一般財団法人上月財団
一般財団法人上月財団
Contents 財団のご紹介 事業紹介 ビデオニュース サイトマップ TOP

事業紹介

第10回上月情報教育研究助成 論文要約


ネットワーク共同学習に有効なシステムを構築し授業を行うことにより、
児童の情報活用能力・情報モラル・コミュニケーション能力の育成をめざす
〜 特色ある地域素材を通して 〜



佐世保情報教育実践研究部

代表 西平 功

佐世保市立赤崎小学校(長崎県)


 高度情報社会の到来で、情報技術は急激な進歩をとげている。それに伴い、教育現場にも様々なメディアを駆使した学習形態に期待がかかる。

 日々急激に進化し続けるメディアに、教育現場はスムーズに対応できてきたのであろうか。この課題を解決するために、テレビ会議システム・電子会議室などあらゆるメディアを使った「ネットワーク共同学習の構築」を試行してきた。

 総合的な学習で情報、国際理解、環境、福祉・健康の内容の中で、自ら課題を見つけ、あらゆる方法を駆使しながら学習をしてきた。(総合的な学習のねらいは、「自ら課題を見つけ、学び考え主体的に判断し、よりよく問題解決する資質や能力の育成」、「学び方やものの考え方を身に付け、問題解決や探求活動に主体的、創造的に取り組む態度の育成」にある。)それに伴い、学習者には、新しいメディアによって新しいコミュニケーション能力の育成が必要になってきた。学習者のみならず学習を支援する指導者にも新しいメディアに対する情報活用能力・情報モラルの育成が必要である。

 教育現場のデジタルディバイドの解消するため、下記の2点について研究を続けてきた。

  • ネットワークを利用した有効な共同学習の構築
  • 児童の情報活用スキル・情報モラル・コミュニケーション能力の育成

Back


子どもの瞳輝く情報教育の創造
〜 コンピュータリテラシーと心のネットワークリテラシーを育むために 〜



津久井町立中野小学校

代表 中村 真司

津久井町立中野小学校(神奈川県)


 子どもの瞳輝く情報教育の創造。それは、小さな子ども達が砂場で見せるきらきらした瞳、そして、それをとりまく大人達の温かい支援をイメージした言葉である。本研究は、学校におけるIT革命こそ、豊かな心を育む友達革命の始まりであるととらえ、新たな教育的課題を学校現場でどのように具現化していくべきかを追求したものである

 さらに、本研究では研究テーマを追求していくのにあたり、次のような仮説に迫るための研究を行った。

  1. 情報教育の中で身につけたい以下の4つの力を育むことによって、子どもの瞳輝く情報教育を推進していくことができるであろう。

    (1)教科の基礎的な知識や技能
    (2)問題解決的な資質・能力
    (3)情報機器操作に関わる能力
    (4)心の教育に関する目標

  2. 発達段階に応じた心の教育によって、豊かな心を育む情報教育が創造できるであろう。

  3. ハンバーガーアプローチを推進することによって、情報教育の教育課題に応じた教育活動 を展開することができるであろう。

  4. 教室環境を充実させることによって、子どもの瞳輝く学習空間を創造することができるであろう。
  5. 学校セキュリティを推進していくことによって、セキュリティ意識を高めることができるであろう。

Back


福祉体験を意味のある学びにする情報活用能力の育成に関する研究
〜 情報教育に可能性を求めて 〜



グループ研究

代表 鈴木 俊彦

浜松市立蒲小学校(静岡県)


 本校は、静岡県社会福祉協議会の指定を受け、福祉教育の実践に取り組んできた。

 そのねらいを「障害を持つ人や高齢者とふれあうことを通して、相手の気持ちや状況を理解し、共に生きていこうとする態度や心情を育てる。」とし、3年が経過した。推進の中で子どもたちに福祉にかかわる知識を身に付けることができたが、「実感が持てない。」「生きて働く知恵となったのかが疑問」「実践を系統づけるカリキュラムが必要」などの課題が浮かび上がってきた。

 そこで、「福祉体験を意味ある学びにする情報活用能力の育成に関する研究」に取り組むこととした。幸い静岡大学情報学部助教授堀田龍也先生に指導いただける機会を得たことから初年度は、授業におけるメディアの活用に力点を置き、次年度は、教科と総合的な学習の時間における横断的な福祉教育の進め方について研究してきた。

 研究を通して、福祉体験と情報活用を融合させることで、実感の持てる実践的な福祉教育の姿が見えてきた。子どもたちが、体の不自由な方の障害なっていることが何かを突き止め、その障害を取り除くために自分たちができることを見つけ、ともに実践しようと呼びかけるようになったのである。

 情報活用能力の育成については、スキルアップとともに系統的な情報活用の必要性を持つことが重要であることから学び方を重視するカリキュラムの編成に取り組んできた。

 本校の特色として育ちつつある福祉教育を核としながら、教科と総合的な学習の時間の横断的な単元開発やつけたい力を明確にした授業実践、スキルアップの情報活用能力育成プログラム、パソコン検定の整備などにより、総合的な学習の全体計画作成の具体的な実践を蓄積することができた。

 本研究は、実践的な研究であり、校内研修が活性化し学校組織が機能することによって推進できたものと考えている。


Back


自ら求め、自ら創造する子をめざして
〜 情報活用能力を高め、コミュニケーションをすすめていく子の育成 〜



高鷲小学校

代表 小林 達弘

岐阜市立陽南中学校(岐阜県)
(前任校:郡上市立高鷲小学校)


 村にスキー場を6つも持つ山間部にある本校のような小規模校では、少人数ならではの特色も多く見られるが、学びの集団の少なさが子ども達の学ぶ刺激を少なくし、ずっと同じメンバーでの学習集団であるからゆえの弊害も認められてきた。具体的には、人前で話す機会の少なさや、討論する人数の少なさ、仲間から学ぶ機会の少なさからくる表現力の弱さである。

 そこで、パソコン等のメディア、あるいはインターネット等にある膨大な情報を活用することで、人数か少ないデメリットをパソコンが一人ずつ利用できるメリットに発想を転換し、場所や時間的な空間を越えてより目的にあった方々や仲間に発信する場をつくり、表現する機会を増やし、表現力の高まりをめざしていきたいと考えている。

 また、子ども達が情報社会を生き抜くためにも情報教育として、マナーに関することや、情報を選択したり、正しく利用したりする方法などの「学び方」を身につけられるように指導することもねらいとしている。

 私たちは、教科の指導内容も、学校で体験すること、日常生活の中で獲得した知識、知り得た現象などの認識を全て情報ととらえ、その情報をいかに自分の中で取捨選択したり、目的に応じて適切かつ正確に取り入れたり、情報の発信者としての技能を身につける中で、この情報社会における「生きる力」を育みたいと考え、研究をすすめてきた。ゆえに具体的な目的として

  1. 表現力を高めるための場の設定としてのメディア利用
  2. 表現力を高めるために、情報獲得の手段としてのメディアリテラシーの獲得
  3. 表現力を高めるために、効果的な手段としてのメディアリテラシーの習得
  4. 表現力を高めるために情報交信の手段としてのメディアリテラシーの獲得
  5. 情報社会における情報の持つ意味と活用の仕方の習得

を掲げ、情報社会における「生きる力」を育みたいと考え、実践を重ねてきた。そして、私たちは、

  1. 情報活用能力 情報の収集、取捨選択、加工、再構築、再発信の力(分野1)
  2. メディアリテラシー 情報を機器等を利用することで活用できる技能(分野2)
  3. モラリティパワー 自分に生かすための情操、マナー、モラル(分野3)

の有機的な指導により、表現力の高まりを具現しつつあるという研究である。


Back


コミュニケーション能力の育成を目指したシステムの開発と実践
〜 オンラインディベートシステムを用いた授業を通して 〜



グループ研究

代表 福島 健介

八王子市立七国小学校(東京都)
(前任校:八王子市立別所小学校)


 筆者らはここ数年、児童と地域との交流手段としてインターネットを活用する実践を継続してきた。MLを利用して地域との対話や交流を広げる実践は多くの成果を生むことができた。(*1)

 しかし、筆者らはこの実践を通して、メール・掲示板などを利用した際に自分の意見や疑問、質問を的確に相手に伝えることができない児童が多数いるという事実に気付いた。そこで、インターネットを活用して自分の意見や疑問を的確に相手に伝え、話し合いをすることができる能力−我々はこの能力を「ネット上のコミュニケーション能力」と定義した−を系統的に育成する方法を研究した。その結果として完成したものが今回の実践に用いた「オンラインディベートシステム」である。

 筆者らは本システムの活用を通して、第一に「ネット上のコミュニケーション能力」の特性を明らかにし、その育成を目指した。第二に育成のためのツールや指導の内容はどのようなものなのか、を考察したいと考えた。第三にインターネットを通した学校間交流の手段と場を提供したいと考えた。さらに実践を通して、大人との交流では許されていたマナー違反や未熟な表現に対する批判、著作権上の問題なども厳しく体験させることができるのではないかと期待をした。

 本システムを利用した実践は2年間で4回、八王子市内の5つの小学校の児童と教員、保護者が参加した。(*2)

 児童は、当初交流そのものが楽しみだったり、勝敗が興味の対象だったりしたが実践を続けていく中で「自分たちの意見を理解してもらうために」資料の引用を始めたり、表・グラフの活用などに取り組み始めるようになった。これらの点を第一の育成ポイントとしてさらに実践を重ねた。

 しかし、こうした指導をしても議論が円滑に進まず、的確に自分たちの主張を相手に伝えることができない状態が続いた。そこで、過去の自分たちや相手グループの文章を読み返させたところ、児童自らが「自分たちが何を言いたかったのか分からない」と答え、八項目の文章表現や話し合いの注意点を発見した。ここで挙げられた八項目を第二の育成ポイントとして系統的に指導した後、2004年1月から研究二年間最後の実践を行った。

 さらに、教員同士の対戦(*3)も2回行い本システムを活用した場合にどのような能力が育成されるかを考察してもらった。この取り組みを通して対戦者が「教員自身が論理的に考え、表現する訓練を受けていない」、という感想を出している点は興味深かった。

 二年間の研究を通して、冒頭に挙げた三点についてそれぞれ知見を得ることができた。とりわけ、「論理的に考え、表現する」ことこそがコミュニケーション能力の基礎であり、Nonverbal communicationが介在しないネット上では特に重要であること、そのための下位能力がどのようなものかの考察ができた点は成果であった。

=脚注=

*1 「学習支援ボランティアと共にまなび・考える『多摩地域の未来』地域メーリングリストを活用した総合的な学習の実践」
   (第9回上月情報教育賞優秀賞)
*2 柏木小学校・別所小学校・上柚木小学校・三本松小学校・清水小学校いずれも八王子市内の学校である
*3 清水小・松木小、元八王子東小・城山小4校の教員


Back


コミュニケーション能力の育成のための
「青い目の人形」素材を活用した共同学習の研究



青い目ネット研究会

代表 深井 美和

富山市立熊野小学校(富山県)
(前任校:富山市立水橋中部小学校)


 児童がネットワークを活用して生活環境や文化が異なる地域や国との共同学習を行うことにより、情報活用の実践力(とりわけコミュニケーション能力に焦点を当てる)を育成しようとする実践研究である。

 本研究では、伝え合う必然性を生み出す素材として「青い目の人形」という、第2次世界大戦前に米国から日米の友好親善のシンボルとして送られた人形を取り上げる。地域に残る歴史的に意味のある人形を素材として活用しながら、コミュニケーション能力を育成するために、以下の3点について実践し、明らかにしていきたいと考えた。

  • 継続性のあるカリキュラムの構成
  • コミュニケーションのための手段の選択
  • 教師間の連携のあり方

 日米間にまで広がる共同学習の展開を考える際には、年度をまたぐようなカリキュラムの構成や環境や文化の違う相手との交流において、言葉の壁をどう越えるかなどの課題もあり、時間的な継続性と教科等との連携を考えた継続性という面からカリキュラムを考えていくことにした。

 総合的な学習の時間において、各校の独自活動を生かしながら、共通のカリキュラムをあらかじめ設定しておくことにより、戦争と平和を考える社会科や国語科の学習と関連づけて「青い目の人形」素材を活用した共同学習を仕組むことができた。さらに、英語活動やALTとの授業も含め、外国の方々と直接交流する機会を設けることで、日本以外の国々に関心をもち、外国語にも慣れ親しんでいこうと意欲が高まった。

 学校現場では、電子メールや掲示板、電話やFAXなど、交流する上で様々な手段が選択できるようになってきているが、これら多様なメディアをその利便性を感じながら体験していく中で、子供たちは、場面や環境の違いによって、様々なコミュニケーション手段を子供たち自身が選択し、相手に応じて表現方法を工夫するようになった。国際交流では、表現方法を工夫することで言葉の壁を乗り越え、積極的にコミュニケーションをとろうとするようになり、異文化理解も深まった。


Back


「音空間地図」による地域紹介Webページの作成


グループ研究

代表 田村 幸雄

厚木市立森の里小学校(神奈川県)


 情報機器の発達により情報教育においてもメディアを活用したさまざまな実践が行われるようになってきたが、その実践で使われるのは視覚的メディア(画像、映像)が中心であって、聴覚的メディア(音)は補助的な位置付けに過ぎない。そこで、本研究では「音」を中心に据えた「音空間地図」を作ることにより、情報メディア手段としての「音」を扱う能力を育成することを目標に据える。具体的には、小・中学校の「総合的な学習の時間」において、環境の音を録音し、360度のパノラマ写真上に貼り付ける作業を通して録音機器やコンピュータ等を活用する能力の育成を図り、児童・生徒が、目的意識を持って「どの音を録りたいのか」を考え、耳を澄まし、工夫することで、音に対する感覚を研ぎ澄まし、音と空間の認識力も育成することを目的とした。

 実践では学校内と学校外の音空間地図の作成を試みた。その結果、小・中学校とも、これまで環境の情報要素として音を意識することがなかった児童・生徒に音を意識する姿勢が生まれた。また、写真(静止画)の上に音を「再配置」する作業によって、ビデオの動画のように視覚に流されることなく、音のバランスを考え、工夫を凝らす姿が見られた。つまり、メディアのもつ機能が「新しい音の聴きかた」を促進する役目を担っていくことが確認された。また、環境音に対するアプローチの仕方では、中学生ができるだけ環境にある音をそのままの姿で録音しようとしたのに対して、小学生では環境に働きかけて、自分たちが積極的に音を出そうとする態度が見られた。これはどちらかというと音で作品を作り「表現する」ことを楽しむことにつながる。また、学外の「音空間地図作成」では、音を録音する作業そのものが、地域との交流のきっかけを作ることがわかり、今後地域コミュニティーを作る時にこうした情報メディアの活用が期待されるところである。

 尚、標題にある「Webページ作成」については様々な制約からWebページでの公開までに至らず、学校におけるWebページ作成についての大きな課題を残すことになった。

 今後、これらの解決に向けて、さらなる形で実践を継続したいと考える。


Back


自ら情報を蓄積し、情報を追求活動に生かす子どもの育成を目指して


大潟町小学校教育データベース研究会

代表 戸田 正明

大潟町立大潟町小学校(新潟県)


 今まで、国語や社会科、総合的な学習の時間を通して、学習者自ら課題をもち、地域を調べ、まとめる(情報発信する)学習活動がおこなわれてきた。特に、情報をまとめ、発信する過程で、情報機器の積極的な利用が行われ、情報活用の実践力育成を目指してきた。授業での活用中心だと、その時間、その単元は一生懸命行うが、その後有効に活用されないことが多い。

 子どもたちが情報を蓄積して、それを振り返る態度を育てることで、次の追求活動への課題や意欲が湧いてくると考える。本研究では、情報を蓄積し、学びを支援するシステムの改善と評価方法の工夫を通して、情報を適切に活用し、追求活動に生かす態度の育成をめざした。

 情報を蓄積し、学びを支援するシステムは、個人ごとのポータルサイトの作成と、情報交流を促す学習掲示板を中心に実践を行った。授業では、学習掲示板が有効に活用された。個人ごとの活動成果を披露しあい、刺激しあう姿が見られた。

 学習を促す評価の工夫では、教師サイドの評価力向上のための取り組みと、子ども自身の評価力向上のための取り組みを行った。特に子ども自身の評価力向上のための取り組みでは、つけたい力を意識して、自分についた力を認め自己肯定感をもつ子どもの姿が見られた。


Back


情報活用を基軸とした総合的な学習の単元構成と評価


京都市立朱雀第二小学校

代表 多紀 俊秀

京都市教育委員会指導部(京都府)
(前任校:京都市立朱雀第二小学校)


 「総合的な学習」のねらいは子ども自身が設定した課題を主体的・意欲的に追究し、課題解決していくための資質や能力を育て、自らの生き方を考えることができるようにすることである。総合的な学習の学びにおいては「主体的」「自ら」という言葉がキーワードになっている。そのため、様々な情報を収集し、整理・創造し、表現・発信するという情報の操作、情報の活用能力がこどもの学習活動を支えていくことになる。従って、総合的な学習のねらいを達成するためには、情報活用を基軸とした単元構成がどうしても必要である。様々な教育メディアを活用する技能や知識をはじめ、情報モラルを考えた実践的な活用能力の育成が重要である。そして、達成度を的確に見取り支援すると共に、子ども自らが次の活動に生かそうとするための評価がさらに重要である。

 子どもの主体的な学習活動を支える教育環境・情報活用のための環境を一層充実させながら、創造的・主体的に生きる力、自己実現に向かって粘り強く努力できる力をはぐくむための情報活用能力の育成や授業のあり方などの研修・研究を進めてきた。


Back


情報活用の実践力を育む授業実践モジュールの開発と活用評価
〜 小・中・高の一貫性を考慮したカリキュラム開発にむけて 〜



情報岡山の会

代表 渋谷 陽

津山市立鶴山小学校(岡山県)


 ミレニアムプロジェクトに沿った形での小・中・高等学校での校内情報環境は、その程度はまちまちであっても確実に整ってきている。また、教員のコンピュータ操作スキルも岡山県情報教育センターを中心とした「あなたにIT」等の研修講座等で成果を上げてきている。そして、学習内容も学習指導要領の改訂に伴って、各教科等で情報教育を進めていくことのできる内容となっている。

 こういった現状にありながら、一部の学校をのぞいては、各校での情報教育の現状はコンピュータスキル学習に留まっている。

 この現状を打破するためには、誰もが積極的に授業に活用できるモデルプラン(モジュール)が必要であり、このモデルプランを小学校だけで考えるのではなく、中・高との一貫性を踏まえたものにできないかとしたのが、今回の研究である。

 これまでも、岡山県情報教育センター、岡山県教育センター、岡山県教育工学研究協議会等で情報教育の普及を目指した研修や実践は数多くされてきており、全国的にも高く評価されているが、どうしても一般化には至っていない。

 そこで、本研究では、情報教育の一般化を進めるための学習モデル作りを教科の中に位置づけ、教科の学習を進めていく中で必要不可欠なモジュールを具体化していくことを考え、研究とした。


Back


中学校技術・家庭科技術分野「情報とコンピュータ」における
情報通信ネットワーク技術の教材化とテキストの開発



通信テキスト研究会

代表 村松 浩幸

中野市立中野平中学校(長野県)


 本研究では、中学校技術・家庭科の技術分野、すなわち技術科の「B情報とコンピュータ」において、アナログ通信技術から情報通信ネットワーク技術への発展の過程を、子どもたち自身が実験を通して体験しながら学べる諸教材と、それらを全国の技術科の授業で使用できるようにするための授業用テキストを開発した。この中でも特に電話交換機網からコンピュータネットワーク網への発展に関する内容に重点を置いて教材開発に関する研究を行った。そして、実際に本研究者らが技術科の授業で試行的な実践を重ね、階層化された通信ネットワーク網を子どもたちが体験的に理解できることを実証した。

 具体的には、本研究では、開発した諸教材とテキストを使用したこの授業実践を通して、以下の3点を明らかにした。

  • 情報通信ネットワーク教材は、すべての中学生に情報通信ネットワークの物理的構造をアナロジー・レベルの科学的認識として理解させることに有効であった。

  • 中学生は、情報通信ネットワーク教材で学習することを通して、情報通信ネットワークをより具体的にイメージできるようになり、情報通信ネットワークに対するものの見方を実感豊かに育むことができた。

  • さらに中学生は、情報通信ネットワーク教材を通して、情報通信ネットワークばかりでなく、それを含むユビキタス・ネットワーク、ユビキタス社会におけるものづくりの世界について、興味・関心を大きく喚起した。

 以上のことから、本研究で開発した情報通信ネットワークの諸教材とテキストを通じて、子どもたちは楽しく意欲的に学びながら、情報通信ネットワークに対する「情報の科学的理解」を深め、望ましい「情報活用の実践力」を身につけることができたといえる。また、本研究では、教材や授業展開をテキスト化し、これらを適宜Web上でも公開してきた。このことにより、情報通信ネットワークの学習に取り組もうとする全国の技術科教員に本研究の成果を分かち伝えることが可能になった。


Back


探究・表現・交流を深めるデジタルポートフォリオ評価


つくば市立吾妻中学校 総合的な学習研究会

代表 久保田 善彦

つくば市立吾妻中学校(茨城県)


 本校では、4年前からExplore(探究)・Exchange(交流)・Express(表現)の力を育てようと総合的な活動の時間<3E学習>を展開してきた。一作年度から、3E学習の中でデジタルポートフォリオを実施している。データをデジタル化しサーバに保存することで、保管するための場所もとらず整理も容易になった。またデジタルデータであれば、加工が容易になるだけでなく、データや作品の組み合わせ等を、容易に変えることができた。しかし、学習の深まりは、それとは比例していなかった。デジタルポートフォリオが、評価と密接に結びついていないことが原因と考えられた。そこで、以下の4点を計画・実施した。

  1. 活動の評価基準を定め、それに沿った自己評価を実施した。

  2. 学習報告を電子メールで行った。これによって対面した学習カウンセリングが活性化した。
    学習報告ファイルはポートフォリオとなった。

  3. 自分のプレゼンを客観的に見直すためにVODを利用した。自己評価だけでなく他者評価も容易になり、プレゼン能力の向上に繋がった。

  4. 活動に対する振り返りのために、振り返りマップを作成した。再生機能を使うことで、これまでの活動を意味づけ、その後の活動計画に生かすことができた。

 総合的な学習における評価が進むにつれてその価値が認められ、教科でも利用され始めている。子どもの探究を深めるためには、自らの学習の振り返りや、教師の学習カウンセリングが必要である。単なるデジタルポートフォリオではなく、デジタルポートフォリオ評価を意識した実践が必要であることがわかった。


Back


総合学習に活かす、第1学年の「情報リテラシー学習カリキュラム」の開発と実践


筑波大学附属中学校(筑波ネット)

代表 小山 浩

筑波大学附属中学校(東京都)


 21世紀の教育のキーワードは「生きる力」である。この力を総合的な時間を活用して育む事が求められている。「生きる力」の様々な要素の一つとして、「自ら学び、自ら考える力」、すなわち「自己教育力」がある。この力を伸長するために、総合的な学習の時間の中で『情報活用能力』を育成することが大切であると判断した。そこで、"リテラシー"の学習が入学期の生徒に必要であると考え、「情報リテラシー」のカリキュラムを構成し、実践試行することを研究の目的とした。

 カリキュラムは、(1)新聞の活用法、(2)図書の利用・文献調査・聞き取り調査法、(3)PCシステムの活用法、(4)メディアリテラシー、(5)ディベートの方法 の五つのコースを1年間にわたる内容で構成した。カリキュラム実施後に、16の質問項目からなる生徒意識調査を実施した。その結果、いずれの項目に対する回答も4.0以上の高ポイントを示した。なかでも、Q3(集めた情報のまとめ方を学習することができた)やQ11(必要な情報の集め方を学習することができた)に対する回答から、情報の収集やそのまとめ方に良い影響を与えたことが示唆された。また、Q7(ひらめきやアイディアが大切だと思った)やQ15(コツコツと努力を積み重ねていくことが大切だと思った)の結果から、ひらめきやアイディアを大切にしつつ、コツコツと課題を追求していく学習の大切さが示された。

 生徒の自由記述によっても、「情報のまとめ方、整理の仕方がわかった」、「責任や学習する意味を認識する事が大切だ」、「新聞の見出し、経済・政治・社会面などをよく見て社会の動向や性質、傾向を見たい」、「自分が納得いくまでどんどん調べる」、「情報を集める方法がたくさんあることがわかった」などを得ることができた。よって、本カリキュラムが目指した情報活用能力の育成を、ある程度達成することができたと考える。


Back


セキュリティ意識を高め情報社会によりよく生きる子ども達を育てるための授業の設計


グループ研究

代表 森下 博之

岡山大学教育学部附属中学校(岡山県)
(前任校:早島町立早島中学校)


 本研究では、インターネットのセキュリティ意識を高め、ウィルス問題への対処をはじめとした「情報社会に参画する態度」を育成するために、中学校技術・家庭「情報とコンピュータ」の授業を設計し、実践により有効性を確かめた。

 第1学年で、情報活用の実践力を中心に実践的・体験的な学習を進めた後、第3学年で情報の科学的な理解を押さえることにした。また、授業での学習内容が1時間ごとにとぎれることなく、相互につながりをもって深まっていくように題材を配置した。セキュリティ技術の教材として、画像及び映像コンテンツやソフトウェアを活用して、より安全にインターネットを利用するための科学的な理解を効果的に高め、体験的・問題解決的学習を行うことで、インターネットのセキュリティ意識を高めていくことができた。

 インターネットのセキュリティ技術についての理解を深める学習は、単に、インターネットのセキュリティ意識を高めるにとどまらず、情報活用の実践力、情報の科学的な理解、情報社会に参画する態度の向上にもつながることがわかった。


Back


地域の教育資産のマルチメディアデータベース化と情報教育の評価
〜 自ら主体的に学び、課題を解決する生徒の育成と
データベース活用に関わる生徒の目標に準拠した評価方法の検討 〜



荒尾市社会科研究会

代表 村上 豊優

荒尾市立荒尾第一中学校(熊本県)


 本研究は、地域の歴史的価値の高い教育資産や地域独自の伝統文化をマルチメディアを活用したコンテンツとし、データベースとして登録し、マルチメディア教育資産データベースを構築する。本データベースを使って生徒が学習を進めることにより、生徒自らが生活する地域について関心を高め、自らが設定した課題解決学習や調査研究を進める上で大変有効である。これらの学習活動を通して、生徒の情報活用の実践力等を育成することができる。

 次に、生徒の情報活用能力等を独自に作成した評価規準(基礎的・基本的事項)によって評価し、その評価の有効性を実践に基づいて検証する。検証の結果、有効性が認められた評価規準に基づいて生徒を評価し、生徒の変容を明らかにしながら、情報活用能力の育成を検証していくことをねらいとした。

 その結果、現在、静止画像359点、動画像25本をコンテンツ化した。また、情報教育において生徒が身につける資質を観点別評価規準(基礎的・基本的事項)として明らかにし、評価規準表および評価基準を作成した。その評価方法も自由記述をベースとした情報教育の評価としては、例を見ないものを実施することができた。さらに、その有効性を検討するために、実際の授業において作成した評価規準表に基づく生徒評価を行った。その結果、本学習を進める上で学習のレベルが向上しており、生徒の情報活用に対する一定の成果を上げることができたと考える。今後もこの評価活動を継続し、その有効性を検証し、改善を重ね、確かなものにしていきたい。


Back


情報化社会に参画するためのプレゼンテーション能力の育成


滋賀県情報教育研究会

代表 北村 光一

滋賀県立彦根工業高等学校(滋賀県)


 高度情報化社会に参画する態度として、情報を旨く伝達する能力が大切である。学校教育においても、コンピュータのさまざまな活用がされている。特に、最近、小学校や中学校では、コンピュータを道具として情報を積極的に活用できる生徒が年々、増加している。このような状況の中で、高等学校においては、高校生が、単に、コンピュータを道具として活用するだけでなく、プレゼンテーションを通して、情報を旨く相手に伝える能力が要求されている。しかし、現在では、情報に関する知識や技能を身に付けることだけで、情報科の授業が実施されているのが現状である。

 そこで、筆者らは、今後の情報化社会に参画するためには、話し手が聞き手に対して、分かり易いプレゼンテーションをするための要因は何かを検討し、プレゼンテーション・スキルを習得するだけでなく、プレゼンテーションの学習過程で、プレゼンテーションに関する興味・関心を高めるためにアニメーション・教材を開発し、プレゼンテーションの発表過程を評価した結果、スライドの切り替えタイミング、間の取り方が聞き手の理解に大きく影響することが分かった。さらに、これらのプレゼンテーション・スキル以外に、情報を正確に判断し、選択し、加工し、構成するために、論理的な構成能力が必要であることも明らかになった。本研究での取り組みによって、今後の情報化社会に積極的に参画する態度の育成を図ることができた。また、従来から、インタラクティブなプレゼンテーション評価を伴ったコミュニケーション授業は実施されていないが、筆者らの教育実践では、生徒たちにとって実用性の高い授業を行うことができた。


Back


学習成果を結びつけるデジタル・アーカイブ化の手法とその検索・配信システムの研究


弥生人の会

代表 北村 英純

鳥取県立青谷高等学校(鳥取県)


 本研究では、高等学校の教育活動において作られる電子的なコンテンツを管理するポートフォリオシステムの開発と評価を行った。本システムを利用すると、生徒は授業で出された課題や、自主的に作った電子的な作品などをウェブブラウザを通してファイルサーバに保存し、それをあとから取り出して閲覧することができる。また、クラス担任と教科担任は、生徒が保存したコンテンツをそれぞれの権限に応じて閲覧したり、生徒に対してコメントを返すことができ、生徒の自己評価や、教師による生徒の学習状況の把握、助言に役立てることができる。

 本システムでは教育活動を2カテゴリ4領域(アクティビティ:教科活動と自主活動、及びヒストリ:自分の歴史と学校の歴史)に分けて考えている。この4領域で作り出されるコンテンツは、それぞれの領域別に保存される。そして、それを閲覧する場合には、領域別にコンテンツを取り出したり、領域を統合して時系列に取り出したりといったことができる。つまり、紙媒体のポートフォリオでは実現が難しい、何通りかの異なる視点からのコンテンツの提示が可能となっている。これにより、教科活動の成果を科目別に閲覧して学習活動をふりかえるのを支援したり、学習活動以外の活動も含むコンテンツを閲覧して、学校生活全体をふりかえるのを支援したりといったことが可能になる。後者は自分の歴史領域を記録する日記に他の3領域の情報をリンクすることで実現している。この領域を統合した閲覧環境では各領域に保存されているコンテンツが相互に情報を補完し合うので、連想の力によって、記憶にある情報を呼び起こすこともできる。


Back


理数科における教科「情報」に関するカリキュラムの開発及び実践研究


岐山高校情報教育研究会

代表 石川 昭彦

岐阜県教育委員会学校支援課(岐阜県)
(前任校:岐阜県立岐山高等学校)


 本校では理数科において課題研究や数学のコンピュータ実習等で、情報機器の利用を進めてきた。課題研究では、実験データの処理や成果のプレゼンテーション能力の育成を行い、コンピュータ実習ではプログラミングを行うことで、情報機器活用能力・情報処理能力の育成を図ってきた。これまで実施してきた理数科目などにおける実践を、平成15年度から実施する教科「情報」に取り入れて、情報を科学的に理解して活用する態度を伸ばすことができるようなカリキュラムや指導方法を開発することを研究の目的とする。

 今回の研究では、教科「情報」のどこでどんなふうに教材を用いるのかという観点を重視し、次の1〜3を基にして教材開発を進めた。

  1. 個人学習法のように、単元のテーマに沿ったいくつかの教材を準備して、各自の興味や関心に沿って教材を選択させて実習を進めるタイプのカリキュラムおよび教材開発

  2. 教科「情報」のカリキュラムにおいて、情報機器の利用、情報の科学的理解、情報活用の実践力向上を目指す実習を一通り学習した後、総合実践的な課題を10時間程度の実習で行わせる。

  3. 情報検索・表計算・グラフ作成・ワープロ・プレゼンテーションなどの共通する実践的情報技術を含むものを準備して、生徒の興味関心により選択させる。

 研究担当者が開発実践した教材は次の1〜4である。

  1. 「サイコロの目の出方を予想しよう」は、「物理IB」のシミュレーション実験を、教科「情報」の発展的内容として扱ったものである。最初に表やグラフを手書きで作成して実験処理することで、処理のアルゴリズムを理解させ、処理の簡便さやシミュレーションのためにパソコンを用いることの必要性を実感させる。表計算ソフトを用いて実験式を導くことは、特に理数科の生徒にとってはプラスになる知識である。

  2. 「気象データの分析」は、テーマを「避暑地を探す」ことに置いて、生徒になじみやすくした。緯度、標高および気温のデータを表計算ソフトにより解析し、気温と標高、気温と緯度の関係をグラフから導き出し、任意の地点の気温をシミュレーションする。また、気温と湿度、降水量、風向風速等の関係について解析することで、理科的な検討を加えることもできる。

  3. 「方程式の近似解を探検(体験)しよう」は、2次方程式の無理数の解を近似的・体験的に求める実習である。無理数の解を数値として求めて体験的に理解することは数学的にも意義があり、その数値処理はコンピュータの得意分野といえる。2次方程式のみならず、高次方程式や三角関数、分数関数、指数関数などにも発展することができる。また、別のアルゴリズムを調べて挑戦できる内容である。

  4. 「家庭学習と学習成績の分析」は、岐山高校の生徒が日常的に記録している「家庭学習記録」を利用して自分の学習状況を分析し、学習成績との相関関係を理解しようとする内容である。学習成績は、実力考査や外部模試のような長期的な学習の成果が問われるものと、小テストや定期考査などの短期間の学習生活が反映されるものがあり、生徒自身が分析すると良いかもしれない。自分だけのデータだけでなく、統計的な切り口で迫る方法も考えられる。「入力フォーム」や「他の人の実践例」を示して、どんなレポートを作ったらよいかを考えさせる。

Back


新しい通信制教育システム「ラップトップ・スクールモデル」の構築
〜 ITの積極的な導入と活用 〜



岐阜県立華陽フロンティア高等学校

代表 小山 徹

岐阜県立華陽フロンティア高等学校(岐阜県)


 本校通信制が抱える (1)自学自習の難しさ (2)仲間意識・帰属意識の育ちにくさ (3)通信手段の乏しさ、といった通信制のシステムの抱える課題を、ITを積極的に導入・活用する視点から見直し、その解決への方向として、ネット上に学校の持つ機能を実現し、パソコンや携帯電話を利用し自宅からでも、学習活動や仲間作りを行える環境を構築しようというものである。

 ラップトップ・スクールが、生徒会活動や委員会活動等学校生活全般の中に浸透することで、'学校生活=情報社会への参加'という構図になり、新教育課程により新たに導入された教科「情報」に対しても、教科の目標が達せられると考える。

 さらに、距離や時間の制約から開放されるので、学校の枠を超え、他県の通信制高等学校との交流の可能性も見えてくる。

 その実現のために、生徒・教師双方に、ハード面での機器整備と、ソフト面での情報リテラシーの向上が求められるが、機器の整備状況に合わせ、さらに現在のサービスの質を落とすことなく実施するためには、一斉一律ではなく、できるところからできる範囲でという息の長い取組が必要である。


Back


普通教科「情報」における広域学習環境下でのカリキュラムと評価法の開発
〜 高校生の自律性・コミュニケーション能力・自己表現能力の向上のために 〜



東海スクールネット研究会

代表 栗本 直人

滝中学校・高等学校(愛知県)


 本東海スクールネット研究会は、1994年12月12日インターネットの教育利用を考える会として発足した。1998年より、『広域での学習環境の構築は、高校生の自律性を養う援助として効果がある。』という仮説のもとに、自律プロジェクト(詳細は後述する。)が開始された。その発足会には、この研究の助言者である坂元昂先生に基調講演をいただき、その後の動きとして、坂元先生はじめ多数の方々の努力で、普通教科「情報」が誕生した。

 本研究では、その教科「情報」をいかすために、2002年度は、この1998年〜2002年度までの課外活動として広域での学習環境の構築などのまとめを行ってその効果を検証した。2003年度は、はじめての試みとして、教科「情報」の枠組みの中で広域での学習環境の構築を図った。

 具体的には、その広域での学習環境の中で高校生の自律性を養うためには、

  1. 効果的なコミュニケーション能力(Effective Communication能力)
  2. 効果的なプレゼンテーション能力(Effective Presentation 能力)
  3. 論理的思考能力(Critical Thinking & Logical Thinking 能力)

 などの育成が必要であり、2002年度は、5年間のまとめとして、情報の共有・蓄積・継承の仕方を研究成果とまとめ、いろいろな問題点を指摘した。また、2003年度は、これを教科「情報」のカリキュラムの中にどのように組み込んでいくか、そして、高校生のモチベーションとしてのテーマ設定を、Career Preparation、つまり進路学習(職業研究)をテーマとして選んだ。(これは、2001年からのロサンジェルス教育委員会からいただいた Career Way 2000 なども参考にした。)これらの問題点、成果、今後の課題と展望について述べたい。


Back


情報教育におけるメディアリテラシー授業教材の開発に関する研究


グループ研究

代表 森下 博正

静岡県立浜松工業高等学校(静岡県)


 本稿は、主として高等学校におけるメディアリテラシー教育実践の在り方について述べる。

 研究にあたり、トロント(カナダ オンタリオ州)におけるメディア教育実践プログラムを調査し、(1)デジタル化した社会におけるメディアの多様化と複雑化を念頭に置きながら分析した、メディア社会の到来に伴う時代要請、(2)わが国の情報教育の目標やねらいを捉えた情報教育としてのメディアリテラシー教育実践の在り方、(3)発達段階における教育目標や留意点から検討した人づくりに必要な「生きる力」の育成、(4)授業実践を通して得られたメディアリテラシーを学校教育に取り入れる上での今後の課題、の視点から考察している。

 その結果、研究の成果として、

  1. カナダのメディアリテラシー教育実践に関する調査結果をもとに検討したこと。
  2. メディアリテラシーの時代要請から学校教育として必要な知見を盛り込んだこと。
  3. 発達段階における教育目標や留意点からメディアリテラシー教育のねらいを明確にしたこと。
  4. 高等学校における情報教育との位置づけを明確にしたこと。
  5. 高等学校におけるメディアリテラシー教育に求められる学習内容の5項目の観点(詳細は後述)を抽出した。それにより、授業実践とカリキュラムを検討する上での方向性が整理されたこと。
  6. 上記5項目の学習内容の観点から、一部ではあるが授業教材を作成し授業実践した点。また、授業実践を通して得られた経験から、メディアリテラシーを学校教育に取り入れる上での今後の課題を展望したこと。

があげられる。

 今後は、上記5項目の学習内容の観点から、満遍なく具体的な授業教材を作成し、授業実践を通して学習効果を評価していくこと、が求められる。さらに、メディアリテラシー教育を導入するために求められる教育コラボレーションの在り方について、情報教育の展開として検討していくことが課題である。


Back


情報教育に対して教員が抱く概念を相互共有させることで変革していく方法


大阪府私学教育情報化研究会
「情報」関連の授業公開キャラバン実行委員会

代表 長尾 尚

大阪信愛女学院短期大学(大阪府)
(前任:大阪信愛女学院メディアセンタ)


 教科「情報」の設置が決まり、現職教員対象の免許講習会が実施された。しかし参加者からは、具体的な授業イメージがつかめないといった不安の声が多数出されていた。新学習指導要領解説の中で述べられている「授業のねらい」をどうすれば実現できるのかで戸惑っていた。大阪府私学教育情報化研究会では、『「情報」関連の授業公開キャラバン』という名称で新しくプロジェクトを立ち上げた。新教科「情報」の導入(2003年)以前に情報機器を利用した授業を実施している教員に依頼して、その授業を一般に公開する活動を2001年9月から開始した。毎回 (1)授業参観 (2)参加者による意見交換会 (3)自由参加の交流会、を実施してきた。

 本研究の目的は、こうした教員間での情報交換を通して、教科「情報」の設置目的についての認識を深めて不安内容を明らかにして解消につなげる手法を構築することにあった。特に情報交換をする過程でネットワークと対面の双方を活用し、参加教員が自然に「情報活用の実践力」を身につけて「この教員コミュニティーに主体的に関わる」ことが容易にできるように工夫をした。情報担当者みずからが情報活用能力を備えていなければ、変化が激しく動態的要素を含む「情報」の授業を十分にデザインできないからである。府下の私立学校(約100校)を中心に呼びかけ、開始から2年半に合計24回実施し、毎回熱心な教員が参加してくれた。開始当時は、仲間意識を醸成し自由に話し合いが展開できる雰囲気作りに主眼をおいた。その後、授業以前にウェブ上で授業案を公開したり、それに対する助言や質問を行える場をネット上に提供することで、より日常的に意見交換を実現させる仕組みを作った。その結果、繰り返し参加する教員がでてきたり自ら授業公開をさせて欲しいと申し出る教員も現れるようになった。

 「情報」開始年度が終了した時点で参加者にウェブを使ったアンケート調査を実施し、この企画に参加して「情報」に対する取り組みに何らかの変化があったかを尋ねた。必ずしも当初の不安が全て解消したわけではないが、他校の教員の悩み等を共有でき「自分の授業にもっと工夫が必要である」と認識した参加者が多くいることがわかった。

 キャラバン企画は、現場教員が集まり意見を交換する中でみずからの課題に気づき、自分で考えて課題解決をする場を提供した。延べ500名ほどの参加があったが、ネットワークと対面の双方による意見交換を実現して、結果的に情報のねらいを模索する教員研修にも匹敵する効果をあげられた。


Back


インターネット上での協調と交流を重視した知的生産物開発コンテストによる情報教育


学院ネット

代表 中島 康

早稲田大学高等学院(東京都)


 インターネット上でコミュニケーションをとりながら知的生産物を制作するプロジェクトを実行した。本研究の中で、共同制作に成功できたタイプの生徒は、次のような特徴を持っていることが示された。

  1. ネットワーク上で相手の感情・時間に対して尊重・留意できる。
  2. 共同制作についての自らの貢献度を高めるように、ネットワークでの交流前の準備に努力している。
  3. 事前の準備内容は、インターネット等での情報収集やプログラム・資料作成などである。

 本研究で行なわれたネットワーク上での交流しながらの共同制作は、上記2の内容から明らかなように、教科情報における『情報活用能力』と『情報社会に参画する態度』を養う目的としての課題実習としてふさわしい性格を持っていることが示された。


Back


高等学校「情報」における「モデル化とシミュレーション」のための教材開発


グループ研究

代表 中野 勝之

神戸市立兵庫商業高等学校(兵庫県)


 2003年度より、高等学校において、新しい教科「情報」が必修科目として設置された。普通科目の「情報B」は、情報科学の基礎、すなわち、コンピュータの構造、アルゴリズム、データベース、モデル化とシミュレーションなどの内容を含んでいる。また、専門教科の中では「モデル化とシミュレーション」は、共通分野に位置し、専門教科情報の中でも重要な科目のひとつである。

 本研究では高等学校の普通教科「情報B」、専門教科「モデル化とシミュレーション」について、問題解決の手段としてのモデル化とシミュレーションの授業展開事例を生徒の認知過程に即した順序付けを行う。そこで取り扱う教材として生徒に身近な現象の中から学習に適する題材の選択と配置について授業展開の形で提案し、モデル化の科学と結び付けた教材のあり方を検討しその開発を行う。

 モデル化のツールとしては特にソフトウェアを用いない図的モデルがある。しかし条件を変えながら体験的・実験的にシミュレーションを行うことにより、問題解決を図る手法としてのモデル化とシミュレーションを考えるとコンピュータの活用は重要である。ここでは広く一般に受け入れられ汎用生のあるEXCELと、専用ソフトであるがモデルの構築・シミュレーションが容易なSTELLAを使った場合の教材の開発、更にSTELLAをベースとしてEXCEL上で作動するVBA版STELLAについて報告する。


Back


「総合的な学習の時間」における情報活用能力の育成について


グループ研究

代表 中西 敏昭

兵庫県立尼崎小田高等学校(兵庫県)
(前任校:兵庫県立神戸甲北高等学校)


 今回の研究では、身近な自然から得られた環境情報を活用して、考察する力を養い、どのように表現するかなどの生徒の主体的な情報活用能力の育成を目指した。多くの情報の中から正しい情報を検出するには、テレビやインターネットに代表されるメディアによる加工された情報ではなく、自ら体験したことから情報を得ることが重要である。

 また、多くの情報が日常的に入ってくる状況において、一方的に受信するだけでなく、情報を選択し、さらに情報を発信することが重視されねばならない。この情報発信能力は国際社会で日本人が活躍するための基礎的な力となると考えられ、「総合的な学習の時間」は有効な情報活用能力の修得の場であると思う。さらに、教科横断的な「総合的な学習の時間」の中で情報活用能力を育成することは、生徒の「生きる力」を育むことにつながる。

 しかし、総合学科であっても、特色ある科目では教師はサポーターでありファシリテーターなのだが、教科学習になると基礎・基本を教えなければならないということから、従来の一斉授業やドリル授業を行なっている。「学力の低下」が叫ばれるが、その前に「学習意欲の低下」があるように思う。モチベーションを高めれば、生徒は学習することは総合学科の生徒によく見られることである。

 多くの学校は受験という呪縛から解放されずに、教科の枠にとらわれがちである。受験では、答えは一つでなければならないから、客観的に数値化されるものだけが、受験の教科になる。しかし、人生における課題の答えは一つではない。いくつもの正解がある。1+1の答えは2しかないが、2=1+1であり、2=3-1でもあり、2=… と正解はいくつもある。

 総合学科の先行的な事例をもとに、高校の大半を占める普通科における「総合的な学習の時間」の効果的な実施方法を検討してきた。情報の収集、整理、処理、発信、活用と高校生同士の交流も含めて実施してきたが、「生きる力」は生徒が情報活用能力を身につけることで育まれると判断した。テレビ会議システム、GIS(地理情報システム)は有効な道具であるが、教師が使いこなしてから実施するのではなく、生徒に教えてもらうつもりで失敗をことも恐れずに実施してみるのがよいと思われる。教師が知識の伝達者ではなく、生徒の知を創造するために支援をすることが、教師自らも創造的活動に参画していくことにつながると思われる。


Back


視覚シンボルとマルチメディア技術を活用した
知的障害児の情報技術教育に関する研究
〜 文字の代わりに絵図画を用いた電子メール・コミュニケーションの
実用化と実践的評価 〜


Development of the Electronic mail System for Mentally Retarded Children
using the Pictogram and Ideogram Symbols



グループ研究

代表 清田 公保

熊本電波工業高等専門学校(熊本県)


 コミュニケーション支援の完全な理想形態は、様々な障害者や言語の異なる人同士が必要とする情報を補完的に完備したシステムであるとの観点に立ち、マルチメディア情報に含まれる映像や音声、テキストなどに等価な協調性を持たせた共通メディア情報言語の概念を新たに提案する。本研究では文字や言葉を十分に利用できない知的障害児の情報教育に関して、絵図画を中心とした視覚シンボルとメディア情報を用いたコミュニケーション支援をとおして知的障害児における情報処理教育の導入を試みる。 実例としてコンピュータを介した情報伝達の実用化を目指し、シンボルを媒体としたコミュニケーションツール(電子メールソフト)を開発する。本提案システムを知的障害児の情報教育授業に適用させた結果、視覚シンボルを媒介とすることによって数名の児童が操作可能になり、電子メールの活用の見通しが得られた。

 キーワード 感性技術、コミュニケーション、情報教育支援、日本版PIC

 Abstract The perfect multimedia technology has to include all visual and auditory sense assistance that is needed for visually disabled person or deafness person. The aim of a study is a computing education support for mentally retarded children who cannot use Japanese character and language, using a voice information and vision symbols. This paper proposes the new concept of a common multimedia language that is composed of a sound, a movie and a text having a same meaning, and the electric mail system that used the PIC (Pictogram Ideogram Communication) symbol instead of the Japanese character. Our proposed system was used for mentally retarded children in the information education class. From the result of the evaluation experiment, it was confirmed that some mentally retarded children were able to use of the electric mail application by using the proposed system.

 Keyword Kansei-information technology, Communication, Educational support, PIC


Back


知的障害児・者の情報活用を支援するWebアプリケーションの開発とその実践


グループ研究

代表 青木 高光

上田養護学校(長野県)


 知的な障害を持った生徒たちへの情報教育は、運動障害などを持つ生徒へのそれとくらべても遅れていると言われている。

 そこで本研究では、その原因を明確にし、専用に開発したWEBアプリケーションとインターネットに常時接続された環境を用いて、生徒が自ら情報を収集し活用するための新しいシステムの構築と授業実践方法を提案する。

 具体的には

  1. インターネットサービスの利用内容を「メール」「検索」「データのクリッピング(保存)」の3点に絞り込み、それらを活用しやすいインタフェイスで提供するWebアプリケーションの開発と評価

  2. 生徒にとって必要な情報を、常時接続によって携帯端末に送り込める、専用サーバーシステムの構築と評価

  3. 上記の環境を利用し、生徒が自らの課題設定に対して、インターネットを活用して解決に取り組む意欲と能力を育てる支援方法の実践と評価

の3つの課題を、修学旅行の学習などの単元と結びつけ実践的に評価を行い、このシステムの有効性と課題を報告する。


Back


「情報の科学的な理解」と「情報社会に参画する態度」の育成を
目標にした小中学校段階における情報教育実践の開発



浜松情報教育研究会

代表 内山 恵美子

西遠総合教育センター(静岡県)


 初等中等教育における情報教育は、「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3つの要素から構成される情報活用能力をバランスよく育成することを目標としている。(文部科学省、2002、「情報教育の実践と学校の情報化」)

 ここ数年、小中学校課程の各教科や総合的な学習の時間においては、情報教育の取り組みが急速に進展してきている。しかし、必ずしもバランスのとれた情報活用能力の育成が保証されていない現状であり、以下の問題をかかえている。

  1. 3つの要素のバランス
    「情報活用の実践力」を目標とした情報教育実践は多数行われているが、「情報の科学的な理解」と「情報社会に参画する態度」の授業実践は数少ない。

  2. 指導内容のバランス
    「情報の科学的な理解」と「情報社会に参画する態度」の指導内容に以下のような偏りが見られる。
    (1)「情報の科学的な理解」は、コンピュータの仕組みや操作の実践に指導内容が偏っている。
    (2)「情報社会に参画する態度」は、情報社会の影に対する実践が主流を占めている。

 よって、文部科学省の指導するバランスの取れた情報活用能力の育成が保証されているとは言い難い現状であるといえる。

 そこで私たちの研究会では、「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の本質的な意味を反映させた望ましい授業を模索し、小中学校段階の日常の授業の中で実践できる教材を開発した。本稿では、開発単元の今後の改善の方向性を含め、研究成果の一端を報告する。


Back


高等学校の各教科と教科「情報」が担う情報教育の実践と評価
〜 体系的な情報教育推進のために 〜



指定研究実行委員会(上月)

代表 山田 胖

岡山県情報教育センター(岡山県)


 高等学校では平成15年度から学年進行で新しい教育課程が実施されている。ここでは、あらゆる学習活動を通して「情報活用の実践力」の育成を図ることが求められており、普通教科「情報」及び専門教科「情報」の新設に加えて、全教科等においても「情報活用の実践力」を育成すべきであることが示されている。しかし、現実には、各教科のどのような学習活動において「情報活用の実践力」を育成すべきか、その具体的事例が明確に示されておらず、教師がよく理解していないままで実践されているのが実情である。また、各教科で情報教育を実践していても、教科間の連携が取れておらず、生徒にとって本当にバランスがとれた情報教育が実施されているのかがあいまいなままであると考えられる。

 本研究は平成14・15年の2年間の研究であり、平成14年度は、新教育課程における各教科の学習活動を調べ、教科の目標を達成しながらどのような学習活動を行うことによって、どのような「情報活用の実践力」が育成できるのかを明らかにした。また、その内容を各教科担当教師に示すための資料を開発し、岡山県内の公立学校全てに配布した。平成15年度はその資料を基に、岡山県立笠岡高等学校の協力を得て、第一学年において各教科と教科「情報」が連携をとりながら総合的に情報教育を推進した。その結果、高等学校段階において、生徒にとってバランスの取れた情報教育を推進することができた。また、そのための校内連携の在り方についても提案することができた。

 キーワード 情報教育 情報活用の実践力 高等学校 教科「情報」 各教科


Back


創作活動の場を活用した情報モラルの育成
〜 のびのびパソコン作品展の取り組みを通して 〜



のびのび情報教育研究会

代表 井上 夕起子

土佐市立北原小学校(高知県)


 「情報社会に参画する態度」を育成する場として、本研究会が毎年開催している「のびのびパソコン作品展」を活用し、創作活動の場を活用した情報モラルの育成に取り組んだ。高知県内の多くの学校が創作活動に取り組んでおり、既存の活動を拡充する手法は、学校も取り組みやすい。また、創作活動の中には、著作権など身につけなくてはならない情報モラルに関わる場面があり、実体験の中で学べる内容が多い。作品づくりの過程では、著作権等を意識した情報モラルの指導が行われ、優秀作品の中には情報モラルを意識した作品が数多く見られた。のびのびパソコン作品展は、子どもたちにとって、楽しみながら情報モラルを学べる場となった。今後も、子どもたちの情報モラルの育成をめざし、のびのびパソコン作品展を軸とした取り組みを進めていきたいと考えている。


Back


携帯情報端末による即時的評価支援システムを活用した「情報活用の実践力」の育成


新潟県新津市立小合東小学校

代表 後藤 康志

新津市立市之瀬小学校(新潟県)
(前任校:新津市立小合東小学校)


 「情報活用能力」に限らず、子どもに「力が付く」時は、教師が明瞭な目標を持ち、意図的・計画的に授業や教材を組織し実践したときと考えられる。教師も子どもも学習の達成のイメージが明瞭にない状況では、「体験あれども学習なし」という「はい回る」情報教育になってしまうおそれが大きい。最も学習成果をあげるのは、教師も子どもも学習の達成が把握できる状態といえる。

 情報教育において学習の達成を把握するためには、教師の視点からは、<1>「情報活用の実践力」が高まった子どもの状態を明瞭にイメージすることができるか、<2>学習過程における子どもの変容を見取ることができるかが必要になる。このためには教職員間で情報教育やそのねらいについての研修を深め、自分自身もメディアを活用して校務を処理したり授業実践を重ねていったりする中で、学校として育てたい子ども像を明確にしていく作業が必要になる。また、子供の学習過程をその子の学びに即して残していくためには、授業進行と平行しながら、子供の様子を見取り即時的に記録する必要がある。このような問題を解決する方途として、本研究では携帯情報端末の表計算ソフトウェアのワークシート上に、授業と平行して即時的評価を書き込んでいくことで、紙メディアによる制約を乗り越え子供の変容をとらえ、個々の学習者の状況を踏まえた学習支援が可能になるかを明らかにすることを目指した。

 結果として、次の3点が明らかになった。

  1. クラス一覧集計機能により、支援が必要な子供が一覧表上に赤字で表示され、実際の授業場面では「次の時間には誰を特に支援しなければならないのか」がすぐ分かり、利用しやすかった。
  2. 児童別変容表示機能により、「複数の単元における子供の変容もみていきたい」という教師のニーズに答えることができ、紙メディアを用いるよりも簡便であることが分かった。
  3. コメント一覧機能により、個々の児童に必要な学習支援や必要な準備、授業実施上の留意事項、新しい評価の観点についてのコメントなどが集積・再利用できた。

 評価を行うためには、目標が明確でなくてはならない。携帯情報端末を活用した即時的評価を実践することで、教師が「情報活用の実践力」を付けた子ども像を明瞭にイメージすることができ、その姿に即して「子供の何を支援すべきか」、「いかなる授業を実施すべきか」が明瞭となり、時期を逃さず必要な支援が可能になること、その結果として子供の情報活用の実践力の育成に資することができることが明らかになってきた。

 さらに、本システムの発展の方向として、(1)評価規準をより具体化した上での複数教師による子どもの学習の達成の把握、(2)教師による評価と子どもの自己評価の一致度の検討をあげている。


Back


中学生の情報モラルを育成するための学習プログラムの開発と評価


個人研究

古川 聡

上越市立城西中学校(新潟県)


 平成14年度より中学校の技術・家庭科において情報モラルに関する指導が行われるようになった。しかし、技術・家庭科の授業を通して情報モラルを理解させることができたとしても、理解が実践に結びつかなければ意味がない。大切なことは、情報モラルを正しく理解するとともに、情報モラルに照らして適切な行為を判断・実行できる意欲や能力を育成することであり、その指導法の確立が求められている。

 本研究は、情報モラル教育を情報モラルの実践者の育成ととらえ、理解が実行に結びつく指導法の開発を目的としている。そのためには、技術家庭科の指導に加えて道徳教育的なアプローチが必要だと考え、技術・家庭科教育における情報モラル学習プログラムとともに道徳教育における情報モラル学習プログラムを開発した。そしてそれぞれのプログラムの効果を検証することを通して、情報モラルの実行力を育成する指導のあり方を提案したい。

 道徳教育における学習プログラムでは、モラル・スキル・トレーニングを援用した学習プログラムを構成した。そして情報通信ネットワークを利用してモラル・スキルを訓練する学習プログラムと情報通信ネットワークを利用せずにモラル・スキルを訓練する学習プログラムに加えてモラルを訓練せずに問題解決に必要なスキルのエクササイズを行う学習プログラムの3つの学習プログラムを用意して、それぞれの学習効果を測定し、比較した。

 技術家庭科では、情報モラルとともに情報活用の実践力の育成をねらった学習プログラムを構成した。分析においては、生徒を情報モラルのレディネスの上位群・中位群・下位群に分け、各群が学習の前後に獲得した得点を比較分析した。

 研究の結果、道徳学習における学習プログラムの効果が見られなかったものの、技術家庭科教育における学習プログラムは理解力と判断力のいずれをも向上させることがわかった。さらに相関分析の結果、理解力よりも判断力の方が実行力に強く結びつくことが明らかになった。これらの結果より、情報モラルの指導においては知識理解に加えて判断力の指導をすることが情報モラルの実践者の育成に必要だという結論に達した。


Back

[トップ] [スポーツ選手支援事業] [上月スポーツ賞] [スポーツ団体・競技大会助成事業] [クリエイター育成事業] [教育・文化・社会支援事業] [その他]

(C) KOZUKI FOUNDATION