環境保全意識と実践力を培うリサイクルゲーム教材の開発と実践
ソフト名:「リサイクルアクションゲーム」

代表者  井門正美(秋田大学、教授)

 

要約

 本研究では環境保全意識を育成するための討議型と疑似体験型のコンテンツ・ゲームを作成した。前者は3R(Reduce、Reuse、Recycle)から「Refuse」を加えた4R型の循環型社会への転換を図るための紙芝居をFlashコンテンツ化したものである。より楽しく見られるように動きを入れ、また、音声もつけることにより自習を可能にした。後者はごみの分別ゲームである。ある地域の分別に従い、提示されるごみを分別するものである。単純に分別するだけではなく、リサイクルの観点を取り入れ、リサイクル可能なものはリサイクルをしなければ誤答となるようにしている。また、スプレー缶は穴を開けガスを抜くなど廃棄・リサイクルに際して行うべき処理も取り入れ、正しい処理方法も学ぶことも試みている。データは地域ごとの分別に対応できるように柔軟な構造をもち、インターネットにおける親和性の良いXMLを用いた。

 

1.はじめに

本開発研究では次の二つのコンテンツ・ゲームの作成を行った。
(1)アニメーション紙芝居「リサイクル学習 −4Rを探る−」
(2)ごみ分別ゲーム
前者は討議型であり、後者は疑似体験型のコンテンツである。

2.ソフトウェア開発の概要

本ソフトウェアは次の方針で開発を行った。

(1)開発はFlashで行う。
このソフトウェアは学校教育の場だけではなく、一般に広く利用されることを考えている。そのためにスタンドアロンの環境とともにネットワーク環境でも利用できることが必要である。また、アニメーションを含めることにより、動きのある楽しいゲームとすることも考慮し、それらが容易にできるFlashにより開発を行った。
(2)データの形式としてXMLを利用する
ごみ分別ゲームは幾つかの地域で利用されることが考えられるが、それぞれの地域でごみの種類の名称や分別法は大きく異なる。そこで柔軟なデータ構造を必要とするが、データの定義も明確にする必要がある。更にデータ作成を学習する地域の人がおこなえることが望ましい。これらの条件を満たし、インターネットでの親和性の高いものがXMLである。
XMLはExtensible Markup Languageの略で文書構造やデータ構造を記述するマークアップ言語である。HTMLと同様にタグで記述される。また、タグは独自に定義することができるので柔軟ノア構造の定義が可能となる。またマークアップ言語なのでファイルそのものはテキストファイルである。
このXMLの導入により、インターネットを通じたデータの流通および再利用が可能となる。

3.アニメーション紙芝居「リサイクル学習 −4Rを探る−」について

 このコンテンツはネット上でリサイクルに関する専門家の議論を学習者にも体験させるものである。それを実現するために議論を紙芝居風に仕立てて親しみやすくした。初期画面は図1のようになっている。
おおよその説明の流れは次のとおりである。まず、問題を提起し従来の3R(Reduce、Reuse、Recycle)から循環型社会への転換を図る「Refuse」すなわち必要でない包装などの拒否、更に修理の「Repair」にまで概念を広げていく必要性を説明して、議論を助けるものである。
原作は・・・・である。
このコンテンツの流れはおおよそ次のとおりである。まず、3Rについての確認を行う。次にRefuseを加えて4R(更にRepairを入れて5R)という概念に導く。それは循環型社会において最も根幹の考え方であることに気付かせる。そして、4Rのリサイクル活動は他人まかせではなく、自主的活動でなければならないことを強調する。おおよその画面構成は図2のようになっている。解説は文字情報だけではなく、ナレーションも入れているので、自学することが可能である。

図1ネット討議型コンテンツの初期画面

図2.コンテンツの主な流れ

4.ゴミ分別ゲーム

疑似体験型のゴミ分別を体験するゲームを開発中である。このゲームでは単にゴミを廃棄する際の分別のみではなく、リサイクル・リユースの観点も導入し、リサイクル・リユースできる場合にはそれを正解とする。
このゲームはネットワーク上で実行することを考慮し、Flashアプリケーションとして開発を行った。ゲームの実行画面は図3のようになっている。

図3.ゲームの画面

ゴミの画像と材質特徴が提示され、そのゴミの種別と事前の処理をマウスによって選択する。その後、処理のボタンをクリックすると結果が表示される。この際、リサイクルの持ち込み先も指定することができ、リユースできる場合にはこれを選択する。結果の表示は×○と「ゴミとして処理して良いのかな」というメッセージが提示され(図4)、丸以外は再度解答を行う。1問は20秒以内に答えなければならないようにしている。問題が終了したら、正解率が表示される。


データとしてはゴミ種別、事前の処理、リサイクル・リユースの持ち込み先と出題するゴミに関するデータが必要である。ゴミに関するデータとは、そのゴミの名称、材質、特徴、画像ファイル、その地域での種別、ゴミに出す前に行う処理、リサイクル・リユースが可能ならばその方法が記述されている。この中でゴミ種別、事前の処理、ゴミに関するデータは地域の分別方法に依存する。そこでこれらのデータの記述にはXMLを用いて、インターネット上でのデータ交換や再利用に考慮した。
データは次の四つのものからできている。
@ゴミ種別のデータ(dustbin.xml)
対象とする地域におけるゴミの種別のデータが必要である。これを定義するためのデータファイルのXMLの構造は次の通りである。ルートタグとしてdustbinを付加し、大きな種別ごとにdataタグで
記述する。その種別名をtypeタグで記する。更にその中に区分があればkindタグを用いて、その区分を列記する(図5)。
Aリサイクル方法のデータ(recycle.xml)
リサイクル方法についてであるが、これについても表現やリサイクルに対する考え方の変化に柔軟に対処するために、別のデータファイルで定義することとした。そのXML構造は図6の通りである。リサイクルのために持ち込むところをdataタグで記述していくものである
B前処理データ(pretreatment.xml)
更に、このゲームにおいては廃棄前又はリサイクル前に行なうべき処理まで取り入れている。その処理も地域によって異なる。例えばペットボトルの蓋などは地域によってプラスチックゴミとして廃棄するのか、燃やせるゴミとして処理するのかなど異なっていることがある。従ってこの部分も独立のデータファイルを用意する。このデータのXML構造は図7の通りである。dataタグでそれぞれのデータと記述していく。
Cごみデータ(rubbish.xml)
ゴミに関してもその廃棄法は地域によって大きく異なる。それぞれの地域の廃棄方法およびそれをリサイクル可能であればリサイクルする方法をこのデータで記述する。XML構造は図8の通りである。rubbishタグがルートタグとなり、dataタグでゴミ一つを記述する。url属性でゴミの画像ファイルを指定し、name、material、characterタグでそのゴミの名称、材質、特徴を記述する。disposalタグを使ってゴミとして処理する場合を指定する。その子ノードpreparation、type、subtypeで前処理、地域でのそのゴミの分別区分と分類を記述する。もし、リユース・リサイクル可能である場合にrecycleタグを挿入し、その子ノードとしてpreparation、typeタグで前処理と持ち込み先を記述する。
なお、これらのデータファイルの文字コードはUTF-8である。

図5.ゴミ種別のデータのXML構造

図6.リサイクルデータのXML構造

図7.前処理データのXML構造

図8.ゴミデータのXML構造


本研究で作成したゲームは秋田県秋田市と愛知県碧南市の分別についてである。秋田市はプロジェクトのメンバーの勤務地であり、また、高性能の焼却炉があるため比較的分別が緩やかである。碧南市は徹底した分別で知られており、27通りの分別を行なう。この比較は興味深いものである。
加えて対象を中学校以上と小学校向けの二種類を用意した。ただし、材質や種別の名称が比較的難しいものがあるので、低学年では無理と判断、小学校3年生以上で読める漢字で記述を行なっている。そのため、計4種類のデータを作成した。それぞれ文字数が大きく異なるのでゲームのレイアウトを若干調整することが必要であった。

5.ゲームの利用方法

 このゲームは全てFlashで作成しており、Flashプレーヤー(7以上)を必要とする。ブラウザとしてはInternetExplore6.0、FireFoxで動作を確認している。CD-ROMのindex.htmlをブラウズする(図9)。この画面にそれぞれのコンテンツへのリンクが張られている。分別ゲームのいずれかを選択すると、説明のページ(図10)が表示され、その画面で分別の方法などを学習・確認できる。その後、ゲームへのリンクをクリックしてゲームを始めることになる。紙芝居のコンテンツに関しては図9の一番下のリンクをクリックすれば開始する。
このゲームは突然プレイしても回答困難な部分が多い。また、学習という観点から見ても十分に学習した上で行なうことが望ましい。従って、図10のページでは各市のページをリンクし、分別の種類を確認できるようにしている。また、あらかじめ答えを用意している。何故なら、廃棄、リサイクル前の処理は幾つか同時に行なうものがある。例えばペットボトルではキャップがあればキャップを廃棄し、中を洗うといったことである。このゲームの場合、その処理は一つのみとなっているので、どれをとったかを提示しておく必要がある。リサイクルの方法も考え方が幾つかあるものもある。従ってあらかじめ答えを提示することとした。
ゲームの操作については図10のゲームの説明にPDFファイルへのリンクが張られているのでそれを参照していただきたい。

図9. トップページ

図10. 分別ゲームトップページ

 

参考資料


Extensible Markup Language (XML)  http://www.w3.org/TR/2006/REC-xml-20060816/ .
松村慎,原一浩, FLASH8, 翔泳社 (2006).
秋田市 家庭から出るごみの分け方一覧表 http://www.city.akita.akita.jp/city/ev/tr/wakekatatop.htm
碧南市 ごみの分け方・出し方 http://www.city.hekinan.aichi.jp/KANKYOKA/annai1.htm