校舎3階に上ると,コンピュータ教室前の廊下に並ぶ生徒の靴。情報教育実践プログラム開始後、朝から夕方までこの光景を目にすることができた。生徒の靴も、先生の靴も毎時間変わる中,コンピュータ教室のコンピュータは働き続けた。
巌中学校の情報教育も、新校舎完成から本格的に始まり3年目になった。ネットワークシステムを立ち上げた直後は、一部の教科・領域での情報機器利用であった。そこから、全教科・全領域でのコンピュータ利用が当然のようになってきたことは今年度の大きな成果の一つである。校内に張り巡らされたコンピュータ通信網。目の前にあるコンピュータが単なる機械ではなく、互いに有機的に結びつくことによって,それまでにない利用方法が開拓されてきた。生徒も教師も、インターネット接続されたコンピュータを前にして、「やるしかない」という気持ちが本校の情報教育を推進してきたと考えられる。きっかけはいろいろあるが、全ての教師がコンピュータを使う授業を創造し、生徒のためになることはなんでもやろうとする気持ちと、コンピュータを前にした生徒の意欲が、今年度の情報教育実践プログラムの大きな推進力となった。
実施した授業実践プログラムは多岐に及んでいる。国語科ではコンピュータの電子会議室機能を利用した連歌の作品や文学作品の感想についての意見交換の場として、社会科では調べ学習のまとめをマルチメディアでまとめ上げ、理科では学校を飛び出してまで意見交換をすることをインターネット利用の交流に求め、美術科では氾濫する情報から自分の視点で集めた作品による仮想美術館プログラムの学習,技術科でのプログラムの学習などなど、コンピュータの持つ汎用性を利用した実践が各教科で行われた。コンピュータ利用学習が情報教育担当者や理科・技術科などの特定教科の教師ではなく,誰でもいつでも実践できるように、本校教師のネットワーク利用の意識が育ってきた。同時に生徒も自主的にコンピュータを使いこなし,学園祭でのオープニングに上映されたコンピュータ利用のプレゼンテーション,メディアスペースからの電子メールによる自由な交流など日常生活の中にネットワークがとけ込んできている。これらは,新校舎に入学してきた生徒を中心にした実践や活動の成果である。
今後の課題として,次の点に留意した新しい授業実践を更に考えていきたい。
@情報機器を活用することで,個に応じた学習展開が可能になるか。
A実体験はできないが,仮想体験ができるか。
B生徒の興味・関心を喚起できるか。
C思考の補助的道具となるか。
D多様な表現が可能か。
また授業運営上,特にコンピュータの利用上の課題として以下の内容を踏まえながら,教師の研修と生徒の実践を柱に巌中情報教育の充実を図っていきたい。
@計画的なコンピュータ教室の利用を心がけることで,施設のより有効な活用を図る。
Aスポット的に行っているコンピュータ教室でのTT,TAの計画化を図る。
B実践で創られた優秀な生徒作品の次年度での効果的活用の推進を図る。
C生徒・教師ともに,コンピュータの基礎的・基本的な操作方法学習の計画化を図る。
D全領域・全教科での情報教育の教材・資料・活動などの相互交流を図る。