情報教育の位置付け
 授業におけるコンピュータ活用の目的
(1)教育方法の改善・充実のためのコンピュータ活用
 コンピュータの使い方を指導するために授業をするのではなく,コンピュータソフトがあるから授業をするというのでもない。あくまで,教科の指導法の改善や充実のための利用として捉えていく。つまり,教育手段としての利用を図るということでコンピュータの特性からは下記のような活用を実施し,いろいろな利用方法を考えていくことを大切にした。
 また,コンピュータという道具に限らず,多様な視聴覚機器や図書館資料などの活用していくことも併用し,その違いや特徴を体験的に学ぶことに重点をおいた指導をこころがける。
1 基礎的・基本的な内容の確かな充実 ドリル,チュートリアル
2 学習課題への関心・意欲の喚起 シミュレーション(一斉)
3 課題追究や解決の知的道具 シミュレーション,データベース,インターネット
4 表現や発表・伝達の効果的道具 CG,ワープロ,通信
(2)教科指導と情報教育の統合
 教育方法の改善や充実のためにコンピュータを活用したというだけでは,情報教育のねらいにせまることは難しい。そこで,教科のねらいにせまりながら,情報教育としての内容も取り入れていき,教科指導と情報教育の統合を図ることをねらいとする。
 その際,情報教育とは,各教科・科目,領域等での指導において,情報活用能力を育てる教育であると位置付け,その内容を次の4つと考え指導に当たることとした。
1“新しい情報”の創造と伝達能力 情報及び情報手段の選択,処理能力
情報の判断,選択,整理,処理能力及び新たな情報の創造,伝達能力の育成
2“情報化”がもたらす影響の理解 情報化社会の光と影を含む特質
情報化社会の特質,情報化の社会や個人に対する影響の理解
3“情報”に対する責任感や倫理観 情報の重要性の認識
情報の重要性の認識,情報に対する責任感
4“情報手段”の基本的な操作能力 情報科学の基礎と情報手段の特徴の理解
情報科学の基礎及び情報手段(特にコンピュータ)の特徴の理解,基本的な操作能力の習得
 以上は1987年の文部省文書「初等中等教育における情報化への対応について」で情報活用能力の4つの柱として示された内容となっているが,教科指導における目標領域「認知的領域(気づく,知る,理解する,考える)」,「技能・能力的領域(読み取り方,調べ方,見方,考え方,やり方,まとめ方)」,「情意的領域(興味・関心,価値づけ,態度)」を明確にし,情報活用能力からみた情報教育との「統合」を図っていくように努めた。
方法としては下記のマトリックスを活用し,1時間の指導における重点指導項目を設定するようにし,日々の授業実践に生かしていく。具体的には教科の目標と情報教育の内容を授業者の考えで結びつけ,焦点化を図るという意味で◎,○の2カ所程度を目標として設定していく。これによって,コンピュータ活用の意図が情報教育としての内容に結び付くという関係が意識化できると考えた。
教科の目標領域
認知的領域 技能・能力的領域 情意的領域
情報活用能力 1“新しい情報”の創造と伝達能力
2“情報化”がもたらす影響の理解
3“情報”に対する責任感や倫理観
4“情報手段”の基本的な操作能力
 その際,情報教育の目標としては,
ア.情報活用の実践力
課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力
イ.情報の科学的な理解
情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と,情報を適切に扱ったり,自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解
ウ.情報社会に参画する態度
社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解し,情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え,望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度
(1997年文部省協力者会議報告書「体系的な情報教育の実施に向けて」)
を念頭におき,「情報活用の実践力」の育成に重点をおいた指導を充実させるよう計画した。

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