4. 教材Web
4.1 情報Cの目標を達成するための教材の在り方
 学習指導要領における情報Cの目標は以下の通りである。
 情報のディジタル化や情報通信ネットワークの特性を理解させ,表現やコミュニケーションにおいてコンピュータなどを効果的に活用する能力を養うとともに,情報化の進展が社会に及ぼす影響を理解させ,情報社会に参加する上での望ましい態度を育てる。
 本校の授業は,教材Webで毎時間,座学と実習が一体となり展開される。教材Webを介した生徒間および生徒−教師間の授業中のやり取りは,情報社会の特徴であるインタラクティブ(双方)性そのものであり,学習活動の中で,「情報のディジタル化」や「情報通信ネットワークの特性」を肌で感じることができる。このように教材Webを用いた授業が,情報社会における情報のやり取りのロール・プレイ的意味合いがあり,この経験が「情報社会に参画する態度の育成」につながる。

4.2 教材Webのタイプ
ア. 電子教科書(E-Textbook)
図1 電子教科書(E-Textbook) 図2 IPA のディジタル・コンテンツ
 教科書を参考にWeb Pageによる自作の教材「電子教科書(E-Textbook)」を作成した(図1)。Web Pageを利用すると,IPA(情報処理振興事業協会)などが提供する動画コンテンツにリンクさせることができる(図2)。また,授業内容に関係するインターネット上のサイトへリンクさせ,生徒に閲覧させることもできる。
 情報処理室はNECのPC-SEMI NSが導入されており,教師PCの画面を生徒用PCに画面転送することが可能である。授業では,生徒PCのディスプレーにE-Textbookを表示した教師画面を転送し,ペン・ダブレットのマーキング機能などを利用しながら解説を加える。生徒は,解説を聞きながら,授業プリントに必要事項を書き込む。解説後は,次項で紹介するコミュニケーション・ツール(Communication Tools)を使って,生徒の意見や考えを教師側に送信させる。また,生徒同士の情報交換にも利用する。
 このように,E-Textbookを使うと,生徒間および生徒―教師間の情報がスムーズに行き来する学習環境を構築することができる。

イ. コミュニケーション・ツール(Communication Tools)
 生徒―教師間,生徒間でインタラクティブな授業を行うため,E-Textbookに各種コミュニケーション・ツールをリンクさせてある。以下は,タイプ別のコミュニケーション・ツールである。
■ レポート・フォーム(Report Forum)
 レポート・フォーム(Report Forum)とは,教師側の発問に対して生徒が「思考・判断」して,返答する入力フォームである(図3)。主に,「関心・意欲・態度」および「思考・判断」に関する評価収集に利用する。生徒の返信データはCSVファイルとして記録されるので,Excelなどでの読み込みが可能となっている(図4)。
図3 レポート・フォーム(Report Forum) 図4 CSV 形式の生徒返信データ
■ チェックシート
チェックシートは,主にコンピュータおよびアプリケーション・ソフトの操作などの「技能」に関する評価収集に利用する(図5)。
生徒自身は,授業中にどの程度の技能を習得したかを確認する「自己評価」に,指導者は学習集団がどの程度の「技能」を習得できたかを把握するための「授業評価」の手段として利用する。
なお,生徒の返信データは,レポート・フォームと同様に,CSV形式のファイルで記録される。
■ 小テスト
 座学で説明した内容を,生徒自身の「知識」として「理解」されたかを確認するツールである(図6)。チェックシートは「技能」の「自己評価」に利用されるケースが多いが,小テストは主に「知識・理解」に関する評価収集の手段として利用する。
図5 チェックシート 図6 小テスト
■ 画像付き電子掲示板
 画像付き電子掲示板は,生徒が撮影したディジタル写真やペイントショップなどの画像処理ソフトで作成した作品を解説付きでWebPage上に表示することができる(図7,8)。
 画像作品を生徒間で閲覧させ,相互評価を行わせる時などに役立つ。
図 7 画像付き掲示板による自己紹介 図 8 画像付き掲示板による編集画像
■ ツリー型電子掲示板(Forum Board 2.20)
 レポート・フォームでは,一生徒と教師の間でのやり取りしかない。そこで,クラス全体の意見交換の場としてツリー型の電子掲示板をE-Textbookにリンクさせた。電子掲示板を使うと教師の発問に対して周りの生徒がどのような考えを持っているのかを生徒間で閲覧することが可能となり,生徒個人の活動からクラス全体の活動へと学習に広がりが出る。他のクラスの掲示板を閲覧させれば,学年全体の活動まで広がる。
 また,ツリー型電子掲示板は,使い方で投票システムとして利用できる。教師が選択肢のスレッドを立て,生徒が各選択肢に返信することで,返信スレッドの数がそのまま投票数となる(図9)。
図 9 ツリー型電子掲示板
■ メーラ(ウェブメーラー Ver0.954)
 Windows2000 ServerにEMWAC(European Microsoft Windows NT Academic Centre)が提供しているIMS(Internet Mail Services)をインストールし,校内イントラネット専用のMail Serverとして運用している。メーラはPealで動作する竹田暁彦氏が作成した「ウェブメーラー Ver0.954」を利用している。
 「ウェブメーラー」は名前のとおりWeb Mailerであり,Mail ServerのMail Boxに保存されている電子メールを読みとるので,クライアントに電子メールが保存されない。情報処理室のように不特定多数の生徒がクライアントを利用する環境に適しているメーラである。
図10 ウェブメーラー Ver0.954

ウ.  ロール・プレイ教材
イントラネット専用のWeb ServerおよびMail Serverを運用しているので,イントラネット内に架空のサイトを構築することが可能である。
そこで,架空のオンラインショッピングサイトを作り,オンラインショッピングを疑似体験(ロール・プレイ)させ,その利点と問題点についてレポート・フォームで送信させた。
また,チャットルームを用意し,やり取りの中からネット・コミュニケーションの特性について考察させた。
図11仮想オンラインショッピングサイト

4.3 コンテンツの統合および充実のために
 3年間の授業実践の中で,教材Webの開発が進んだ。しかし,情報社会の進展はドックイヤーといわれるように日進月歩である。よって,生徒に対して常に新鮮な情報を提供しようとすると,教材Webを日々更新していく必要がある。また,本校はチーム・ティーチングで同一のWebpageを使いながら授業を進めているので,複数の担当者がWebpageを管理しているといえる。教材および授業の質を保たせるために,Webpageのメンテナンスにおいて,システム変更が必要となった。
 そこで,本年度からは,CMS(Contents Management System)を導入した。CMSの導入によって,教材の更新,整理および管理が容易となった。導入したCMSは,国立情報学研究所が開発したNetCommonsである。NetCommonsを導入した理由は,
● 「バーチャルオフィス機能」といった強力なアクセスコントロールが可能であること。
● 「レポート機能」・「テスト機能」・「アンケート機能」などの教育支援ツールが充実していること。
● 「オープンソースソフトウェア」であり,柔軟性と拡張性が高いこと。
である。現時点では,NetCommonsのモジュール「iframe」を用いて,今まで開発してきたE-TextbookやCommunication Toolsを流し込んでいるだけであるが(図1),将来的には,多機能なモジュールを利用して,指導と評価を一体化したE-learning systemを開発する予定である。

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