第9回上月情報教育賞 研究論文
 
〜 教育コミュニティの創設・再生・発展を目指すASK-NETプロジェクト 〜
 
 
6.ASK-NETの今後の計画
 6.3 ASK-NETの今後の具体的な実施内容と目標
 これまでASK-NETプロジェクトは、生徒の主体的な学びの場『愛知サマーセミナー』のデータベース化とウェブ化を中心的に進めてきた。今後はこれを発展させ、「地域の教育人材データベース」ともいえる『学びのデータベース(ちえナビ)』を構築することを目指している。同時に、このデータベースを各学校や教育団体に利用可能な形式で公開する。
 『愛知サマーセミナー』は貴重な実践であるが、開催に関連する学校でしか蓄積が生かされていない。サマーセミナーの実践を全国に広げることと、現に存在するサマーセミナーに集う市民らの情報を誰もが利用できるようにすることが、子どもたちの主体的な学びのきっかけづくりとサポートに有効である。そのため、当面の課題として、こうしたサマーセミナーなどで発掘された市民をデータベース化し、愛知県全域において活用できる「学びデータベース(知恵ナビ)」の構築をめざす。この学びデータベースの技術的な蓄積は、愛知県を離れた他地域においても利用可能である。
 
 <課題>
  1) 子どもたちの主体的な学びへの姿勢を活性化する仕掛けをどうつくるのか?
 生徒の学習・活動範囲は、学校や塾に限定され、周辺地域から学ぶ機会が少ない。それが生徒の学びへの要望を限定的なものにしている。しかし、生徒たちが、ボランティア活動や、社会体験、様々な市民との出会いなど、街と交わり主体的な体験をするなかで、様々なものへの興味、学びの要望は活性化する。それではどのように、現在の学校のシステムに街の息吹を吹き込むのか、それが課題である。一つが、オータムフェスティバルのように、学校を舞台にまつりを開催する方法であり、サマーセミナーや土曜公開講座のように多様な市民講師を招いての公開セミナーを開催することである。そうした企画を各学校で実現する際には、適切に市民をコーディネートしていく力が必要であるが、どうしたら学校がその機能を獲得していけるのか?
  2) 子どもたちの、活性化した様々な学びへの要望にいかに応えていくか?
 一度活性化した生徒たちの学びへの要望は多様である。そうした学びへの要望すべてに教師が対応するのは不可能である。また、街に存在するその要望に適した経験、知識をもっている市民、組織等の情報を、多くの知識をもっているわけではない。そのなかで、学校がどのようにして学びへの要望に応えることができるか。
 
 <課題へのアプローチ>
 以上にあげた1)〜2)の課題に対して、地域が、地域に存在する人材リソースを、適切にコーディネートできる機能を学校に提供することができれば、学校が個別に体制を整えるよりも、効率的に課題の解決が図れると考える。よって、「学びデータベース」とは、地域に存在する知恵や経験をもった市民の情報を整理し、以上の2つの課題を解決するために、市民と学校との接点をコーディネートするものである。
 
 <「学びデータベース」の実現に向けてのASK-NETの活動>
 ASK-NETは、この「学びデータベース」の実現に向けて企画・準備を進めている。様々な知恵、経験をもった市民の情報を整理し、市民の教育参加を促すと同時に、愛知サマーセミナーのようにウェブ上に展開し、様々な学校や教育機関で利用できるような紹介機能を実現することである。そして、生徒と周辺の社会がスムーズに連携するようになれば、学校という閉ざされた社会だけでなく、周辺の地域へと生徒の活動の範囲が広がり、そこから学ぶことが出来る街が生まれる。それは、まさに「教育」をベースに市民が協力し合うまちづくり、これから目指していく「教育コミュニティ」なのではないだろうか。
 
学びデータベース(知恵ナビ)イメージ図
図4.学びデータベース(知恵ナビ)イメージ図
 
 同様のデータベース構築の動きは、大阪府の取り組み等、行政主導によるものをはじめ、企業による取り組みも存在している。しかしながら、この事業は、教育を支援しようとする市民のボランタリーな気持ちを活性化しつつ、同時に、生徒や教師、父母、市民の学びへの要求に沿いながら、公の機関として継続的な事業として成立させていくという、ダイナミックな運用を考えなければならない。そのためには、特定非営利活動法人(NPO法人)格が最も適した運用体制であるのではないか、と考えている。