一般財団法人上月財団
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事業紹介

第1回(平成4年度)情報教育賞 要約

自ら学ぶ力を育てる学習指導の創造
−パソコンを、児童自らが情報を創造するための知的支援ツールとして−


木村  誠

兵庫県龍野市教育委員会学校指導課(前 兵庫県龍野市立小宅小学校)

 本校は、昭和61年度に文部省の補助事業を受けて、24台のパソコンを導入して以来学習指導での効果的な利用方法について研究を進めてきた。昭和63年度、平成元年、2年と研究会を開催し、県内外の多くの教職員にその研究の成果を発表してきている。
 平成3・4年度は、「自ら学ぶカを育てる学習指導の創造」という研究主題をかかげ、これまでの成果や課題を踏まえて、パソコンを「子どもたちが新しい情報を作りだすための知的支援ツール」と位置づけ、さらに一歩ふみこんだ研究を進めていった。
 具体的には、学級活動における栄養指導や算数科の課題解決学習の過程において、パソコンを効果的に活用することによって、主体的・意欲的に課題を追求し、解決していく子どもが育成できるのではないかと考え、下記のように実践を進めていった。
・研究推進委員会を中心に教科部、各学年部の連携を図り、機能的・組織的に研究を進めた。
・使用するソフトウェアの開発にあたっては、教職員のソフトウェア作成部を組織し、各作業を分担・協力した。また、専門機関の援助を得て、よりよいソフトウェアの開発を目指した。
・学年部ごとに算数科・給食に関する指導〈栄養指導〉の教科の研究授業を行い、必要に応じて、講師を招聘し指導を受けた。
 その結果、
 パソコンを利用することで、子ども一人ひとりに応え、主体的な学習活動の場を構成することができ、自ら学ぶ力を育てることができた。また、教師の役割も援助、個別指導へと変わってきた。それにともない、教師一人ひとりがそれまで持っていた授業観も変わりつつある。


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複式・小規模校におけるパソコンの活用を考える
−2人1台の環境で、自作ソフトの活用を中心に−


白坂 昭典

鹿児島県長島町立汐見小学枚

 パソコンの教育的な特性を生かし、理解の遅い子供は自分のペースでパソコンと対話しながら学習を進めることができ、また、進度の速い子供はより多面的な見方・考え方ができるような子供の進度差に対応できる自作ソフトを工夫できないかと考えた。パソコンは、教材(ソフト)を作成する側の意図によって、学級のどの子供にも対応する働きが生まれてくるはずである。
 さらに、新学習指導要領の趣旨を生かしたパソコンの活用となると、子供が興味・関心を持って取り組む中で、自ら法則を発見したり、めあてとする力が育成されたりする等が期待できる学習ソフトの開発が望まれる。
 また、複式学級にとって、パソコンの活用は、間接学習で大きな働きをしてくれると考えられる。
 この考えのもとに、複式・少人数学級におけるパソコンの有効な活用方法を探り、指導の効果を高めたいと願い、本主題を設定した。
 そこで、パソコンを活用した学習を充実させるための方策として、主に次の4つの観点で研究を行い、実践を進めることにした。
  1. 複式・小規模校の特質を生かしたパソコンの活用
  2. FCAIによる実践
  3. ロゴによる実践
  4. 他の教育機器との関連からFCAIによる教材作成としては、次の自作ソフトを作成し、実践を行った。
○ へんとつくり (3年生国語) ○ 歴史人物資料集T〜W・歴史問題集 (6年生社会)
○ 図形の面積 (5年生算数)  ○ 立 体 (6年生算数)

 ロゴによる教材作成としては、次の自作ソフトを作成し、実践を行った。

○ 歴史人物調べ (6年生社会) →教師のソフトに子供が調べて付け加える
○ 長島の古墳  (パソコンクラブ) →子供が調べて作った作品
○ 漢字の筆順ソフト 1年〜6年   ○ 絵地図作成ソフト (3年生社会)
○ 最小公倍数ゲーム (5年生算数) ○ おにたいじ (2年生算数)
○ 対称図形作成ソフト(6年生算数) ○ かけ算九九ゲーム(6年生算数)

 ロゴによる自作ソフトの考え方として、「キーボードを使わない学習」「楽しめるゲーム的な学習」をめざしている。これは、今後の課題でもある。
 本研究の成果としては,次のようなことがあげられる。

  1. 複式・小規模校の特質を生かしたパソコンの活用の在り方を、「パソコンの特質を生かした利用」「コンピュータリテラシーの育成」「複式学級における学習指導上の特質」「複式・少人数学級のよさを生かすパソコンの活用」という面からまとめ、一定の方向付けを行った。このことをもとに、基本的な「パソコンを活用した学習過程」を設定し、実践への足がかりとした。
  2. 「複式・小規模校の特質を生かしたパソコンの活用」で明らかにした論理的なことをもとに、自作による教材作成を行い、より効果的な教材ソフトの開発へと結び付けた。
  3. FCAIによる教材作成では、FCAIにBASICを取り入れて表現力を高めるなどの工夫を行って、教材ソフトの開発を行った。
  4. FCAIによる教材作成では、「ヒント場面」「データベース的な調べ学習」「問題集」「BASICを取り入れたシミュレーション」的な面からの教材作成を行い、実践を深めた。
  5. ロゴの活用としては、子供自身がワ一プロ画面を自由にコントロールできるという利点を生かして、子供が自ら表現の道具として活用するという面からの実践を行った。
  6. ロゴのもう一つの活用の方法として「キーボードを使わない学習」「楽しめるゲーム的な学習」という自分なりの目標をかかげ、実践を繰り返してきた。
  7. パソコンをより有効に活用するためには、パソコンのみでなく、他の教育機器との関連も大事になってくる。OHPやビデオフロッピィを活用した実践も行った。

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社会科との連携による情報教育の実践に関する研究


高橋 参吉

大阪府立工業高等専門学校

高等専門学校1年生の学生に対して、情報活用能力の育成を目指して、情報処理と社会科地理の教科で共同して、統計データをパソコンのグラフィックスを用いて「動く統計グラフ」としてグラフ化させる課題研究を昭和63年度から行っている。作成した作品は、百貨店で開催される大阪府データフェアで展示し、一般来場者に対して作成資料をもとに、説明を行っている。平成4年度は、大阪府データフェアにおいて、継続テーマである「動く統計グラフ」と「ハイパーメディアによる制作者紹介」の取り組みを行った。
 「動く統計グラフ」の課題研究の目標は、

 1)グループ別に決められたテーマにそって、必要な資料を収集する
 2)得られた資料から必要なデータを抽出して、整理、加工、分析する
 3)情報処理の手法を使って、動きのある統計グラフをわかりやすく表現する

 である。
 この取り組みから、3)の能力については、十分達成されたといえる。さらに、学生はパソコングラフィックスやアニメのように動くCGに、非常に興味を持っており、主体的に取り組むことにより積極性や自主性も育成されたと考えられる。
 また、1)の必要な資料を収集する能力も育成されたと考えられるが、2)のデータを抽出して、整理、加工、分析する能力については、評価はむずかしいが、最初に実施した昭和63年度の取り組みと平成4年度の取り組みを比較考察すると、従来の取り組みより育成されたと考えられる。
 本論文では、「動く統計グラフ」の課題研究を取り上げ、大阪府データフェアの概要、本課題研究の考え方や目標、教科での指導方法、学生の作品の紹介ならぴに特徴などについて報告し、平成4年度の取り組みに対する評価について述べている。


 

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脳性まひ児のコミュニケーション活動における技術的援助の試み

福島 勇

福岡市立今津養護学校

 私たち人間は社会を構成し、その中でさまざまな人とかかわり合いながら生きている。そのかかわり合いを円滑に進めるための条件の一つにコミュニケーションがあげられるであろう。心理学によると、「コミュニケーションとは、人(情報の送り手)の心の中に生じた考えや気持ち等(情報)を、相手(情報の受け手)にさまざまな手段を用いて伝え(情報の表出・伝達)、受け手がその情報を受け取り(情報の受容)、処理をして、送り手に何らかの情報を送り返すという相互伝達の過程である。」と言われている。では、自分の心の中に生じた情報を他者に伝えようとする時や、他者の持つ情報を得ようとする時に、私たちはどのような手段を用いているのだろうか。両者の間に共通した言語が理解されていれば、会話を交わしたり文書をやり取りすることで情報の交換が可能である。また、両者の距離が離れている場合には、電話で会話したり、手紙やファクシミリで文書を送受しあっている。このように、人と人とが情報をやり取りする場面を見てみると、両者の間には言語という媒体を用いた「話す−聞く」「書く−読む」というコミュニケーション手段が重要な役割を果たしていることに改めて気づかされる。
 ところが、特殊教育諸学校に在籍している子どもたちは、感覚機能や運動機能に障害があるために、コミュニケーション手段を獲得することや活用することに困難さが見られる者が少なくない。なかでも、脳性まひ児をはじめとした肢体不自由児は、身体の運動機能に障害があるために、ことばを話すことやペンを握って文字を書くといったことに困難さが見られる。したがって、知的な発達の遅れがほとんどなく、文字やことばの意味を理解している子どもでも、「話す」「書く」といった表出・伝達手段の獲得や活用が困難なために、コミュニケーション活動に支障をきたしている場合が少なくない。
 近年のマイクロエレクトロニクス技術の発展は、パーソナルコンピュータ等の情報機器を個人レベルで利用できる状況を出現させ、社会のあらゆる側面に変革をもたらしている。パーソナルコンピュータ(以下、「コンピュータ」と略す。)は、ハードウェアの構成とソフトウェアの組み合わせによって、「字を書く」「絵を描く」「計算したり、その結果をグラフ化する」「音楽を演奏する」といった人間の諸活動を代行する機能を備えることが可能な機器である。このような人間の諸活動を代行するというコンピュータの機能は、人間のコミュニケーション手段の代行も可能にする事を示唆している。つまり、ハードウェアやソフトウェアと言った技術的な部分での工夫をすれば、「話す」ことや「書く」ことが困難な者の代わりに「コンピュータがしゃべったり、文字を書く」と言ったことが可能になるわけである。現在、一般的に利用されているコンピュータのほとんどは、標準キーボードやマウスを手指で操作しながらソフトウェアを利用するシステムで構成されている。しかし、身体の運動機能に障害がある子どもたちは、これらの入力装置を操作することが困難なために、コンピュータの持つさまざまな機能を利用することができない状況にある。そこで、標準キーボードやマウスに代わる入力装置やコミュニケ−ションに必要な出力装置を含めたハードウェア、さらにそれらを機能させるソフトウェアの開発と言った技術的援助がなされれば、身体の運動機能に障害がある子どもたちのコミュニケーション手段として有効であると考えられる。
 本稿では、身体の運動機能に障害のある脳性まひ児がコンピュータを利用する上で、その操作を容易に行えるような技術的な援助を行い、情報の表出・伝達手段として活用したところ、有用性を確認したので報告する。


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