第9回上月情報教育賞 研究論文
 
〜 教育コミュニティの創設・再生・発展を目指すASK-NETプロジェクト 〜
 
 
6.ASK-NETの今後の計画
 6.2 ASK-NETが必要とされる状況
  第一段階(2000年以前) 〜「知識詰め込み」から「自ら主体的に考える」教育へ〜
 学習にもっとも大切な「学びへの意欲」「学ぶ喜び」を見出すことが、受験勉強を中心とした従来の詰め込み型の学習では軽んじられてきた。この改善を目論んだ取り組みは、「ゆとり教育」「総合学習」「体験学習」など多数存在する。しかし、生徒の要望している「主体的に学ぶことのできる環境」は、依然として実現からほど遠いところにある。
 「学びへの意欲」に応える教育は、生徒の多様な要望に教職員だけでは対応が難しいことから実現が困難である。同時に、「生徒は本来学ぶことを欲している」という視点に立ったとき、子どもたちの世界を学校から地域社会へ、そして国際社会へと広げるきっかけをつくることが必要である。
 
  第二段階(2001年現在) 〜「サマーセミナーの実践」から学校内への環流〜
 各界・各地で論じられている子どもたちの学びを広げるための議論は、決定的にその実践が不足している。「誰でも先生、誰もが生徒」をキーワードに開催される『愛知サマーセミナー』は、生徒の学びへの要望に応える貴重な実践である。2001年度の第13回愛知サマーセミナーでは、907もの講座が開講された。生徒たちは市民の生の声を聞く機会を得、自らが講師となることで、教えるためにより学ぶという経験をすることができた。また、運営に参加した生徒たちは、運営することそのものを体験でき、学校の授業では見ることのできない教員や父母、市民の活躍する姿を見ることで、大人たちと関係を持つことができた。こうして、サマーセミナーに参加した生徒、父母、教師らの手によって、サマーセミナーの成果が各校の授業に徐々に反映されつつある。サマーセミナーは、夏の4日間だけにも関わらず、そこに参加し、実際に感じることで、学校の改革への道を参加者に考えさせる場、つまり教育改革のテーマパークとして機能しているのである。また、サマーセミナーをきっかけとして、学校での総合学習の時間に地域に住む市民の協力が得られるようになってきている。
 
  第三段階(2002年以降) 〜本来の学びの姿に立ち戻った学校を支援するASK-NET〜
 学歴の持つ有効性が薄れて来ている現在の状況は、進学のための受験勉強という学習の動機付けを弱いものとしている。従来の詰め込み型の教育手法のみでは、これまで以上に困難なものとなることが考えられる。これを克服するためには、生徒たちの自主的な学びへの意欲を誘発する装置としての総合学習や体験学習が不可欠のものとなる。そうした経験が、学びの必要性の実感をも生み出していくものと考えられる。
 インターネットというバーチャルな世界においては、日常とは比べ物にならないほどの情報を瞬時に検索し、獲得することが可能である。そこで、ASK-NETは、現実のリアルな世界で利用可能な情報をインターネットのバーチャル空間という検索が容易な環境に置くことで、様々な生徒の学びの要求に適した、リアルな街の人々とつなげ、この第三段階で必要となる「学び」を支援する活動となる。それは、ITを特に意識させなくても、ITの有効利用方法を生徒たちに体感させる実践となる。