業において、顕微鏡観察や天体観測や化学実験など主に視力を使う取り組みでは教員の視覚障害に対する専門知識の低さと設備のなさから共に活動することが難しかった。そこで、盲学校で成果を上げてきた弱視支援機器を始めとする視覚障害教育支援機器と指導ノウハウを基に、一般校に在学する弱視児童・生徒が障害のない児童・生徒と共に実験や観察できるようにするのには「どの様に機器の工夫したら良いか」を研究した。本校の理科部会において積み上げてきたノウハウと情報機器の利活用を組み合わせる為に、情報科の松田基章教諭の支援を受けて、特別支援教育センターと位置づけられた盲学校として、一般校への特別支援を想定して今回の研究をおこなった。

 右の画像は、音声コントロールでweb検索と顕微鏡の細胞観察を行っている場面である。これを使って観察している弱視生徒は、中心暗点という眼疾を有しているのでめがね型ディスプレイをかけている。多様な見え方をする弱視生徒が見えにくさを補って、どのように何を見ているか外部の方に説明するために普段はつけていない液晶ディスプレイを接続した。


Back


デジタルコンテンツを活用した「わかる授業」をつくるための
教員研修カリキュラム作成



教員のためのわかる授業づくり研修作成チーム

代表 中村 武弘

三重県教育委員会事務局研修分野(三重県)


 これまでの「情報教育」の教員研修は、機器操作の研修と実践事例の紹介を組み合わせるだけで、具体的なデジタルコンテンツを活用した授業イメージをいだくことが難しかった。そこで、研修カリキュラムの基幹として、「デジタルコンテンツを活用した指導案の作成や模擬授業、及び授業を通してより実践的な手法を用いた研修を行う」を研修の具体的な目標とした。

 本論文では、デジタルコンテンツを活用して「わかる授業」をつくるための教職員研修カリキュラム(集合型研修カリキュラム・個別型研修カリキュラム)を作成した。このカリキュラムの特徴は、

  1. 「研修の流れ」を軸として、研修全体の概要を示した。
  2. 「講師の役割」を「研修の流れ」に合わせて、明記した。
  3. 活動の様子がわかるように「活動風景」のイメージを示した。
  4. 「研修のポイント」や事例紹介等の「資料」の提示を示した。
  5. これらのカリキュラムを見やすく配置した。

 これらのことで、研修カリキュラムの運営上の利点と利用の簡便性を図った。

 また、実践を通して検証していったところ、以下のようなことが明らかになった。

  1. デジタルコンテンツを活用した授業のイメージ化を助ける。
  2. 研修参加者の意欲・能力を伸ばす。
  3. 学習効果を向上させる手法であることを体感させる。

 2つの研修カリキュラムを考え、実施してきたが、教科の研究会や他校との授業交流とともに、本研究で提案したような授業スキルの向上を含む研修を学校内外で、継続的・計画的に行うことが必要であることがわかった。今後とも教師の「情報処理能力(生徒の言語的・非言語的行動を知覚・判断する能力)」を高めるプログラムを研修カリキュラムに盛り込んでいきたい。


Back


小中高等学校一貫した体系的な情報モラル教育の在り方


グループ研究

代表 横山 隆光

羽島市立羽島中学校(岐阜県)
(前任:岐阜県総合教育センター)


 携帯電話でホームページを閲覧したり、掲示板に書き込んだり、メールを利用したりする生徒が多くなり、保護者や学校が児童生徒の利用状況を常時把握することは困難になっている。また、日常生活において児童生徒が利用する各種メディアの提供する情報等には人格形成に悪影響を及ぼすおそれがあることが指摘されており、各種メディアの利用に対しての指導も必要となってきている。さらに、児童生徒のネットワーク等の安全な利用についての指導は、小学校・中学校・高等学校が別々に実施していることが多く、小中高等学校一貫した指導が求められている。このような現状に対しての児童生徒の実態をつかむとともに、指導する側の教師の意識と実態をつかんで、あらゆる機会を通して、小中高等学校が連携して指導を行っていく必要がある。そこで、我々は2年間の研究で、次のことを行った。

  1. 情報モラルに関わる中学校と高等学校用の実態調査の項目を決定し、調査を実施
  2. 情報モラルに関わる高等学校の調査結果を分析し、小中高等学校一貫した体系的な情報モラル教育のためのデータとして蓄積
  3. 調査を行った高等学校では、調査結果を基に2学期より1年生に対する情報モラルの指導を実施
  4. 県教育委員会が実施・公表した小中学校教師の実態調査、高等学校・特殊教育学校教師の実態調査結果を分析し、児童生徒の実態調査の分析等から、情報モラル教育において考慮すべき事項の洗い出し
  5. 情報モラル教育で扱うべき内容等を盛り込んだ小・中・高等学校一貫した指導計画の作成
  6. 小・中・高等学校一貫した指導計画に基づいた授業実践に必要な実践事例を登録・閲覧するシステムを開発し、情報モラル指導事例Webページを公開
  7. 県教育委員会の研修講座と連携して、受講者を中心に実践事例を登録し、登録された事例を講座や現場での実践に活用

 その結果、小・中・高等学校一貫した指導計画に基づいた実践を始めた学校では、指導しなくてはならない内容が明らかになるとともに、授業実践を行うための教材や指導事例が不足していることが課題となっている。特に、メディアリテラシーに関わる教材や研修が必要であることがわかってきた。また、道徳・教科等との関連では、情報モラル教育の時間数を単に増やすのではなく、情報モラル教育に関わる道徳・教科等の内容とつないで指導できるよう情報モラル教育・道徳・教科等の授業展開等を工夫する必要があり、情報モラル指導事例の収集をさらに増やしていく必要がある。

 情報モラル指導事例Webページの活用では、教職経験の少ない3年目の教師による活用が進んでいる。指導事例の登録にあたっては、研修講座との連携を図ることで、研修の充実と指導事例の蓄積・利用が同時に達成されている。しかし、収集が進むにつれて同種の実践が増え、検索しにくくなることが予想され、指導事例の整理・削除の方法を検討していく必要がある。


Back


地域公共芸術文化施設におけるメディア環境教育及び、メディア環境についての
ワークショップの開発と研究



山口県情報芸術センター教育普及部門

代表 会田 大也

山口情報芸術センター


 この報告書は、山口情報芸術センターという公共芸術文化施設において、メディア環境教育を、いかに行なうか、という研究の報告書である。具体例として、「ネットワーク社会でのルール作り」というテーマを設定した「ケータイ・スパイ・大作戦」というワークショップの開発と実施レポートを掲載している。地域密着型の公共芸術文化施設において、地元の参加者達にどのようなコンテンツを提供していけば良いかを実践しながら探っていった。メディアテクノロジーという一見難しそうなテーマ設定でも、対象となる内容をよく吟味し、重要なエッセンスを抽出したワークショップを計画すれば、低年齢の参加者にも教育効果が与えられるということが実感できた。学習した内容が、参加者に対してその後どのような影響をもたらすのか、という点については、明快な評価基準を探り当てるまでには至らなかった。今後の課題としたい。


Back

[トップ] [スポーツ選手支援事業] [上月スポーツ賞] [スポーツ団体・競技大会助成事業] [クリエイター育成事業] [教育・文化・社会支援事業] [その他]

(C) KOZUKI FOUNDATION