3.4  メディアの特性


3.4.1  ねらいと概要

 この単元では文字、静止画、音声、動画といったメディアがそれぞれどのような情報を伝えることを得意とするか、伝えるべき情報がメディアの違いによってどのように受け止められるかを体験する。情報を得る身近なメディアとして、テレビ、ラジオ、新聞、週刊誌を取り上げ、文字、音声、映像などの特徴を知った上で今後自分の意見を主張する際に最も適したメディアを選択できる力を身につけることを目指す。


3.4.2  長野オリンピック

 長野県で開催されたオリンピックは数々の感動的なシーンがあった。生徒もテレビや新聞を通じてその感動を共有したはずである。ここでは日本チームが金メダルを取ったジャンプ団体を素材に各種メディアがどのようにそのニュースを伝えたかを検証した。用意したものはNHKの番組の録画、ラジオの録音、翌朝の新聞、翌週の週刊誌などである。生徒の意見を聞きながらメディアの特徴をまとめた。

 まず、テレビでは、金メダル決定の感動的な映像を、直後から何度も繰り返して放送していた。音声はアナウンサーの実況よりも観客の歓声や選手の声が中心である。しばらくしてから、前回のオリンピックにおける日本選手団の失敗ジャンプから今回に至るまでの過程をドキュメンタリー番組として放送するようになった。こうした番組は金メダルが決まってか急遽作成されたものではなく、以前からこうした結果を想定して製作済みのものであるはずである。(図3-7)

原田選手のジャンプ歓喜の日本ジャンプ陣

図 3-7 長野オリンピック(NHKテレビより)

 

 次にラジオの実況中継を聞いた。ラジオは他のメディアに対して画像を持たないというハンディがある。金メダル決定直後はアナウンサーの絶叫調の実況や番組を忘れたかのような解説者のコメントが表情豊かで、そうしたハンディをカバーしていた。ラジオの聴取者は車の運転中や仕事中でテレビが見られない状況にある人や、目が不自由な人が情報を入手するよりどころとしていることが多いが、そうした聴取者に現場が目に浮かぶと思わせるような印象をイメージさせる番組制作者のテクニックが必要なメディアであると思われる。

 続いて新聞を読んだ。新聞はテレビ、ラジオに比べて即時性に欠けるという短所がある。翌朝読んだときに、これはテレビで見たシーンだとかラジオでいっていたことが活字になっただけという印象しかなければ新聞の存在価値はない。こうしたイベントを伝える新聞記事は読み物として読み応えのあるコラムなどに独自性が感じられる。またテレビ、ラジオと違って保存が容易で、必要な部分を切り取って整理する人もある。

 週刊誌は発売日との兼ね合いで新聞よりもさらに即時性に欠ける。タイミングによっては読者の熱気が冷めたころに発売するようなこともありうる。そこでそうした読者もひきつけるような内容を盛り込む必要があり、選手の生い立ちや家庭環境などのプライバシーに踏み込んだ、競技とは直接関係ないような点にウェイトが置かれる傾向がある。またこうした大きなイベントの際には特集を組み臨時に発売することで即時性を補うこともある。こうして発売された雑誌は保存版として発行される。図書館や家庭で購入され、保存されるという意味においてはビデオや新聞の切抜きといったものよりも利用されやすいことがわかった。


3.4.3  生徒の感想

 ・ ほとんどの情報をテレビから得ている。他のメディアに対する意識を変えたい。
 ・ 情報は多いほどわかりやすいと思っていたがそうではないことが解った。
 ・ テレビに対するラジオ、新聞に対する週刊誌をそれぞれ一段低いものと思っていた。それぞれのメディアの守備範囲が理解できた。


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