7.「指導と評価の一体化」を促すティーチング・ポートフォリオ | |
ティーチング・ポートフォリオとは,学習活動において,指導者および生徒にとって,生徒達に付けたい資質・能力や,そのためにどのような意図のもとで学習活動を行なったかという情報が収集されたものである。今回,情報Cにおける学習指導要領の内容「(1)情報のディジタル化」において,ティーチング・ポートフォリオの作成を試みた。ティーチング・ポートフォリオの作成手順の検討から始め,その際,国立教育政策研究所教育課程研究センターが作成した内容のまとまりごとの評価規準をよりどころとした。 まずは,「具体的な学習活動」,「内容のまとまりごとの評価規準」,「学習指導要領の内容とその取扱い」および「情報教育の目標(本校における評価の観点)」の関係がわかるようなマトリクスを作成し,このマトリクスのセルに「学習活動におけるに評価方法」を記入した(表1)。これをティーチング・ポートフォリオの概要という(表1)。 次に,各授業での評価方法を明記した学習指導案(=ティーチング・ポートフォリオの詳細)を作成した(表3〜12)。学習活動の具体的な評価については,内容のまとまりごとの評価規準を参考に本校独自の評価規準を設定し,「生徒個々の評価」目的なのか,あるいは「授業評価」目的なのかを明記した。評価にあたっての基準はA,B,Cの3段階とし,具体例を作成して学習到達度把握の指標とした。 さらに,A,B,Cの3段階の実現状況をパーセンテージで表記した事後のティーチング・ポートフォリオを作成し,指導者の自己評価(授業評価)に利用した(表14)。「授業評価」については以前であれば,せいぜい授業の終わりに記述式の授業アンケート(感想)を取り,それを読み流すだけで授業の出来や生徒の学習活動を,指導者側の独善的な勘で把握していた。今回,評価規準と評価の具体例を設定することで,学習状況把握の基準が明確なものとなった。本稿では,ティーチング・ポートフォリオの有効性を検証するため,「授業評価」について全生徒の状況把握に努めたが,実務的なことを考えれば,これらの作業を日常的にこなすことは困難である。よって,1クラスだけ抽出して検証を行なう。あるいは,必要と思われる単元のみ検証するなど「授業評価」の把握については運用上の工夫が必要であろう。 「生徒個々の評価」については,「授業評価」と異なり,全員の状況把握が必要となる。ただし,生徒を評価する時,「指導途中」なのか,「指導後」なのかで意味合いが異なる。以前であれば,知識偏重の評価法で学びの過程を無視し,ペーパーテストのみで,途中経過がどうであれ結果が全てだった。観点別評価が導入されるようになり,学びの過程についても評価項目として加わってきている。しかし,学習活動全てを評価し尽すことは不可能である。よって,指導者の意図とする学習活動の評価が,「指導途中」なのか「指導後」なのかを明確にし,「指導後」に集約したものを「生徒個々の評価」として(表1の網掛け部),「指導途中」のものは「授業評価」として扱った。 以上のように,ティーチング・ポートフォリオによって,学びにおける生徒および指導者の活動を評価という観点で結びつけることができ,指導と評価が一体化された能動的な授業サイクルを完成することが可能となった。 |
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