研究の成果と課題
 ここ数年,インターネットの充実,携帯電話,パソコンなどのメディアの発達によって,だれでも必要な新しい情報を瞬時にいつでも入手できるようになり,今後,さらなる技術革新によりメディアの活用は活発となり,高度情報通信社会へと進展することは確実である。
 このような時代の中にあって,平成6年,文部省指定・教育課程研究指定校として授業公開以来,現在まで,研究主題を「自ら学び生きる力を育てる学習指導のあり方」として,溢れる情報の中から,自分に必要な情報を収集・選択し,主体的に自らの考えを築きあげていく情報活用能力の育成を手立てとして,生きる力を身に付けさせることを目指して研究と授業実践の日常化に取り組んできた。
 さらに,平成8年度から『コンピュータの教育利用』について研究を進め,これまで培った研究をさらに深化・発展できること,コンピュータの活用によって学習素材を豊かにできること,一人一人の子供たちの個性を考慮した学習のあり方の改善に結びつくこと等,教育方法の改善・充実のための研究が日常の授業実践に生かされることが明らかになった。
 研究の目的としては,コンピュータに慣れ親しむことを大切にし,教科を中心に調べる・深める場面,表現する場面などにおいて学習活動を豊かにする道具として活用を図り,教科指導と情報教育の統合を目指していくことを研究の目的とした。
 そして,主な研究推進項目として,「コンピュータの活用のための環境整備」,「コンピュータの年間計画への位置付けとその活用」,「コンピュータを効果的に活用した授業実践の日常化」,「コンピュータリテラシーの育成のための施策」等を推進してきた。
 その成果として,授業提案や日常の授業からコンピュータを効果的に活用することにより,子ども達の学習への興味・関心が高まり,自ら学ぶ意欲が高まってきていることが感じられ,授業におけるコンピュータ活用の利点として次のような点が明らかになった。
 ・アニメーション的活用を取り入れることにより,導入での意欲付けが十分に期待できる。
 ・実際に見ることが困難なことをシミュレーションで視覚的にとらえることができる。
 ・統合型ソフトを使うことにより,表現活動を手助けする道具をして活用することができる。
 ・インターネットの活用は,今後子どもの学びを広げる有効な手段となる可能性が確認できた。
 ・作成した情報を瞬時にプレゼンテーションすることにより,フィードバックが容易にできる。
 ・アプリケーションソフトは,制作者の考えと活用する授業者の考えがなかなかマッチしないが,部分的な活用をすることにより,学習の効果が上がる。
 ・自作ソフトは,子どもの実態に合わせて作成することができるので,今後も開発に努めていく。
 今日,児童のコンピュータの基本操作は,予想以上に向上し,学習に対する意欲・関心が,広く豊かになってきた。特に,日常の学習活動において調べる・深めるといった活動が,子ども達の姿の中により多く見られるようになってきている。更に,放課後インターネットを活用して,より新しい資料,より詳しい資料を引き出し,学習に意欲を見せる子ども達が見られるようになった。また,家庭でインターネットを利用し,積極的に資料を収集し,学習に参加する子どもも現れてきた。
 今,社会的要請として,国際理解教育,環境教育,ボランティア教育等の学習が強く叫ばれ,情報の活用をベースにした取り組みが求められてきている。また,子どもを包む学習環境において,情報教育環境の条件整備が更に推進されていく条件が整いつつある。
 今後,子ども達の学習は,学校完全週5日制が導入される中で,ますます多岐にわたってくることが予想され,既成の知識や技術を教えるよりも,豊かな想像力や情操を身に付け,主体的に情報化社会を生きぬく子どもの育成を目指して取り組むことが学校に求められていくであろう。
 平成14年度からは「総合的な学習の時間」の実施が本格的に始まるという時期を目前にして,「情報活用の実践力」を一層高めながらも,「情報の科学的な理解」や「情報社会に参画する態度」の育成という情報教育に固有の内容についても,授業実践を通した研究として進めていく必要があり今後の課題として取り組んでいきたい。
 終わりに,これまでご指導・ご助言・ご支援を賜りました八戸市教育委員会指導課及び総務課の皆様方をはじめ,八戸市視聴覚センター・児童科学館の皆様方,八戸市小学校視聴覚教育研究会の皆様方に厚くお礼申し上げます。特に,3年間にわたって数多くのご教示をくださいました川村学園女子大学の古藤泰弘先生に衷心より感謝申し上げます。
参考資料  
「学習指導要領総則解説書」
文部省 日本文教出版(1999,5)
「コンピュータや情報通信ネットワークなどを活用した学習をどう充実するか」
川村学園女子大学教授 古藤泰弘 著 「教職研究 332号」(2000,4)
「授業の方法と心理」
川村学園女子大学教授 古藤泰弘 著 学文社(2000,5)
「インターネットで総合的な学習を立ち上げる」
神奈川県相模原市淵野辺小学校,古藤泰弘 共著 明治図書(1999,11)

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