一般財団法人上月財団
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事業紹介

第11回上月情報教育研究助成 論文要約


図画工作科教育を通しての情報活用能力の育成を意図した、カリキュラムと評価
〜 異文化理解と情報モラルの育成を中心に 〜



富山アート研究会

代表 澤橋 直文

富山市立山田小学校(富山県)


 今日、国際交流は教育関係者の強い関心をひき、各地で多くの実践が取り組まれているが、言葉の違いは、依然として壁となっている。そこで、言葉の違いを補う一つの方法として表現作品を通した言語以外でのコミュニケーションの可能性を探る必要があると考えた。同時に、教科での情報活用能力の育成は、教育の今日的な課題の一つであり、図画工作科においても情報活用能力育成に関する実践にも、積極的に取り組む必要がある。

 本実践の目的は、言葉の壁を超えて伝わる表現作品の持つ感性を生かして異文化に触れ、コミュニケーション能力を含む情報活用能力を高め、異文化の理解を深めることを目的としている。絵画作品を通じて交流を行うことは、児童にとって、異国間の交流学習において常に障害となる言葉の壁を軽減し、よりよく異文化を理解できると考えた。

 図画工作科で育む表現力は情報活用能力と密接に結びついており、図画工作科においても情報活用能力を高められることを実践を通して確かめることができた。

 教科と総合的な学習の時間のかかわりといった場合、本実践では情報活用能力といった高めたい能力に視点をおきかかわりを模索した。教科と総合的な学習の時間で、共通した、または発展させた目標を設定し、子どもが教科と総合的な学習の時間を通じて一貫して能力を高めていけるよう学習課程を計画したことが有効であった。

 また、相手とかかわる際のマナーやモラル、相手を尊重する態度の育成は、教室の中だけでは身に付きにくい。事前指導を行い、実際に人と接する場を設定することで、また、かかわりを後で振り返る中で、子どもの中に根付いていくことが分かった。

 ルーブリックは教師が子どもを評価するだけではなく、教師と子どもが共有することにより、子どもに視点を与え、また、子どもの今の自分の段階、次に目指すべき行動が示され、自己を客観的に見つめたり、思考を促したりできる道具として有効に活用することができた。また、子どもが視点をもつことができたため、相互評価や話し合いなどにおいてねらいに沿った話し合いやかかわりができ子ども同士のコミュニケーションを助けることもできた。

 絵画は自分や住んでいる地域などの言葉では伝えきれない雰囲気を伝えることができる。また、言葉で伝えると無味乾燥になってしまう内容でも、絵画では豊かな情報として伝えることができ、相手の興味・関心を高めることができた。そういった点では、国際交流における言葉の壁を軽減していると言える。また、言葉では伝えようのない雰囲気を伝えられる点、高度なコミュニケーションツールとしての役割を担えることが分かった。


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小学校における発達段階に応じた情報教育の実践
〜 身近な情報素材で楽しく学べる情報教育をめざして 〜



個人研究

山本 伊津子

羽曳野市立西浦東小学校(大阪府)


 小学校段階での児童の発達段階に応じた情報リテラシー及び情報モラル育成のための指導法の検討と、子どもたちがパソコン及びインターネットを使って、楽しみながら学べる指導方法の検討を本研究のねらいとした。

 実践内容は、身近な素材で楽しく学べる情報教育の指導として、(1)石川河川敷での野外観察における植物調査の自然情報を用いた情報活用の実践、(2)校区内の二酸化窒素の環境調査による大気汚染の環境情報の発信と受信など、情報交換及び情報活用の実践を行った。この結果、子どもたちの情報活用能力の向上とスキルアップが図られた。

 また、ゲーム感覚で楽しめるパソコン活用学習の実践を紹介し、いくつかの有効な市販ソフトでの使用例と、インターネット上の学習に有用なフリーサイトのコンテンツの活用例を示した。それぞれのソフトを活用し、その教育的な評価も加えた。

 次に、子どもたちの情報モラル育成のために、中学校とのメール交換の活動を取り入れた実践を行い、子どもたちがインターネットの使用及びメール交換で守らなければならないことや、してはいけないことなどの学習を行った。小学校の発達段階における情報モラルの育成についての検証を行ったので報告する。


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情報活用の実践力を磨きながら、問題解決能力を育む子の育成
〜 コンピュータスキル・コンピュータリテラシーの習得を通して 〜



グループ研究

代表 河村 隆信

刈谷市立依佐美中学校(愛知県)
(前任校:刈谷市立小垣江小学校)


 最近のIT(情報技術)の発達は著しく、生活様式のみならず、社会の様々なシステムが変更されつつある。コンピュータに関する知識、スキル、態度、例えば、コンピュータを利用して情報を効率的に収集したり、効果的に活用したりできることは、これからの社会を生きるうえで重要な資質であると考えた。

 そこで、総合的な学習の時間の中にコンピュータスキルを身につける時間を位置づけ、6年間を通して段階的に行い、確かなコンピュータスキルを身につけさせようと試みた。系統立てたスキル学習によって、子どもたちは情報活用の実践力を伸ばすことができるのか、また、各教科や総合的な学習の時間での実践を発信する際の、情報発信能力をどのくらい伸ばすことができるのかを検証した。更に、問題解決学習的な課題に取り組ませながらスキルの習得を図り、情報活用の実践力を磨きながら、問題解決能力を育もうと試みた。6年間のカリキュラムの中で、適宜リテラシー教育も行った。

 その結果、6年間の系統立てたスキル学習はかなり有効であることが確認できた。また、スキルに裏付けられた情報発信能力も6年間で着実に身に付いてきた。問題解決能力は、課題解決的学習に繰り返し取り組ませることで身に付けさせようと考えた。未だはっきりとした形で検証ができていないが、児童の様子を見る限りかなり身に付いてきたように感じる。


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責任ある情報発信力を育成する体験的実践事例の開発


浜松市立都田小学校

代表 小川 雅弘

浜松市立都田小学校(静岡県)


 小学校の情報教育が進み、ホームページ作成による情報発信の機会が増えているが、発信した情報の責任を求められたり、振り返ったりする活動が少なく、自らの情報発信の内容に責任を意識しにくい。

 本研究では、農業生産活動に受注生産活動を取り入れ、発注者に対して責任ある情報発信を行わなければならない学習状況を用意し、生産活動の過程や成果が、児童の情報発信に対する考えにどのような影響を与えるかを記録した。その結果、体験活動を、責任を持って情報発信しようとする態度の育成へと結びつける方法が示唆された。


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小中学校におけるコンピュータを活用した「情報活用の実践力」の向上を目指した
カリキュラムの研究
〜 9年間のコンピュータを活用した研究実践をもとに、
「情報活用の実践力」向上のための学習のあり方についての研究 〜



教育ソフト利用研究会

代表 仲川 隆雄

入間市立新久小学校(埼玉県)
(前任校:入間市立金子小学校)


 本研究会は、平成7年より授業に市販ソフトを活用する事例を中心として研究してきた。研究の大きな目標は、1つには、授業における実践的なアイデアを検討し、その背後にある授業論を通して新たな実践を提案することにあった。もう一つは、実践を通して、授業者としてよりよいソフトウェアのための条件を制作者にフィードバックすることにあった。

 本研究会は、平成7年より授業に市販ソフトを活用する事例を中心として研究してきた。当初は数少ない授業用ソフトウェアを「まず使ってみよう」からはじまった。研究の大きな目標は、1つには、授業における実践的なアイデアを検討し、その背後にある授業論を通して新たな実践を提案することにあった。もう一つは、実践を通して、授業者としてよりよいソフトウェアのための条件を制作者にフィードバックすることにあった。

 本研究では、この実践研究の経緯をふまえ9年間(平成7年度から15年度)の研究実践を「授業実践シート」に整理し、コンピュータを活用した学習場面について考察を加えた。整理された結果については、技能的な裏付けを検討し、教育課程に対応させるために必要な基本的な技能の内容を明らかにした。また、情報教育の側面から、各授業で育てたい「情報活用の実践力」の内容および規準を明らかにし、「情報活用の実践力」について発達段階に応じ、実践例より具体的学習内容を提示した対応表を作成するために評価基準や学年ブロックにおけるカリキュラムについて整理した。

 さらに、実践例の空白部分について補足実践を行い、全体的な成果と課題を明らかにした。

 なお、整理した成果をコンピュータ上で活用できるように相互の関連を持たせ、デジタルカタログ化を行った。


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連画:絵のリレー
〜 コラボレーション・アート『連画』の教育における活用の試み 〜



友達100人プロジェクト

代表 佐藤 幸江

横浜市立大口台小学校(神奈川県)


 21世紀を迎え、今、コミュニケーションがとれない人間の増加が問題視されている。どんな関係であれ、お互いがコミュニケーションをとったり、それをもとに人間関係を築いたりすることが重要であり、さらには、そういう関係を築くことによって、自分が生きていること・自分の存在の確かさが確認できるのである。そう考えてみると、コミュニケーションをとるということは、私たちが生きることであり、人間の存在そのものに関わってくる行為なのである。このまま人と人とがうまくコミュニケーションのとれないような状況が広がっていったとしたら、人間の存在はどのようなものになるのかということを危惧しているのは、私たちの研究グループだけではないだろう。

 本研究におけるコラボレーション・アート「連画:絵のリレー」は、子どもたちが主体的に学習活動に取り組み、楽しみながら絵画的(視覚的)コミュニケーション能力を高めることのできる学習活動と捉えている。本稿では、コラボレーション・アート「連画:絵のリレー」を図画工作科で実践、研究したことをまとめている。今までの情報教育の研究では、言語における表現やコミュニケーションについての研究は行われてきているが、絵画的(視覚的)コミュニケーション能力についての研究は少ない。本稿は、そこに切り込んでいきたいと考え、ここにこれまでの成果を報告したい。


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一般教科の情報化に関するカリキュラム開発及び実践研究
〜 一般教科「国語・社会・美術」での実践を通して 〜



戸板中学校・女子高等学校 情報教育委員会

代表 斎藤 貢市

戸坂中学校・女子高等学校(東京都)


 小学生、中学生の早い時期に「情報リテラシー」を習得した生徒にとって次に必要なものは、学校生活や社会生活で実践的に応用できる「情報活用能力」の習得であると考えられる。教科「情報」だけでなくそれ以外の一般教科(国語・社会・美術)で情報機器の有効的な活用を追及し、新しい授業モデルの開発・定型化を研究してきた。

 国語では朗読や作文、劇や雑誌、そしてホームページなどでの表現発表の可能性と媒体の研究を中心に行ってきた。他にもマルチメディアを利用した視覚教材の利用と作成、国語科を始め他教科と共用できるテンプレート・教材の作成、ネットワークを活用した生徒制作物の回収や閲覧を行った。

 社会ではマルチメディア教材やデジタル機器の利用の有効性を研究してきた。用語の整理・解説作業と捉えがちになってしまう授業から、政治や経済の仕組みや機能がイメージのともなう内容理解を深められる授業にしていく方法を研究した。また、自己表現力・論理的思考力、取捨選択能力の習得に有効な道具としてどう有効かを研究した。

 美術では素材や道具によって変わる表現方法や可能性の1つのツールとして、情報機器の効果的な利用法を研究した。美術教育は、手を動かし、からだ全体を働かせて、主体的に考え、創造活動することを大切にしている教科である。コンピュータそのものや、操作法にとらわれて本来の学習活動から外れてしまう事のないように留意し、手仕事の良さを忘れず、コンピュータの特性を生かした思考力と表現力を高める教材のあり方について研究をした。


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企業研究プロジェクト


田園調布雙葉中学高等学校

代表 小林 潤一郎

田園調布雙葉中学高等学校(東京都)


 教科「情報」におけるねらいの一つに「情報社会に参画する態度」の育成がある。机上での学習のみに終始しがちなこの課題を具体的に実践するため、日本経済新聞社が提案する企業研究プログラムを基に、”企業研究プロジェクト”と称して、企業の分析、提案書の作成、企業訪問とプレゼンテーションといった一連の流れを体験する試みを行った。

 実際の世の中で起こる問題には、必ずしも単純明快な1つの答えが出せるわけではない。問題を引き起こす様々な要因を探り、それらのトレードオフを考慮した上で、考え得る解決策の中のどれが最適かを自分で判断し、結論に導いていく必要がある。

 「自分で論理的にものごとを考え、それを具体的に提案書という形にまとめて発表する。」

 この研究は、生徒の論理的思考と表現能力を育み、生徒が世の中を身近に感じることができる授業実践をまとめたものとなっている。


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e-Learning による協調研修に関する実践的研究


岡山県倉敷市中学校理科の会

代表 岡 光昭

倉敷市立連島中学校(岡山県)


 本研究は、教員研修としてのe-Learningの在り方について明らかにすることを目的とする。まず第一に、e-Learningの特徴を整理するとともに、e-Learningの動向を把握した。第二に、インターネットを用いたe-Learningによる教員研修が県内の学校でどの程度実現できるかアンケート調査を実施した。その結果、県内の各学校ではおおむねe-Learningを利用できる状況にあることが明らかになった。第三に、講義の様子やアニメーション教材等を配信するe-Learningのシステムについて検討したところ、講義集録システムで制作した教材は、配信するファイルの容量が大きいため、県内の学校ではまだ十分に閲覧できる状況ではないことが分かった。そこで、配信するファイル容量が小さくてすむアニメーション教材を制作することに方針を決めた。第四に、研修コースの構成を検討した。研修コースの内容としては、「情報の科学的な理解」に関する内容の中から、「モデル・シミュレーションの技法」を取り上げ、システムやモデル化、シミュレーションについて扱うe-Learningの研修コースを制作した。その際、プレテスト・ポストテストテスト、レポート、電子掲示板、メンターの役割等について検討し、これらの機能が研修コースの中で活用できるように工夫した。第五に、制作した研修コースを実際にインターネット上に掲載し、教師6名に履修を依頼した。そして、履修後のアンケート調査や提出されたレポートの考察等を通して研修コースを評価したところ、工夫した点については有効な結果が得られた。また、おおむね有意義な協調研修も実現することができた。


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高等学校情報教育における演習・実習用のface-to-face Web教材の作成


グループ研究

代表 新村 桂司

静岡県立浜松湖南高等学校(静岡県)


 本研究は、静岡大学情報学部の杉山先生の高大連携プロジェクトの一環として始まった。このプロジェクトは、毎週土曜日に、静岡県西部地区の様々な高等学校の先生方が集まり、大学の先生、学生とともにいくつかの課題を決め研究を行っている。その中でデジタルコンテンツの作成は大きなテーマであった。今回は、その題材として教科「情報」のWeb教材を選んだ。平成15年度は、教科「情報」の初年度ということもあり教材作りも手探り状態であった。特に生徒の実態がつかめないまま教材を作らなければならない状況は、私たちの不安をかきたてた。しかし、学生たちの参加が私たちに大きな力を与えた。杉山先生のご指導の成果の賜物であると思われるが、学生たちは、映像の中で常に明るく振舞おうとしてくれ高校生の立場に立った教材を作ろうとしてくれた。そこには、映像や放送の分野を志す者の専門性の高さを感じた。

 浜松湖南高校において作成されたWebコンテンツの授業実践を行った。残念ながら高校においてはWeb教材の長所を充分に活かすことができなかったが、生徒が課題に取り組む姿はおおむね良好であったと思われる。いくつかのアンケートも行い生徒の反応を調べた。その中で高校生たちの中で、Web教材を含んだe-leaningに期待する声は予想以上に大きかったように思われる。生徒たちの声から多くの反省点もでた。これらは、これからの教材作りに充分活かせるものである。今回の研究中にこれらの声を活かした見直しができなかったことは大変残念であるが、今後近いうちにさらによい教材作りに励みたい。


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専門教育における情報科の目標達成に向けた教材の開発
〜 基礎的知識の習得を中心とした指導と評価の一体化を目指して 〜



東京都立新宿山吹高等学校情報科研究会

代表 川畑 由彦

東京都立新宿山吹高等学校(東京都)


 本研究は専門教科「情報」の基礎的分野を中心に専門教育の目標を実現する指導方法と教材開発について取り組んだものである。具体的には「情報産業と社会」「情報と表現」「モデル化とシミュレーション」「コンピュータデザイン」「情報実習(マルチメディア)」の6科目を中心に研究を進めた。

 本研究の成果として専門教育特有の「職業観の育成を目指した指導法」「高校生の発達段階に応じた適切な専門知識と技術の習得」といった2つの課題が明らかにされた。そして、これらの課題を解決する方法として「インターネットや映像などを用いた事例紹介」「講義による知識の習得の重要性と知識を基礎とした実習の有効性」「生徒の自学自習を想定したソフトウェアと題材の選択」などの授業実践について提案している。

 本研究の貢献としては「情報産業への従事を想定した専門教育における課題を明らかにした。」「その課題を解決するための指導例を提案した。」という2点があげられる。

 キーワード:情報教育、専門教育、職業教育


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多種多様な学校現場に対応した情報活用の実践力の育成


グループ研究

代表 渡森 和彦

静岡県立御殿場高等学校(静岡県)


 高等学校における情報教育において、学習を提供する側が様々な個人差に対応する教材を個別に作成するのではなく、生徒自身が学習課題に個別に取り組む中で、これらの問題を吸収できる『マルチ情報教材』の共同開発を行う。

 フリーソフトの中から学校教育としての導入に適するものを精選し、これを有効に利用して幅広い情報活用能力の育成を目指す。

 生徒が自らの力で作品をクリエイトし、創造性をやしなう『マルチメディア学習カリキュラム』を開発し、生徒がオリジナリティーあふれる作品制作の中で自己表現することをとおして「情報の創造」を達成させる。

 どのようなスキルの教員であっても、一定以上の質を持った情報学習を指導することが可能な教材を作成する。

 ユニバーサルデザインと情報の融合を目指した取り組みとして、HTML形式による点字学習テキストの制作を行う。


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情報科における「指導と評価の一体化」の研究


神奈川県上月情報教育評価研究会

代表 五十嵐 誠

神奈川県立横浜清陵総合高等学校(神奈川県)
(前任校:神奈川県立川崎高等学校)


 平成15年度より高等学校で実施されている情報科の授業について、神奈川県の高等学校における教科情報の『指導と評価の一体化』に関する実践研究を行った。『指導と評価の一体化』とは、学習結果に対して評価するだけでなく、学習過程において単元毎に観点別評価することにより後の指導を改善することである。

 本研究は、情報科の授業においてPDCAサイクルによる「単元別シラバス作成」から、「観点別学習状況による評価」と、授業改善のための「生徒による授業評価」について考察し、『指導と評価の一体化』の実現を目指した。

 「単元別シラバス作成」では、各メンバーがそれぞれ単元毎にシラバスを作成し、それを実践した。この結果を共有することにより、単元別から年間のシラバスへと発展させた。

 「観点別学習状況による評価」では、生きる力の育成という新しい学力観に立ち、ペーパーテスト等による知識や技能の評価に偏らない、「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」の4つの観点による評価方法を研究した。さらに観点別評価からどのようにして1つの評価・評定にするのかも研究した。

 「生徒による授業評価」では、評価項目・実施方法を検討し、実践した授業評価の結果を分析して、それをフィードバックし今後の授業の改善にどのように生かすのか研究した。

 本研究会は神奈川県高等学校教科研究会情報部会(以下、神奈川県情報部会)の委員を中心にしたもので、多くの学校で実践を行い、それを共有することができた。共同研究(コラボレーション)により各校での実践事例を共有することは授業改善にたいへん役立った。研究の報告活動に加え、今後はさらにより多くの学校と協力し、情報教育の改善を行っていきたい。


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高度情報通信社会に生きる特別な支援を必要とする子どもの
情報活用能力育成に関する研究
〜 協働参画型の学習者共同体における情報活用の実践力の育成とその評価 〜



チャレンジキッズ研究会

代表 太田 容次

滋賀大学教育学部附属養護学校(滋賀県)


 本研究では、知的障害のある学習者の情報活用能力を育成するために、協働参画型学習者共同体「チャレンジキッズ」を対象として、その相互作用を分析することで、その要因を明らかにしたいと考えた。発話数及びカテゴリー分けにより直接体験、共同学習、多人数・多校の共同学習に分類され、発話数は直接体験による相互作用が最も多く見られた。3カテゴリーによる発話を抽出し、質的分析を加えたところ、知的障害のある学習者にとっての情報活用能力育成の要件が9点の知見として得られた。その結果、学習項目羅列型の学習によるよりも、行き交う学びが可能であるステージ型のカリキュラムによる学びが有効であると考えられた。


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音声ユーザのコンピュータ導入期の指導プログラムの開発


松盲IT教育研究会

代表 大財 誠

愛媛県立松山盲学校(愛媛県)


 視覚を用いて画面を確認できない視覚障害児・者は画面読み上げソフトを利用することでパソコンの利用が可能である(「音声ユーザ」とする)。音声ユーザは、マウスを利用しないでパソコンを操作したり、画面を見ないで情報を入手したりするなど、特別な環境で操作することになる。しかし、音声ユーザに対するパソコンの指導法や教材・教具は充実しているとは言い難い。そこで、音声ユーザのパソコン導入期の指導に焦点を当て、指導内容・方法の検討や教材・教具の開発を行い、これらの有効性及び課題を明らかにすることを目的として研究を行った。

 指導プログラムや3Dの触覚教材を開発する前に、音声ユーザを対象にした実態調査を行い、音声ユーザがパソコンを学習する上で困難を感じた点や、パソコンを学習する上で役立った教材などを調査した。それに基づいた「指導の系列」を検討し系統的なパソコン指導の骨子を作り、指導プログラムと触覚教材を作成に取り掛かった。平素の授業で利用し一定の効果がみられたことから、より客観的な評価を行うために協力者やパソコンボランティアの協力を得て、チェックリストを併用した指導プログラムと3D教材による指導を行った。その結果、指導プログラムと触覚教材を併せた指導により確実に一人で行える項目が増えた。到達度の把握や指導展開がしやすいことなどが、本指導プログラムの有効性として挙げられるが、より適切な教材の検討などが今後の課題である。


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情報共有できない教師のための支援システムの開発と運用
〜 教育行政と学校現場が連携する教師教育の一考察 〜



氷上情報教育研究会

代表 岸田 隆博

兵庫県教育委員会 丹波教育事務所(兵庫県)
(前任:兵庫県立人と自然の博物館)


 コンピュータ等の学習環境整備が進む中、教育用コンテンツの開発・整備が急速に進められている。しかし、その充実ぶりとは逆に活用の頻度は少ない。この一因は、技術的な側面だけではなく、「学級王国」的発想に未だ埋没し、情報共有を拒む教師が多いことである。そこで、それらの教師が何を求め、どんな手だてを望んでいるのかなどを追いながら、教師教育の在り方を模索した。今回の研究では、以下の3パターンからそれぞれ抽出し、研究を試みた。

  1. インターネットを活用したり、提示や発表の場面でITを活用したりできる技術を身につけているものの具体的にどのように活用したらいいのかイメージしにくい教師。
  2. 学習に必要な素材や記録をデジタルカメラやビデオカメラで撮ったり資料をワープロソフトで作成したりすることはできるが、それらを活用した授業ができない教師。
  3. IT活用スキルがほとんど身についていない教師。

 本研究会では、これらの教師を中心に、学校枠にとらわれず、情報共有に消極的な教師が、IT等を活用したわかる授業実践を通して、情報の共有や組織ワークの大切さに気づき、意識改革できる仕組みを以下の2点に絞り取り組んだ。

  1. 情報共有できない教師のためのポータルサイトの開発と運用
  2. 教育行政と学校現場が連携した教員研修講座の実施について調査研究を行った。

 本稿では、教師教育の今後の方向性も含め、研究成果の一端を報告する。


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