3.6  コンビニの戦略


3.6.1  ねらいと概要

 学校から最寄の駅までの1キロメートルほどの間に数軒のコンビニがある。駅や幹線沿いなどの立地の条件や早朝から深夜まで、店舗によっては24時間営業するなど、文字どおりちょっとした買い物に「便利な店」であるコンビニは、人々のライフスタイルの変化を敏感に吸収しながらわずかの間に日常生活に不可欠なものになってきた。高校生にとってもコンビニは、弁当や軽食、雑誌を購入したり、新製品の情報を得たりコンサートのチケットを予約したりというように、その利用は生活の一部となっている。しかし消費者にとってコンビニは多くの場合、そうした物品の購入場所あるいは新着情報の受信できる所としか捉えられていない。この単元では、気づかないところで自分たちの情報が集められ利用されているということをコンビニを通じて気づかせ、情報社会が未来のものでなく現在のシステムであることを意識させる。


3.6.2  消費者としてみたコンビニ

 まず、生徒のコンビニ利用の実態を調査した。それによると、利用の仕方は
 ・ 軽食の購入(おにぎりやパン、飲料水)
 ・ マンガや週刊誌の購入
 ・コンサートのチケットやCDの予約など
などである。コンサートのチケットやCDの予約については、利用したことがない生徒もかなり見られたが、そうしたことがコンビニで可能であることは全員知っていた。他方で生活用品の販売や公共料金の支払い、宅配便の取次ぎなどができるコンビニも増えたが、高校生にとって日常的に必要な機能とは思われていない。

 同じものが購入できる他の形態の店舗(スーパーやデパートなど)をなぜ利用しないかを尋ねると、
 ・ 通学途中にない
 ・ 登校時間に営業していない
 ・ 欲しいものがコンビニには必ずある
などという意見が出た。まさにコンビニが他の営業形態の店舗との差を打ち出そうとしている特徴を全面的に利用していることがわかる。

 このような自分たちのコンビニに対する意識を出し合った上で実際にコンビニに出かけた。


3.6.3  経営者としてみたコンビニ

 消費者の立場を離れ、経営者としてコンビニを見せた。まず、立地の条件を考えさせたが、駅と学校があればその間に店舗を開設する、学校と反対側に設置しても無意味だという例は生徒にとってもわかりやすかった。また商品の陳列については、「弁当とお茶という必ずセットで購入されるものはできるだけ離して置くと、その間を移動するときにお菓子の一つでも買ってくれるかもしれない。」という説明には「それではコンビニ(便利)とは正反対の発想だ。」という消費者の立場から抜けきれない意見もあったが、「確かに自分もそういう余計なものを買ってしまった経験がある。商売上の思惑に引っかかったんだな。」という生徒が数人いて、生徒自身の体験と重ねて学習できた。

 さらに、レジは「商品の金額を入力して合計を出す」程度にしか意識されていなかったが、実際には商品の売れた時間や天候、購入者のおおよその年齢や職業、子供連れかどうかなどといったデータが細かく採取されて、経営上の戦略に活かされていると聞き、消費者にとって情報発信基地と思っていたコンビニが、実は巨大な情報受信基地だったという意識が生徒に芽生えた。こうしたことはコンビニに限らず、ファーストフードの店やファミリーレストランなど、全国規模でチェーン店を抱える会社ではごく当たり前に行われていることを紹介した。


3.6.4  生徒の感想

 ・ 今のままではコンビニの思うつぼ。消費者として意識を高めねば。
 ・ もうコンビニに入れない。
 ・ コンビニが怖い。
 ・ 情報社会って怖い。
 ・ 向こう側の人間になりたい。


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