開発研究テーマ
「計算検定 パソコン版」教育ソフトの開発
代表者名
「計算ソフト」プロジェクトチーム 大久保義信
目 次
T 計算ソフト開発の趣旨・・・・・・・・・・・・・・・・・2
U 計算ソフトの特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
V インストールの手順 ・・・・・・・・・・・・・・・・・4
W 小学校1年生「かずのひろばコース」 ・・・・・・・・・6
X 小学校全学年「算数計算コース」 ・・・・・・・・・・・7
Y 中学校全学年「数学計算コース」 ・・・・・・・・・・・8
Z 計算ソフトの活用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
勤務先 兵庫県小野市古川町940番地の1
小野立旭丘中学校
T 計算ソフト開発の趣旨
兵庫県小野市は、算盤の産地であり、市内教職員は計算力の向上について関心が高い。そのため、小・中学校の算数・数学担当者が連携して算盤を活用した計算力の定着や、小・中学校の算数・数学担当者が連携してつまずきを出さない方策等について議論し、学力定着の在り方について研修してきた。そして、4年前より本市教育委員会が中心となり、市内全教職員が協働して、義務教育9カ年に及ぶ本市独自の「おの計算テキスト」という副教材を作製した。
このテキストは、小学校低学年用、中学年用、高学年用、及び中学校用の4冊編成でできており、現在、本市教育委員会が市内児童生徒(約4800人)に無償配布して、全ての子ども達が学校や家庭で効果的に活用している。
ただ、テキストは、本に直接解答を書き込めば、2度目以降利用できないという弱点がある。そのため、「より楽しく学び、より多くの問題を、より正しく、より速く解くことによって、何度でもチャレンジし、学習の習慣化をつけたい」という子ども達の意見や教職員・保護者の願いを叶えるため、その補完教材として小野市計算テキストに沿った「PC版計算ソフト」の研究開発に着手した。
そして、市教育委員会の協力を得て、小中学校の教員らとプロジェクトチームを組織し、完成後は本市教育委員会にソフトを寄贈することを願い出て、研究を進めてきた。
この事業の第1のねらいは、「算数・数学嫌い」をなくして、社会現象化している学力低下の課題を払拭し、確かな学力の定着に寄与することにある。
そのため、基礎計算力を確実につけるため、類似問題をたくさん解いて自信につながるよう、工夫した。
また、第2のねらいは、脳科学の分野で提唱されている「簡単な計算を出来るだけ速く解くことにより、脳の前頭前野部が鍛えられる」とか、「軽度発達障害児の対応として、日常的に簡単な計算を行うと脳が活性化する」、「前頭前野を鍛えれば、キレる子ども達が減る」という理念を検証するため、完成後は学校や高齢者福祉施設で活用いただくよう働きかけることを共通理解した。
「完成した計算ソフト画面」 「動画を取り入れた最初の画面」
U 計算ソフトの特徴
このソフトは、小学校1年生として「数の概念」の問題を5コース、小学校全学年用として計算問題を26コース、また中学校全学年用に数学の計算問題を25コースに分類し、小・中学校で学ぶ9年間の計算力について、一貫性をもった教材として開発した。
そして、各コースの設問量は、基本的に各20問とし、その一つの問いを数字や絵をランダムに換えることにより1000シートから選択できるよう作成し、類似問題を何度でも挑戦できるよう考案した。
とりわけ、四則計算の基礎になる小学校計算コースは、計算力を培う上で最も重要な内容であるので、20問以外に50問、100問の設問を用意し、各自で学習量を選択できる仕組みを整えた。
他に、小学校の計算問題でつまずきの多い分数や小数の四則計算や、中学校の因数分解や方程式の問題等には「ヒント画面」を設け、解き方を示し、算数・数学が楽しく学べるよう補助画面をつくり出した。
更に、1次関数についても、そのグラフがイメージできるよう、図によるヒント画面を設けた。
また、1秒でも速く正確に解きたいという意欲に応えるため、各問題を解いている時間を画面上に「所要時間」として表示できるよう作成した。また、全てを解き終えたあと、トータル時間も表示出来るようにし、やりがいを感じ取れるよう工夫した。
最後に、正解できなければ次の問題に進むことが出来ないように作成し、かつ正解すれば瞬間的に○印で大きく表示するよう開発した。
「計算ソフトのねらい」
「キャラクター入り画面」
「使い方の説明画面」 「計算の全コース」
V 「おの計算ソフト」インストールの手順
CDを挿入する。
マイコンピュータを開く
CDが入っている「おの計算検定パソコン版」のアイコン上で右クリック→開くをクリック
ソフトを入れるドライブを選択 Cドライブ c
Dドライブ d
*この説明では、Cドライブを選択しています。
解凍をダブルクリック
はいをクリック
約30秒から1分でインストールが完了します。
ソフトをインストールしたフォルダをダブルクリック
「おの計算検定パソコン版」を開く
このショートカットをデスクトップにコピーして貼り付けてください。
デスクトップに貼り付けたアイコンをダブルクリックすると、計算ソフトが開きます。
W 小学校1年生「かずのひろばコース」
より楽しく、より正確に、より速く解き、楽しく学べるようにするため、次の5点に配意して作成した。
(1)小学校1年生用に「かずのひろばコース」を設け、数の概念を楽しく確実に理解させるため、「いくつかな?(10より小さい数)」「なんばんめ?」「どちらがおおきい?」「いくつといくつ?」「いくつかな?(10より大きい数)」の5種類に分類して、数の概念をマスターさせるソフトを研究した。
(2)絵や図を多く用い、カラー版として仕上げて興味付けになることをねらう。
(3)本市に相応しいキャラクターや関連する図案を多く取り込み、意欲を高めようとした。
(4)ゲーム感覚で学べ、家族でコミュニケーションが高まるよう仕組んだ。
(5)タイム計時が表示できるように開発し、達成感が目で感じ取れるよう努めた。
このコースは、子どもから高齢者まで、家族みんなで取り組める楽しい教材となって完成した。
「かずのひろばコース」 「いくつかな?」
「なんばんめ?」 「どちらが大きい?」
「いくつといくつ?」 「いくつかな?(10より大きい数)」
X 小学校全学年「算数計算コース」
小学校全学年用の計算問題については、「計算20問コース」「計算50問コース」「計算100問コース」の3コースを設定し、各コースに学校で学ぶ「たしざんとひきざん」から「分数のかけ算、わり算」に至る26種類の計算問題を全て網羅した。
特に、分数や小数の計算問題でつまずく児童が多いこともあり、ここではヒントキー(H)を設けて解く方法を示しながら自ら学習できるよう、画面に工夫を入れた。
このことは、一人で学ぼうとする不登校児童や発達障害児の学びを的確に補助することになり、関係する多くの児童の学習支援策となりうるものである。
東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授は、簡単な計算を一日5分間するだけで脳が鍛えられ、学力と豊かな心があ培われると説いておられ、この計算ソフトの開発が児童生徒の確かな学力の定着に寄与できるものと期待できる。
「計算20問コース」 「計算100問コース」
「Hキーを使わない分数の計算問題」 「Hキーを使った分数の計算問題」
「Hキーを使わない小数の計算問題」 「Hキーを使った小数の計算問題」
Y 中学校全学年「数学計算コース」
中学校数学の計算問題では、「数学コース」として「正・負の数の加法、減法1」から「平方根」の26種類に分類して作成した。
数学の計算力を培うことは、数学を好きにさせる基盤であるため、楽しみながら学べるよう、ヒント画面の出し方に配慮しながら完成させた。
特に苦労したのは、数学嫌いになりやすい一次関数のヒント画面であり、最終的にグラフの様子が理解できるようイメージ画面を設けることにより完成させた。
数学の苦手な子や不登校生徒、また別室学習をしている生徒たちに、是非取り組んで欲しいと願っている。
「中学校計算問題の分類」 「加法減法」
「連立方程式ヒント画面」 「一次関数ヒント画面」
「平方根のヒント画面」 「自己記録の整理前画面」
Z 計算ソフトの活用
作製したソフトは、当初の計画どおり市内幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校のほか、認知症予防に役立つとの考えから、市内高齢者福祉施設やコミセン等の公共施設に寄贈した。
また、試作品を学校に配付したところ、既に市内教職員から次のような反応が届いており、概ね計算ソフトは、効果的に活用できる見込みがある。
(1)内容別、段階別に整理されているので、能力に応じて、達成感を味わいながらマスターできるところがいい。
(2)簡単な計算を速く解くという点で脳の活性化に効果的だ。自己成績も表示され、目標が持てて良い。特に、低、中学年は意欲的に取り組んでいる。
(3)1学年下の問題に挑戦すると、反応が速く、より意欲的に取り組んでいる。
(4)広汎性発達障害等の特別支援教育対象児童生徒の指導に役立つ。
(5)個人の名前で登録ができ、子ども達の達成感も目で見えるのでよい。
(6)子どもたちは喜んで取り組め、パソコンの使い方にも慣れるのでよい教材である。
(7)自学で学習できるし、分かりやすいソフトなので集中してできる。
(8)子ども同士、タイムを競い合いながら挑戦しており、授業でも活用できる。
(9)教師が楽しんで挑戦できたので、子ども達も喜んでチャレンジすると思う。
(10)正解するまで何度でも挑戦できるシステムがよい。
(11)現在、九九を学習している子どもには、とてもよいソフトである。
(12)不登校生の別室指導で活用してみると、大きな関心を示した。
(13)間違えると、次の問題に進めないので、生徒の探究力が生まれている。
(14)日々活用すると、確実に子ども達の意欲が増していると感じる。
(15)授業で活用できるネットワークソフトがあれば、活用できやすい。
完成した計算ソフトは、各学校にほぼ正常に受け入れられ、「次はネットワークソフトの開発を」というニーズに応えるため、今後改良を加えて供給したい。
「計算後のタイム表示画面」
(協力者) 兵庫県小野市教育委員会
学校教育課長 服 部 公 一