4.2 情報を編集する力の育成
4.2.1 適切なメディアの選択
「メディアの特性」の授業を通じて、文字、音声、画像などの長所、短所を理解させることはできた。しかし、その扱いやすさの違いは無視できず、音声や画像の表現力の高さと文字の扱いやすさを比べると、現実的には表現手段としてまず文字が選ばれてしまう。この授業では情報機器の扱いの比重を意図的に低めてきたが、こうしたところに弊害が現れたといえる。
いろいろなメディアの守備範囲はよくわかったけれども、やっぱり文字が一番身近だ。人前でしゃべるとしても原稿を書いたりするし文字の役割はこれからも変わらないと思う。
4.2.2 表現
文字による表現は国語科、シンボルによる表現は芸術科といった既存の教科の内容に重なる一方で、音声や映像を用いた表現の指導は、一部の生徒が放送などのクラブ活動において身につけることはあっても、教科としては一般の高等学校には存在しない。また一部の教科で視聴覚機器が用いられることがあっても、それは教師が用意した教材を生徒に提示するためのものであり、生徒の表現手段として開放されたものではない。
今回の実践では、生徒にできるだけ自由にそうした表現手段を利用できる環境を整える努力をした。機器の数も少なく、指導する側の戸惑いもあり十分な成果はあげられなかったが、一部の生徒はメディアの特性を活かした作品が提出されたりもした。
シンボルのデザインの授業においての美術科のアドバイスを得たり、情報倫理の内容においての公民科での扱いを尋ねたりするなど、他教科との連携を考えながら実践をしたが、専門的な知識を必要とすることなども考えると、授業の趣旨を説明した上で他教科の教師に授業を担当してもらうことができれば効果的であると考える。
4.2.3 受信者を意識すること
受信者を意識することを口頭で強調した指導をしても、実際には他人から何らの形で評価されるまで受信者を意識することは難しい。そのために作品の制作の過程でお互いに意見交換をし、完成度を高めていく方法を取った。
自分の意見が他人にどう思われるかがすごく気になる。頭から否定されたらどうしようという不安です。ただ、他の人に誤解されるのはもっと嫌だから、思っていることを正しく伝えたいと思います。
このとき、自分の意見をしっかり持った上で他人の意見を聞くということを指導しないと、単に他人の意見に迎合することになってしまう。自分の意見の正しさを尋ねるのではなく、自分の意見の伝わり方の正確さを尋ねることを強調した。それでも他人の意見を聞く中で、主張が変化していくことは避けられない例もいくつかあった。
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