一般財団法人上月財団
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事業紹介

第8回上月情報教育研究助成 論文要約


情報時代に主体的に生きる力を育む学習の場の創造
〜 社会科と国語科における協同授業を通して 〜



共同研究

代表 井寄 芳春

大阪教育大学教育学部附属平野中学校(大阪府)


 メディアリテラシー教育は、近年、理論面や授業のアイデア面等ではさまざまな本で紹介されているが、具体的な実践をもとに体系化されたカリキュラム全体のモデルが提案されている事例に乏しい。映像メディアが生活の大きな位置を占めるにいたった現在、映像と人間に関する幅広い認識と映像情報を読み解くスキルを形成することは学校教育の新たな課題として提起されなければならない。

 本研究では、以上のような観点から、メディアリテラシー教育を中核とした情報教育カリキュラムモデルを具体的な実践の蓄積を通して構築しようと試みたものである。このようなカリキュラムモデル(スコープとシークエンス)は、「中学校版・情報科カリキュラム」のための「基盤整備」として位置づくものと考える。

 方法としては、選択教科において、国語科と社会科のティームティーチングを主体として実施した。また、専門家のアドバイスや評価を組み込み、オーセンティックな評価活動を工夫した。社会科と国語科の教科の専門性や目標、指導方法を生かしながら、生徒の知を活性化し、複眼的、総合的な視野を獲得させようと考えたのである。主として、社会科は「市民性」を培い、国語科は「論理性」を高めることを主眼として実践を構築した。

 カリキュラムとしては、「(1)人間とメディアの関わりを考える」「(2)情報に操作されない自分をつくる」「(3)私たちのメッセージを創作し、発信する」の三段階で構成した。まず、メディアを対象としてとらえ、さらにメディアと自己との関係を洞察し、最後にメディアの創り手、送り手の側からメディアのもつ意味を再吟味させた。活字メディアを通して「語られたこと」から「語られていないこと」をじっくりと洞察させた上で、映像メディア(静止画・動画)における誇張や省略を見極めさせ、自ら映像作品を制作し、発信するというアプローチは、生徒の情報活用能力や論理的な思考力を高め、メディア社会に主体的に参画する態度を育てるためにも有効であると考える。


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ふるさと自然館を拠点としたネットワーク共同学習


福井県教育工学研究会メディア教育グループ

代表 宇野 秀夫

福井市立明倫中学校(福井県)


 新教育課程の実施に伴い、総合的な学習の時間・選択履修幅の拡大といったカリキュラムの編成、移行措置に伴う各教科内容への対応など、具体的な取り組みが実践されている。また、現在全ての公立学校にパソコンが整備され、インターネットに接続されるといったネットワーク環境整備が進められた。

 上記のようにネットワークのハード面・ソフト面での環境整備が進むことにより、学校においても遠隔地の人々との交流学習、共同学習が普段の学習の中で行われるようになってきている。そこで、私たちはネットワークの拠点としてふるさと自然館をWeb上に構築し、情報活用実践力の育成を図るとともに、それを拠点としたネットワーク共同学習を試みたいと考えた。具体的には次のようなねらいをもって取り組むこととした。

  • ふるさと自然館の構築に伴う情報活用実践力の育成
  • 学びを構築するための支援ツール
  • 共同でのWeb構築
  • 遠隔地の子供達との交流、共同学習のためのコミュニケーションツール
  • 子供の学びに応じたカリキュラムへの発展
  • 地域や家庭と連携した学習
  • リモート操作によるサーバーの共同管理

 上記のねらいを達成するために、共同研究実践校の生徒が野草・樹木の調査活動、地域環境調査、地層調査、ふるさとの伝統品調査などを通したネットワーク共同学習を展開した。実践後、子ども一人一人に情報活用実践力についてのアンケート調査を行った所、以下のような成果を得ることができた。

  • 情報活用実践力が育成された。
  • ふるさと自然館の情報が充実し、学びの支援ツールとして活用された。

 一方で、以下のような課題もあった。

  • テーマを決めて、活動の重点化を図る必要がある。
  • コミュニケーション手段としてのメール活用能力を育成する必要がある。

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アクセシビリティを考慮した合成音声による学習支援システム(VeX)の開発


個人研究

横田 陽

大阪府立盲学校(大阪府)


 教育現場でのインターネットやパソコンの活用も本格的な実践期に入り、その膨大な情報を扱うことが可能になった。しかし、視覚障害を持つ学習者は画面が見えないため、そのままではインターネットやパソコンを利用できない。そのため、パソコンの操作状況を音声で読み上げる必要がある。最近では特殊な装置を使わなくとも合成音声技術により画面上の情報を読み上げることが可能となった。本研究はこの技術を利用し、合成音声による学習支援システムVeXを開発することである。このVeXを利用することで、視覚障害を持つ学習者もインターネットやパソコンからの膨大な学習環境を享受できるようになった。

 さらに、VeXは視覚障害を持つ学習者だけでなく、小学生や外国人学習者など、漢字の読みが不十分な場合のパソコン操作にも役立つ。すなわち、VeXはパソコンの操作状況を刻々と合成音声で読み上げることができるため、漢字習得が十分でない学習者に対して漢字の読み下しを合成音声で補助することにより学習の支援を行うことができる。さらに、VeXは色々な言語の合成音声を利用でき、その発音はかなりネイティブであるため、日本語の読み上げだけでなく、語学学習のヒアリングなどに応用することも可能である。

 また、情報が電子化されていく中、その情報のアクセシビリティを検証することも重要な課題となってきている。VeXはフリーウェアとして配布するため、教育現場で自由に利用することでき、ホームページ作成などに代表される電子化されたコンテンツ作成のアクセシビリティを検証するツールとしても有用である。


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総合的な学習における情報機器の新たな有用性を探る
〜 めちゃ楽しい「活き活きわくわくチャレンジ活動」の実践を通して 〜



共同研究

代表 小笠原 豊

刈谷市立刈谷南中学校(愛知県)
(前任校:刈谷市立富士松東小学校)


 本校は、平成12年度、開校20周年を迎えました。その間、特筆すべき教育実践はありませんが、平成9年度より5年間、不登校児童(30日以上欠席)が0であることに、ささやかな喜びを感じています。そして同時に、このことは、平成10年度から始めた「活き活きわくわくチャレンジ活動」の成果ではないかと推測し、全校あげてさらに意欲的にこの実践活動を展開しています。

 この「活き活きわくわくチャレンジ活動」とは、子どもたちが「学校が楽しくってしかたない、勉強は苦手だけど、めちゃ楽しい!」と思える、まさに活き活きわくわくする活動で、これまでに30種類ほどの多彩なプログラムで展開してきました。もちろん、その活動の構想は、子どもたちと教師が、思う存分「やってみたいこと」や「こうなるといいなあ」という「願いや夢」を出し合う中から練り上げられたもので、総合的な学習のプロローグとして展開してきました。テーマは、福祉・ボランティア、自然環境、地域文化の創造、国際理解、健康・安全などさまざまなジャンルがあります。そして、それらのどの活動にも、コンピュータ等の情報関連機器を積極的に導入・活用して、より面白くダイナミックな活動になるように工夫しています。

 本研究では、こうした活動を通して、以下の点を明らかにしようと考えました。

  1. 総合的な学習において、コンピュータ等の情報関連機器がどのようにかかわることができるのか、その有用性はどこにあるのかを明らかにする。

  2. 情報教育で期待されているのは、機器の活用だけでなく、「情報の活用」であるので、総合的な学習の時間において、どのような過程(情報)からどのような課題をもち、その解決のために、どのような情報をどのような方法で入手していったらよいのか、また、そこでは、教師はどのような支援をしたらよいかなどについて考察する。

 なお、研究の方法としては、活動の節目で子どもたちが記録する授業日記やテーマ作文、そして、子どもたちの活動のしぶりやその変容の様子、さらには、活動に参画する保護者や地域の方の感想や意見などを関連させて分析しようと考えました。


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新学習指導要領における商業科目の情報教育について


情報処理研究会

代表 中野 卓哉

兵庫県立神戸商業高等学校(兵庫県)


 IT革命に伴うインターネットの発達により、ビジネス形態も大きく変化してきている。これまで商業における情報教育は、プログラミングやアプリケーションソフトの活用能力育成等を中心に進められてきた。インターネットの登場によって、ネットワークを活用したデータの送受信に関する学習や、情報モラルについての学習も求められるようになってきた。そこで今回、今後の商業における情報教育のあり方を考えることになった。

 21世紀の商業教育を受ける生徒たちにとって、情報教育は欠かせないものであり、それは単なる情報機器の操作だけでなく、情報伝達の送受信者として、専門的な知識に裏付けられる情報処理が行えなければならない。また、インターネットを通して犯罪等に対する予防的知識や、情報化に伴うモラルも身につけなければならない。生徒が自ら学び、考える力の育成を図り、高度情報化時代を生き抜く力を身につける教育を目指す必要がある。

 この研究の目的は、新学習指導要領における商業の経営情報分野について、新たな情報教育のあり方を考え、また、情報教育を通してどのように生徒を育成していかなければならないか、しいてはどのような情報教育が求められるかを探求した。また、生徒自身が情報処理の最新技術を身につけ、インターネットを活用した情報ネットワークシステムを捉えられる能力の育成も目的として考えた。

 コンピュータとネットワークの理解を深めるため、コンピュータの製作からネットワークの構築、さらにネットワークを活用した例として、電子商取引に焦点をあてて研究を進めた。具体的には、「ネットワークシステムの構築と運用」と「電子商取引におけるWebサイトのプロデュース」のテーマを設定し、各学校で実施した。さらに電子商取引については、セキュリティに関する諸問題に対応すべく「電子商取引におけるセキュリティ対策」もテーマとして掲げ、実践し研究した。

 今回の実践を通して、これからの情報教育におけるヒントと問題点、さらに新たな方向性を示唆する内容ができあがった。


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ネットワークの特性を生かした異校種交流による学び


津幡地区ネットワーク教育研究会

代表 守田 健雄

石川県立翠星高等学校(石川県)
(前任校:石川県立津幡高等学校)


 社会全体での情報化が進展していく中で、学校も知識を伝達する場から、生徒自らが主体的に課題を設定し、ネットワークの中で他者と知識を分かち持ちつつ、自分たちの課題探求活動を前進させていく中で知識の構築を行っていく場へと変わりつつある。以上のような認識の下、ネットワーク利用による異校種交流の教育利用を検討する教育実践を計画した。具体的には、小学校における栽培学習を支援する活動を高校生が主としてネットワークを利用しておこなうことを想定した。

 交流をおこなうため、高等学校と小学校それぞれで取り組みをおこなったが、実施する上でいくつかの問題点があり、当初の目的を達成することが出来なかった。以上の試みと問題点についてまとめ、今後の改善点について検討した。これらの検討の中から交流を実現するために必要な条件として、次の4点を提言したい。

  1. 生徒が主体的に利用できるネットワーク環境が整備されていること
  2. インターネットを利用して交流学習をおこなうことの校内合意が得られること
  3. 学校のWebページが適切な運用をされていること
  4. 情報処理教育にとどまらない情報教育の理念が学校内で認知されていること

 さらに、最終的には達成できなかったものの、ネットワーク利用による異校種交流実現に向けての小学校・高等学校での実践活動について報告するとともに、交流についてのWebページのイメージも提案した。


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心を伝え、心を広げる情報活用の実践力の育成
〜 総合的な学習「特別天然記念物オオサンショウウオ
保護啓発プロジェクト」を通して 〜



共同研究

代表 藤本 義博

岡山県情報教育センター(岡山県)
(前任校:岡山大学教育学部附属中学校)


 子供たちをとりまく環境は、携帯電話やインターネット等の通信系マルチメディアの技術発展に伴い、情報化社会のめざましい変革を続けている。こうした中で、子供達は氾濫する情報に流されて被害者となったり、誹謗・中傷等の電子メールを無感覚に送りつける加害者となるなど、情報化社会の歪みが日に日に増していることが懸念される。そこで、めざましい発展を続ける情報機器が心を伝え、心を広げる重要な道具であることを実感できる体験を十分に積ませながら情報活用の実践力を高めて、よりよく生きる子供達を育てたいと考える。具体的には、絶滅が心配され平成7年に環境庁より絶滅危惧種として指定された国の特別天然記念物オオサンショウウオの保護啓発を、本校の中学生が小学生対象に行うプロジェクトを実践する。このプロジェクトを通して、保護啓発のための電子紙芝居や自作ビデオ等を制作したり、インターネットやテレビ電話で交流を行う中で、情報機器が保護の心を伝え、保護の心を広げることに有効であることを生徒に実感させることで情報活用の実践力を育成したい。そこで、保護啓発視聴覚教材作成の過程で、インターネットやテレビ電話を利用して小学生と交流を図る際に期待される情報活用の実践力とその評価を目的に本研究を行った。その結果、生徒は、「このプロジェクトで、オオサンショウウオのことがわかってさらに好きになりました。『オオサンショウウオがいなくならないようにこれからもがんばっていこう!』と思いました。」と絵本作りを通して保護意識が高まり、その保護の心をインターネットを利用して伝え広げるための能力・態度を育成できたことを、情報教育の目標リストを参考にしたアンケートで整理・分析できたことは成果であった。また、インターネットを利用した絵本作りのための協同編集のシステムを手軽に構築できるようになったことも、異地域・異年齢間での学びの共同体つくりに有効であることを明らかにできた。さらに、保護の心を広めるためにWEBページだけでなく、テレビ番組の協力を得られたことも大きい。しかし、ネットミーティングを利用した編集会議は、1対1対応でしかないので、複数でライブに編集会議ができる1対多対応の仮想編集会議システムを開発して改善を図っていきたい。


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マルチメディア通信を用いた国際共同学習による
教育方法の工夫および教育的効果に関する研究
〜 イギリス姉妹校との共同授業を通して 〜



個人研究

田中 龍三

大阪教育大学教育学部附属池田中学校(大阪府)


 本校では平成7年度からインターネットが使える環境が整った。その中で平成8年度より音楽科の選択授業で「インターネットを活用したMIDIコラボレーション」を実践した。また、平成9年度からその実践を発展させ、イギリスの姉妹校「ホーリークロス、コンベントスクール(以下、ホーリークロス校と記す)」との間においてインターネットでの交流に加えてテレビ会議システムなどのさまざまな通信手段を活用した「異文化間ドラマコラボレーション」を行った。この実践はドラマ上演という共同学習を目指したプロジェクト型国際交流学習において、交流を目的とした様々なメディアの活用の可能性および教育的効果を探ると共に、交流の場における生徒の異文化理解能力とメディア活用能力を関連づけながら育成する方法を開発することを目的としていた。

 本校では平成12年度より研究開発指定を受け、新教科「ドラマ科」の授業の試行を始めた。この本校のドラマ科のカリキュラムはホーリークロス校のドラマ科のカリキュラムを参考として構想されたものであったため、テレビ会議システムによるホーリークロス校との共同授業を取り入れ、指導と評価の場面を共有することで、本校のドラマ科のカリキュラム及び授業の進め方を検証することにした。

 本研究実践は本校のこれまでの研究実践の継続として位置づけられるものであり、これまでの成果を踏まえながら、日々発達し多様化する情報機器の特性を異文化間コミュニケーションに活用する方法を模索すると共に、情報教育でめざす学力がドラマ科でめざす学力をどのように支え、マルチメディア通信による異文化間の共同授業にどのような効果をもたらすかを探っていくことを目的としている。


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インターネットを利用した家庭や地域の人々の協力による道徳教育の実践
〜 生徒の道徳性を高める魅力ある授業づくりを通して 〜



岡山情報教育を考える会

代表 廣井 学

倉敷市立郷内中学校(岡山県)


 本研究は、道徳時間におけるインターネットや通信ネットワークの有効活用に関する研究を進め、道徳の時間の実践を通して、こころたくましく生きる生徒の育成をめざそうとしたものである。

 道徳教育の充実は、新学習指導要領において、21世紀をこころたくましく生きる生徒の育成のために極めて重要な課題とされ、道徳教育改善の基本方針が挙げられている。さらに、相次ぐ少年犯罪や成人式等での暴挙に見られるモラルの低下などを背景として「心の教育」の必要性が強く叫ばれ、緊急課題として学校教育に課せられている。

 しかしながら現行の学校現場における道徳教育の現状は、多くの問題点を抱え、改善点も見出せないまま新学習指導要領実施に至っている。

 そこで、本研究では、「道徳の時間」が「生徒の主体が生かされた学ぶ値打ちのある時間」になることを願い、インターネットや通信ネットワークを道徳の時間に活用するといった新しい試みを通して生徒の道徳性の発達を促す魅力ある授業づくりを以下の研究の視点に沿って取組んでいった。

 研究の視点

  1. 生徒の主体が生かされた魅力ある授業づくりに向けての授業改善
  2. インターネットや通信ネットワークを利用した家庭や地域の人々の協力による道徳授業の実践
  3. 上記の取組を通して、道徳的価値の自覚を深める道徳教育の充実を図る。

 本論では、これら取組んだ実践の試みとその成果について報告する。


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ネットワークを利用した地球環境の調査
〜 障害に応じた情報活用の実践力の育成 〜



病弱教育部

代表 奈島 正嘉

京都府立城陽養護学校(京都府)


 平成12年度は病弱児童生徒、平成13年度は軽度知的障害生徒と障害種別の違いにより、それぞれの情報活用能力を育成するための研究課題の決定、情報の収集、情報の選択方法などの支援のありかたを研究した。

 新しい学習指導要領の基本的なねらいとして、授業時数の縮減と教育内容の厳選・個に応じた指導の充実・体験的、問題解決的な学習活動の重視・総合的な学習の時間の創設などがあげられる。キーポイントになっている「生きる力」とは、「自ら学び、自ら考え、よりよく問題を解決する資質や能力」である。病弱教育児童生徒にとっての生きる力とは、とりわけネットワークを利用し、外部の方とのコミュニケーションを通じて問題を解決していく資質や能力、必要な情報を収集する能力の育成が必要である。平成12年度の研究では病弱教育部生徒が中心となり海外の在外教育施設にゴミ問題についての調査協力依頼を呼びかけ実践的に課題を追究していく過程において、様々な情報手段を活用し、必要な情報を収集・判断・表現・処理し発信・伝達する力を育成した。

 病弱生徒は、病弱ゆえ前籍校での学習空白や集団での学習に参加するチャンスに恵まれないことがある。そのため前籍校での学習空白による学習遅進と低下や、自分の考えをまとめたり、気持ちを表現したりする経験の少なさが課題となる。そのため本校では学力補充の推進とともに自分の考えをまとめたり気持ちを表現する力をつける実践を実施してきた。この研究では中学部3年生が中心となり話し合いで研究課題を設定、課題解決にむけての研究方針決定など児童生徒の話し合いを軸に実践をすすめた。

 情報機器やネットワーク等の利用については、実践力を育成する学習過程において慣れ親しむことを大事にしてその基本操作を習得させた。これらの実践を通じて児童生徒らは様々なハンディがあるにもかかわらず国境を越え、多くの在外教育施設の児童生徒と共同で環境問題の調査をすすめることができた。調査内容は交流先にWebページとして公開することで調査結果を伝え、交流先児童生徒から評価を受けることでさらに研究内容の改善をはかることができた。

 平成13年度は軽度の知的障害生徒(15歳〜18歳)を対象に研究をおこなった。知的障害ゆえに漢字の読みの弱い生徒、計算力の弱い生徒、文章の読み取り、自分の考えをまとめること発表することの苦手な生徒が在籍する。この研究は、日米の言語、文化、障害者と健常者という様々な溝を埋めるために日米の多くのボランティアとハワイ大学、ホノルル市教育委員会の協力が不可欠であった。障害のないアメリカ人学生との交流は本校生徒たちの経験を広め、社会性を育むとともに、アメリカ人学生の障害ある生徒への理解と認識を深めるきっかけとなる利点があることを米国側に説明し理解と協力を求めた。知的障害ゆえ相手校に本校生徒の実態(学力と進路など)を説明する必要があった。

 環境ポスター作りをする実践ではインターネット上から適切な情報(総務庁統計資料)の収集のための支援、2回実施したテレビ会議ではプレゼンテーションのために支援が必要であった。また日米教員・ボランティアとの綿密な情報交換と連絡が必要でありメーリングリスト・電子掲示板・グループウェアなどのインターネットツールを多用し通訳ボランティア、情報伝達の技術的問題(米国側PCでのPDFファイルの日本語表示技術、グリニッジタイム使用、インターネットツールの使用方法)など話し合ってきた。米国ハワイ州の公立高校2校と大学との共同(コラボレーション)での課題解決を大切にした。病弱、軽度知的障害と障害種別は違うが、それぞれに教員の適切な支援によりにより、どのような様々な情報手段(テレビ会議システム、グループウェア、電子掲示板、通信用コミュニケーションボード)を適切に活用することにより情報活用能力の向上が可能であるがわかった。


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子どもの発想を生かした共同学習支援システムの構築に関する研究


熊本県立教育センター教育情報システム室

代表 永野 利徳

熊本県立教育センター(熊本県)


 これまでのインターネットでの共同学習の試みでは、話題を限定せず子どもの発想から共同学習へ発展させるような仕組みを確立している例は少ない。本研究では、学習者の疑問を解決したり、アイディアを実現させたりするために、その疑問やアイディアに共感する複数の学習者からなるプロジェクトを立ち上げる能力こそ、これから必要となるものであると考え、そのような能力を育成するための仕組みをインターネット上に実現することを目的としている。

 共同学習の具体的な道具として、電子メール、電子掲示板、テレビ会議システム等を利用して2年間の実践研究を行った。小学校を中心に20校以上の学校が参加し、実際に共同学習を行いながら研究を進めていった。

 その結果、プロジェクトへの参加の様子やメールの文章など、具体物を実際に閲覧できるようにすることで、子どもたちが自分の今後の学習活動を具体的に思い描けることが分かった。

 また、学習目的を明確にしない掲示板と明確な学習目的をもつ掲示板での記述の分析から、学習の段階で明らかに利用方法の違いが見られ、自由な話し合いの掲示板よりも、自分のやりたいことや考えについて述べるための掲示板を設置すること。限られた話題ごとの掲示板が必要であること。参加者の学習の進捗状況が分かる仕組みや意見を述べ合う場と連絡用の掲示板を分ける必要性などがわかった。

 その他、担任教師等のインタービューから、掲示板において何らかのイメージがあると意見を書きやすいことや、自分の好きなキャラクターを選んだ○○君に返事を書きたいという子供もいたりするなど、書き込みの文章以外の要素も考慮する必要があることがわかった。


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小中高一貫した情報カリキュラムと教材開発


共同研究

代表 岩田 諦慧

輪之内町立大藪小学校(岐阜県)


 情報教育を進めていく上で、小中高一貫した基本となるカリキュラムの作成と児童・生徒が主体的な学びのための教材の開発が必要である。また、このカリキュラムと教材をベースに、総合的な学習の時間や各教科の学習において、児童・生徒が学習の道具として様々な情報手段を主体的に活用し、情報活用の実践力を身に付けることができるようにしていくことが必要である。

 そこで、総合的な学習の時間や各教科等で児童・生徒の情報活用の実践力を育成するためのカリキュラム及び教材の開発を行うことにした。

 小中高一貫した情報カリキュラムの作成においては、「小・中・高等学校における情報活用教育カリキュラムの一貫性に関する調査研究」等をもとに検討し、情報処理の学習時期が明確になった。

 カリキュラムから、情報教育の教材の核となる部分のテキスト等作成した。小学校版学習用テキストは、「えほんらいたーPro」(富士通)、「ハイパーキューブ for Windows Ver.2.1」(スズキ教育ソフト)の2本のソフトウェアを使用することを想定した作成し、学習用テキストと合わせて活用できる学習用動画資料も準備した。また、中学校版学習用テキストは、「パワーポイント」(マイクロソフト)を想定し作成、情報テキストは、基本操作を中心に構成した。

 実践実証の結果、学習用テキストについては、児童・教師ともよい評価をしており、テキストを利用することで、より主体的な学習ができると考える。学習用動画資料も改善すべき点はあるが、活用することで効果がみられた。

 情報教育を進めていく上で、教材の核として学習用テキストは、地域の実情にあわせて開発する必要があり、児童・生徒が自らの力で問題を解決していくための教材であることが明確になったと考える。

 今後は、このような学習用テキストの活用した実践事例を収集して、各教科・総合的な学習の時間での活用を明らかにし、教科等のカリキュラムに位置づけていきたいと考える。


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小学校における情報モラル教育に関する学習モデルの研究


個人研究

石原 一彦

大津市立瀬田小学校(滋賀県)


 情報教育は普及段階に入り、その教育内容を整理し直す段階にある。

 本研究で扱う「情報モラル教育」とは、新しい社会に生きるための正しい行動を育てるのが目的である。よって、知識や技能といった定量化できる学習内容を指導することではない。児童が一人きりで情報に向き合った際に、正しい判断ができ、正しい行動が取れるかどうか、その振る舞いを育てることが求められている。しかし、情報モラルの学習指導法については、知識伝授の方法以外にあまり検討されていない。

 本研究は、情報モラルの学習指導モデルを提案し、実践を行うことでこれらの効果を検討することが目的である。

 具体的には、従来の知識ベースの資料を用いた講義型の学習指導モデルとシミュレーション教材を用いた体験型の学習指導モデルとを比較して、学習後に評価を行った。この実験のために、瀬田小学校の4年生の児童3クラスを対象に、体験型の学習を行うクラスと、講義型の学習をおこなうクラス、それに何も学習を行わないクラスの3つのグループに分かれて異なる形態で授業を実施し、それぞれ評価テストを行った。

 評価の結果は、以下の通りであった。

 講義型、体験型共に意識レベルの判断能力は育成できた。また、それらの学習経験の結果、ある種の学習転移が生まれ、未学習の学習項目までも正しい判断ができるようになった。それゆえ、どのような学習形態であれ、情報モラルの指導をすることの重要性を認識できることが明らかとなった。しかし、情報モラルの指導においては、正しい行動の判断だけでなく、行動の意味付けまでも児童に認識させ、自らの行動を律する論理を心の中に内在化させて一人一人の児童の心を耕す必要がある。この要求に応えるためには、学習項目を吟味した体験型の学習を行うことによってより学習を深める必要があることが示唆された。


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情報社会に参画する態度を育成する道徳教育の実践


共同研究

代表 桑本 康則

台中日本人学校(台湾)
(前任校:早島町立早島中学校)


 本研究では、健全な情報社会の創造に参画する実践的な判断や行動に結び付いた態度を育成するために、情報モラルに関する道徳教育の在り方を探った。

 その結果、電子メールや電子掲示板を利用した授業を通して、ネットワークの特性に気付き、相手を意識した情報発信や情報モラルを身に付けようとする態度を養うことができた。

 また、技術・家庭、道徳の時間、総合的な学習の時間のクロスカリキュラムは、情報モラルについての理解にとどまらず、それぞれの学習の成果を相互に関連付け、深め、道徳的実践力を培うことができ、実際的な場面における道徳的実践に結び付くことが分かった。


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