一般財団法人上月財団
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事業紹介

第8回(2000年)上月情報教育賞研究発表大会記念講演

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講師 山極 隆

玉川大学 文学部 教授

電気通信大学教授

上月情報教育財団 情報教育振興助成事業 審査委員会顧問

「これからの学校教育の基本視座」

 <要約>
事前関与の縮減、各種規制の緩和


各学校の創意工夫や自己努力が活かされる余地を増やす教育システム
学校の自主性、自律性の確立、学校裁量権限の拡大、学校長のリーダシップ


教育の成果に責任を持つ教育(上記1と表裏一体)
教育の成果に対する評価システムの確立
地域に開かれた学校に基づく保護者、地域住民の学校運営への参画
通学区域の弾力化、学校選択の自由化

<論旨>
1.多様化、個性化、弾力化の中の学校教育

※入口重視(事前関与)が少なくなり、規制緩和の下に教育課程の多様化やその弾力的な運用が重視される。

教育課程の弾力的な運用(授業時間、複数学年の目標提示など)
特色ある教育、特色ある学校づくりの一層の重視、地域社会との連携強化
「総合的な学習の時間」の設置に見られるような「学習活動」についての学校の自由裁量の拡大
中・高等学校における選択履修幅の拡大、高等学校における学校設定教科、科目の設定
学級編制、教職員配置における弾力的運用、非常勤講師の国庫補助(学級を生活集団としての機能に限定し、学習集団としての機能は従来の学級から切り離し、少人数学級を可能)
大学入試センター試験の年2回の実施、リスニングテストの導入

2.現在取りざたされている新たな課題=学力低下傾向と心の教育
学力の一定水準を保障してきた学習指導要領に基づく必修中心の標準化されたカリキュラムの弱体化と選択履修の偏り(大学での補充学習の増加)
学力試験重視の入学者選抜制度、受験競争に対応するための進学準備教育など「学力維持装置」の揺らぎ⇒基礎学力低下、自宅学習時間の減少、思考活動からの逃避
50%の高等教育への進学、受験科目数縮減としての受験生の確保
大学による必要な入試科目の要求数の増加

3.学力を保障し維持するための新たな装置の出現=質の高い教育を目指して
 ※出口(事後評価、教育の成果)が従前以上に重視される=競争的な環境づくりの中で、教育の成果に関する結果責任、説明責任が問われる。

学校の自主性、自律性の確立、学校評議員制度の導入、機動的な学校運営、校長・教頭の資格要件の緩和、職員会議の位置づけの明確化
基礎学力の定着が単なるスローガンではなく、その定着度合いの証拠が求められ、教科の目標が確実に到達したかどうかを測る「基礎学力到達度調査」の実施を通して教育の成果が実証的に測定される。その結果は、各学校の自己点検評価に使われるとともに、学校評議員に報告される。
各学校の教育課程、特色ある学校づくり、「総合的な学習の時間」の取組み、子どもの基礎学力到達度の度合い、生徒指導上の問題とそれへの対応、予算の適切な執行、教員の指導力など、教育の質の向上、教育の卓越性の観点から各学校は自己点検評価を行うとともに、その結果を適宜外部に公表することが求められる=透明性の拡大、開かれた学校、結果責任、説明責任
イギリスでは、全国的な基礎学力到達度調査に加えて「教育水準監視委員会」が存在し、各学校に担当官が出向いて学校の実態調査報告書にまとめ、インターネット上にも公開されている。これらの情報を基にして、通学区域の弾力化、学校選択の自由化の流れの中で、学校選択の判断材料に使われる。
資格試験重視の方向(国際的な英語検定試験など)

4.開かれた学校運営の一環として、保護者や地域住民の学校運営への積極的な参画
複雑化、多様化、高度化する学校の指導者として従来の常勤教員だけでなく、再任用教員、非常勤講師、スクールカウンセラー、ガイダンスカウンセラー、コンピュータ・コーディネータ、カリキュラム・コーディネータ、図書館司書、ボランティアなど多彩な人材が指導に当たる体制が必要となる。
学校教育目標や教育計画などを単に説明するだけでなく、計画を立てた以上、それが具体的にどうだったのか、どこまで達成できたのか、何が達成できなかったのか、その原因はどこにあるのかを外部に説明するとともに、説明のための資料を学校は用意する。
保護者や地域住民が学校運営に企画段階から参画することによって、従来の「参加する」「一方的に意見を言う」状況から脱皮して、結果において責任を分担する、責任を共有する方向に持っていくことが望まれる。「参加、選択、自己責任」

5.いわゆる「総合的な学習の時間」について
以前はイベント的な体験活動がもてはやされたが、最近の傾向としては、学校や子どもの実態としての足元と21世紀を見据えた将来といった視点から「学習活動」を考える学校が増えてきた。
足元としては、教科の基礎・基本の上にたった総合学習、教科の学習に生かされる総合学習といった意味合いが重視されてきた。単なる、這い回る体験活動に陥ることへの警戒からであろう。
将来としては、21世紀の基礎・基本、21世紀の「読み、書き、算盤」、双方向のコミュニケーションの道具としての、外国語の活用力、情報活用の実践力の育成に力を入れ始めている。この方向に水を差すのはむしろ教師の側にある。自分が教えられないことは子どもにもさせるべきではないと言った考え方が根底にある。


−やまぎわ たかし−
 文部省初等中等教育局主任視学官を経て富山大学教育学部教授、平成12年3月退官

第15・16・17期中央教育審議会専門委員
教育課程審議会委員、教育職員養成審議会委員
大学審議会専門委員(入試改革)、大学入試センター評議員


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