一般財団法人上月財団
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事業紹介

第3回(平成6年度)情報教育賞 要約

子どもの表現活動を支援するコンピュータ利用
−コンピュータを使って,主体的に学ぶ児童の育成を目指して−

神部小学校コンピュータ利用教育研究推進委員会

代表 小河 諭司 兵庫県揖保川町立神部小学校
  岡本 育夫 同校職員研修係
  武内 純一 同校パソコン研修係

I.はじめに
 「個性を生かし、一人一人が生き生きと学び求める授業の創造」という本校の全教科領域における研究主題に基づき、パソコンを児童の興味・関心を高め、主体的に学習に取り組むための表現活動を支援する道具として位置づけた。児童にとって、パソコン教室が表現意欲を喚起し、自らの表現欲求を満たしてくれる場所であり、児童や教師の笑顔に満ちあふれたいつもにぎやかな状況にあればと願った。

II.研究主題
 学習活動の主導権を学習者である児童自身に持たせ、結果よりも過程重視の教育への変換を目指す。そして、児童一人一人が心豊かに自分らしさを発揮し、生き生きと学び求める授業の創造の一つの方法としてコンピュータの活用を考える。

III.研究の概要

 1.研究内容
 (1)児童の個性を生かす表現活動の一つの道具としてコンピュータの活用を考える。
 (2)コンピュータの特性を生かしたソフトを開発し.授業の中で活用していく。

 2.研究方法
  「めざす児童の姿」「職員のパソコンに向かう段階」「学年別年間学習計画」を設定し、それを指針として研究を進める。

IV.研究の実際

 1.表現活動の一つの道具として
 (1)教科の学習において、キューブJRを用いた表現活動の実践例。
   国語科の語彙力、作文力を育てるソフトの開発及び授業実践。
 (2)コンピュータ・リテラシーの育成を目指して、ロゴライターを用いた学年別課題学習。
   パソコン室の開放とパソコンクラブの活動。
 2.コンピュータの特性を生かしたソフトの開発と授業実践
 自作ソフトを用いた実践を「指導のねらい」「ソフトの特徴」「学習の実際と考察」の3点から述べる。

V.研究のまとめ

 1.実践の成果
 (1)パソコン室の活性化
 (2)教師の意識改革
 (3)児童が主体的に活用

 2.今後の課題

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「意思決定能力」を育成するための
パソコンLANシステムの活用

田添 幹康

大阪市立天王寺商業高等学校

 本校では、商業科の総まとめとしての「総合実践」を取引流通部門の実践としてとらえ、生徒がすでに学習した商業に関する知識や技術を用いて、商品取引を中心とした会社の模擬経営活動を行わせている。実践という体験的学習方法によって、総合的な思考力、判断力を身につけ、経済社会の健全な担い手となれる人格の養成をめざしている。
 この科目では単に知識や技術の習得に終始するのではなく、現在直面している問題の本質をとらえ、課題解決するにはどうすればよいかを自ら導き出す能力の育成に重点をおいている。本研究では、この能力を「意思決定能力」としている。この学習は、3年次に2単位でしか行っていないため商品取引回数が少なく、会社設立から決算までを実践内容としていたが、時間的な制約から必ずしも十分な成果をあげていたとはいえなかった。
 平成3年度にパソコンLANシステムの導入が決定したのを契機に、「総合実践」の内容を見直し、商品取引の効率化による授業時間の有効利用と「意思決定能力」を中心として「経営管理能力」、「情報活用能力」、「評価能力」の4つの能力の育成を目的としてそれを活用することにした。
 高等学校学習指導要領における商業科の「総合実践」という科目の位置づけや内容の把握から、本校「総合実践」の目標を明確にした。さらにパソコンLANシステムを活用した本校の「総合実践」形態を示し、その特徴と問題点をあげた。最後に、「総合実践」と意思決定能力の関係、評価方法についての考察を行った。

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作図ツールで体験する〔数学的探究〕

地曳 善敬

神奈川県川崎市立白山中学校

 作図ツールとして、飯島康之先生(愛知教育大学数学研究室)の開発されたGC(Geometric Constructor)を提供していただいて利用している。

 情報教育の中学校の数学科における位置づけを、検討するときに、大切なこととして、自己教育力との関係を明確にする必要がある。コンピュータを利用することが、即、数学科における情報教育ではない。例えば、中学生がコンピュータのプログラムを考えて、無理数√3を100桁まで計算できたとしても「情報教育」と「自己教育力」の観点からしても、目的は達成されたことにはならない。つまり、「数学する」という第3の観点も必要になってくる。数学的な探求過程を、いままでより重要視することによって、思考過程が育成できて、数学的概念が根付いていくことになる。
 具体的には、作図ツールを利用して、平面図形を連続的に変形して、その中に、いつも変化しない性質(合同、相似、平行、垂直など)や量(角度、面積、長さなど)を発見して、その理由を明らかにさせることを実践してきた。GCは必要な所の角度、面積、長さなどを測定することができるが、どこの量を測定するかは、中学生個人の目的意識による。どのような性質を探求したいのかによる。そしてそれは、コンピュータ画面にどのように作図するのか、また、どこに着目して、どのように変形するのかによるのである。
 自らが問題意識を持ち、それに必要な情報を取り出し、取り出した情報をさらに統合して、普遍な性質を発見して、その根拠を証明する。この一連の活動を通して、〔数学的体験〕をさせることができる。いくつかの実践例をまとめてみた。研究として完結するにはかなり時間が必要になるだろう。

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創造的思考力を高める美術科学習指導法の研究
−思考過程におけるコンピュータの活用を通して−

花田 武美

福岡教育大学教育学部附属福岡中学校(前 福岡県宗像市立自由ヶ丘中学校)

 研究主題、副主題を設定した理由は現在は高度情報化社会と呼ばれ、現在の生徒に求められているものはコンピュータ社会で生きていく力です。その力とは多くの情報を取捨選択し、活用したり、その情報で思考し、新たな情報を産み出す力です。また、新学力観においても単に見える学力ではなく、見えない学力、つまり、表現力、思考力、判断力の育成が現在求められています。これは、美術科学習においても同様で生徒の創作した作品だけを評価するのではなく、その過程の思考を評価し援助する必要があります。本研究は特にこの思考力にスポットをあてました。コンピュータには3つの特質があります。それは、即時性、対話性、保存性の3つです。これらは、コンピュータの機能的な特質だけでなく、思考や表現の援助としても、とても役立つと考えます。私は過去にコンピュータを美術科学習に活用した経験がありますが、それは知識理解の提示装置として活用を行っていました。これではコンピュータの持つ教育効果の一部しか実現していないことに気づき、今回の研究に取り組みました。
 仮説については
「発想から表現にいたる制作の過程や鑑賞の過程においてコンピュータで思考する場を工夫すれば、創造的思考力を高めさせるとともに、より表現の楽しさを味わわせることができるであろう。」としました。
 つまり、コンピュータを表現や鑑賞の過程で思考を援助するように活用すれば、生徒の思考を助け、思考力を高めることができるのではないかと考えました。創造的思考力とは新しいもの(これは個人にとってですが)を産み出すための思考のことで想像、イマジネーションなどのひらく思考と論理的思考、集中的な思考など考えをまとめていく思考が統合したものだと考えています。コンピュータを使い生徒達が思考をひらく場、あるいは閉じる場、あるいはその両方を行ううえで、援助していきたいと考えました。
 美術科には表現と鑑賞という大きな領域がありますが、表現の過程における思考とは絵画や彫刻など作品を制作する時の発想、構想、表現のそれぞれ段階での思考のひろがりと思考のまとまりのことであり、鑑賞の過程における思考とは作品を見た時の感性や分析による思考のひろがり、それを言葉などで表現しまとめていく思考のまとまりのことを指しています。生徒の実態を4月当初アンケートを行ったところ、生徒は美術の授業が本来好きであり、表現したいという欲求を持っています。その結果生徒は発想、構想、表現の各段階で創造的思考力の不足がわかり、この創造的思考力を育てるために、生徒の興味・関心の高いコンピュータを活用することは意義深く効果が期待できると感じました。
 実践としまして3つの実践を行ってまいりました。

実践1ではコンピュータを提示装置として活用し、その情報で生徒の思考を援助し鑑賞メモというレポートを制作させました。
実践2では言葉やアイディア・スケッチで発想し、それをコンピュータで思考しながら制作を行わせました。
実践3ではアイディア・スケッチで発想したものを、コンピュータで思考させ制作を手で行わせることを行いました。

 実践後のアンケートからコンピュータは発想をひろげ思考をひろげるのに生徒が実感できるほど有効であるということが分かりましたし、生徒にとってコンピュータは、思考を援助するものであるという認識ができたことが分かりました。また、コンピュータの特質である即時性、対話性、保存性は表現活動の思考する場面で活用すると生徒の思考を援助することも改めてわかりました。  
 研究の成果としましては 実践1〜実践3までの成果を見てもわかりますように、制作の過程や鑑賞において、コンピュータは生徒の思考を深めるのに大いに役立つことがわかりました。特に、保存性については何度でも思考途中の作品を呼び出し、やりなおすことができ、思いきって崩したり試したりできることは大いに思考をやりやすくしていることがわかりました。また、コピー機能や変形など色々な変化がたやすくできることは思考をより速く、簡単にしていると考えられます。
 課題としましては1つ目に生徒の創造的思考力をどう評価していくかという問題があります。学習プリントと生徒作品の変化を捉らえていくことを行ってきましたが、まだ充分でありません。そこで、インタビュー法などを研究中ですがまだまだ研究の余地があると考えます。2つ目にコンピュータには微妙な色が出せない、細かい修正ができないなど限界があり、またコンピュータでしかできない表現もある。手描きとコンピュータにはギャップがあるのでそのことを考慮して取り入れる必要があることがわかりました。


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中学校技術・家庭科におけるCAI教材ソフトウェアの
開発と学習効果および評価に関する研究
−マルチメディアによるCD−ROM教材の作成−

滋賀県総合教育センター 情報教育研究グループ

代表 北川 一幸   発表者 井上 尚世

滋賀県総合教育センター

 情報化時代の到来を受け、文部省は、2000年までに中・高校では、1人に1台、小学校でも2人に1台のパソコンが授業で使える態勢を整えるよう求め、マルチメディアの適切な活用は教育分野でも「極めて有益」であるとしている。また、従来の文化・技術発展の原動力となった「読み、書き、計算」の能力に加え、「コンピュータ、マルチメディアにかかわる情報活用能力をすべての人が身につける方向を目指す必要がある」としている。
 こうした状況下、授業等で活用できるマルチメディア型CAIソフトウェア教材は、まだ開発例も少なく、従来型CAIソフトウェアとの関連性や問題点についても論じられていないのが現状である。マルチメディア時代の到来を迎え、総合教育センターでは、中学校技術・家庭科の電気領域の保守と点検を題材に、従来型(文字、絵等で構成)とマルチメディア型(文字、絵等に加えビデオ、音声をも活用)との教材を開発し、両教材の比較検討を行った。なお、マルチメディア教材は、


(1)素材のビデオ撮影
(2)サウンド、静止画の作成
(3)ビデオ画像、サウンドのデジタルデータへの変換
(4)オーサリングツールによる、文字・グラフィックス・サウンド・動画の張り付け
(5)マルチメディア教材の修正(デバッグ)
(6)実行ファイル(パッケージ)の作成
(7)CD−ROMへの書き込み


の手順で1,100時間を費やし、CD−ROMに書き込んで完成させた。
 また、これら従来型とマルチメディア型の2種類のソフトウェアを学習過程の中に位置づけ、学習評価、ソフトウェア評価、授業分析、学習の追跡などを調査し検討した。その結果、従来型のCAI教材ソフトウェアを活用した学習では、焦点を絞った思考に、マルチメディア教材を活用した学習では、幅の広い思考になった。また、ソフトウェアの評価では、画像の色彩と音楽効果が興味意識の高 揚に、ビデオの動画が再学習意欲の喚起と内容理解の深化に寄与していることが明らかとなった。
 マルチメディア教材は、操作性等の問題点もなく、画像の美しさ、音楽・内容の豊富さ等で思考過程を十分に膨らますことができ、パソコンを思考、創意工夫の道具として有効活用することができた。また、この教材では、問題解決学習を目標にした学習過程の構築が容易で、指導要領で求められている個性の重視、創造性・論理的思考力・抽象能力等の育成等が可能となった。
 パソコン活用の授業では、思考過程に応じ、従来型とマルチメディア型教材の使い分けや併用により,到達度目標に即した授業の展開をより効果的に行うことができる。
 また、マルチメディア教材では、問題解決学習を目標にした学習過程の構築が容易になると共に、思考の道具としてパソコンが有効となり、従来のCAI教材の持つ問題点を克服することができた。


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