楽しみながら英語表現の定着を図る小学校英語活動ゲームソフトの開発と評価

〜それぞれの学校の素材パーツを組み込めるカスタマイズ機能を付加して〜

 

 

岡山県小学校英語活動研究会/岡山市立西小学校   藤井 佐代子

 

目次

 

要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

2 開発の方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

3 ゲームの説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

(1)           Let’s go abroad!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

(2)           Guess what?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

(3)           Shoot the balloons・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

4 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しみながら英語表現の定着を図る小学校英語活動ゲームソフトの開発と評価

〜それぞれの学校の素材パーツを組み込めるカスタマイズ機能を付加して〜

 

 

岡山県小学校英語活動研究会  藤井 佐代子

 

要約

 

小学校英語活動は,英語でのコミュニケーション活動への関心・意欲・態度を育てることにねらいがある。コミュニケーションの意欲を高めるには,ある程度,英語表現を身に付けておかなければならない。そのためには,学習した言語表現の定着を図ることが不可欠である。しかし,現在の英語活動では,語学習得に必要な,学習した言語素材を繰り返し聞いたり,注意深く聞いたりする練習が不足している。

そこで,本研究では,英語表現を定着させることを目的として,言語素材を繰り返し聞いたり,注意深く聞いたりする練習を児童が楽しみながらできるように,小学校英語活動用のゲームソフトを3本開発した。その一つには,各学校の素材パーツ(授業で使うイラストやALTの発音などを)を容易に組み込めるカスタマイズ機能を付けた。

開発した3本のゲームの概要を次に示す。

 (1)Let’s go abroad!

“Where is 国名? ”の問いかけの発音を聞き,学習者は,世界地図の中から,該当する国をクリックする。

 (2)Guess what?

画面上に登場する女の子が,博士に英語で三つの簡単な質問をして,博士がそれに答える。学習者はそのやりとりを聞き,該当する動植物がどれか予想をして,クリックをする。

(3)Shoot the balloons

画面上に,各教科を表すアイコンが情報から降りてくる。“I like 教科名.”と発音されるので,学習者は発音をよく聞き,該当する教科のアイコンをクリックする。

 


勤務先 岡山市立西小学校

 

 

1 はじめに

現在,ほとんどの小学校で総合的な学習の時間に英語活動が行われている。しかし,その実施時数は限られているため,学習した言語素材を用いて児童がコミュニケーションを行う能力の育成までには至っていない。これは,語学習得に必要な,学習した言語素材を繰り返し聞いたり,注意深く聞いたりする練習が不足しているためだと考えられる。そこで,本グループの教師らは,習った英語表現の定着を図るため,授業の中にコンピュータを取り入れ,ゲーム的な要素を取り入れたソフトにより,言語素材や表現に慣れる機会を増やしている。

そのような工夫をしていたところ,平成17年1月に,聖心女子大学の永野和男教授に英語活動の授業を参観していただく機会を得た。この授業では,はじめに,様々な職業名の言語素材を学習した後,ALTからの,“What do you want to be?”という問いかけに対して,“ I want to be .”と答えを返す英語活動を行った。その後,一人一台のコンピュータを活用し,ゲーム的な要素のあるソフト(画面上から落ちてくる様々な職業の画像の中から,発音された職業名を聞き取り,該当する画像をクリックして得点を競うゲーム),を用いて英語表現の定着を図った。授業後の反省会で,永野教授からゲームについて次のような御指導をいただいた。

     授業の前半で,各職業名を学習するのに使ったイラストと,後半のゲームの中に出てくるイラストが異なっていた。両者は一致していた方がよい。理由は,小学校の英語活動では,英文字は扱わないので,職業を表すイラストを見た瞬間,その発音が浮かんでくるように練習した方がよいからだ。

     児童が,ゲームの中で誤った画像をクリックしたとき,その誤った方の画像の発音が再生されるだけでなく,正しい方の発音も出るようにしておき,発音を聞く機会を増やせばよい。練習用のコンテンツでは,学習成果を確認するものと違い,そういった機能が求められる。

     授業の前半で使ったイラストやその学校のALTが発音した音声素材(これらを「素材パーツ」と言う)を用いてゲームができるように,素材パーツだけを交換すれば,ゲームになるような機能を付けたものを開発してはどうか。

そこで,永野教授の助言を受け,英語表現を定着させることをねらいとして,各学校の素材パーツ(授業で使うイラストやALTの発音などを)を容易に組み込めるカスタマイズ機能のついたゲームソフトを開発しようと考えた。児童はこのゲームを用いて,楽しく英語表現を定着させることができると考えた。

 

2 開発の方針

現在,小学校英語活動や小学生向け英語学習ソフトが数多く市販されたり,インターネット上に公開されたりしている。それらのソフトは,確かに優れてはいるが,自分たちの授業の文脈にうまくマッチするものが少なかった。例えば,自分が授業で扱いたい言語素材がそれらのソフトの中には含まれていなかったり,逆に,必要のない英語表現が含まれていたりする場合などである。

一方,各学校ではALTの発音が入ったオリジナルのソフトが作られ,共有が図られているが,これらも他の学校では活用しにくい。それは,あくまでの他の学校の教材であり,児童には親しみが湧かないからである。

そこで,本研究では,授業で使うイラストの画像やALTの発音の音声ファイル等を素材パーツとして入れ替え,その学校にカスタマイズできる機能も開発するゲームの一つに付加する。開発するゲームは,英語表現を定着させることをねらいとして,Lets go abroad!」「Guess what?」「Shoot the balloons」の三つのタイプのゲームを開発する。これらのゲームの開発に当たり,次のような方針を立てた。

(1) ゲームには,授業で使ったイラストやその学校のALTの発音が出てくるので,児童にはとても親しみが湧く。

(2) ゲームをしながら,児童は注意深く何度も言語素材の発音を聞き,発音に慣れることを通して,英語表現の定着が図れる。

(3) 教師は,授業の前に素材パーツを容易に組み込み,カスタマイズされたソフトを使って授業が展開できる。

3 ゲームの説明

(1)       Let’s go abroad!

     概要

     “Where is 国名? ”の問いかけの発音を聞き,学習者は,世界地図の中から,該当する国をクリックする。

     動作

     このゲームで扱う国は,Japan, South Korea, China, India, Australia, Brazil, US, Canada, Egypt, UK10カ国である。

     図1に示すように,世界地図が中央に表示される。

     それぞれの国の特徴を表す服を着たキャラクターが左側に表れる。

     キャラクラーが,“Where is 国名? ”と問いかける。

     学習者は,キャラクターが発音する国の地図上の位置をクリックする。1回目で正解だと,ポイントが3点加算される。

     1回目のクリックで誤っていると,“No, it’s not.”と音声が再生された後,再び,“Where is 国名? ”と問いかける。

     2回目で正解だと,ポイントが2点加算される。2回目のクリックで誤っていると,“ It is in the Asia.”などとヒントが出された後,再び,“Where is 国名? ”と問いかける。

     3回目で正解だと,ポイントが1点加算される。4回目以降のクリックで正解しても,ポイントは加算されない。

     10問解答したした後に,図2のように加算された得点が表示される。


図1 ゲームの画面

図2 得点の表示


○ カスタマイズ機能

 図3に示すように,エクスプローラの機能を用いて,ALT“Where is 国名? ”と問いかける発音が収録された音声ファイルをsoundフォルダの中に入れておけば,ゲームの中で再生されるようになっている。また,デジタルカメラでALTの顔写真等を撮影し,その画像ファイルをpictureフォルダに保存しておきさえすれば,ゲームの中に適当な画像サイズで右下の部分に登場するようにしている。


図3 カスタマイズ機能

(2)   Guess what?

     概要

画面左下に登場する女の子が,博士に英語で三つの簡単な質問をして,博士がそれに答える。学習者はそのやりとりを聞き,該当する動植物がどれか予想をして,クリックをする。

     動作

     図4に示すように,九つの動物や植物が中央に表示される。

     スタートボタンを押すと,女の子が質問の第一問を始める。例えば,“Is it a fruit?” などと質問し,博士が“Yes, it is.” あるいは“No, it is not.”で答える。

     博士の回答の後,クリックすると,“It’s too quick.”

とKRが返ってくる。

     質問の第二問についても同様に博士が答える。回答の後,クリックすると,“Not yet.”とKRが返ってくる。

     第三問を聞いてから,1回目のクリックで正解だと,3ポイントが加算される。2回目のクリックだと2ポイント,3回目だと1ポイントが加算される。

     10問解答したした後に,図5のように加算された得点が表示される。


図4 ゲームの画面

図5 得点の表示

 

(3)Shoot the balloons

     概要

画面上に,各教科を表すバルーンのアイコンが上方から降りてくる。“I like 教科名.”と発音されるので,学習者は発音をよく聞き,該当する教科のアイコンをクリックする。

     動作

     ゲームは五つのステージからなっている。スタートボタンを押すと,図6のように,まずステージ1から始まる。

     学習者は,“I like 教科名.”の発音を聞き,図7のように,上方から降りてくる教科目のバルーンアイコンから該当するものをクリックする。

     正しいアイコンをクリックすると得点が加算され,間違っていると減点される。


図6 ゲームの画面

図7 プレイ中の画面

 

4 おわりに

 本研究では,英語表現を定着させることを目的として,言語素材を繰り返し聞いたり,注意深く聞いたりする練習を児童が楽しみながらできるように,小学校英語活動用のゲームソフトを3本開発した。数人の小学生を対象として,開発したゲームを試用したところ,児童は楽しそうにゲームをプレイし,発音される音声を聞き逃さないように集中している様子が観察された。今後は,多くの小学校に開発したゲームを提供し,活用を呼びかけていく予定である。

 

研究協力者

田辺 晴之,岡山市立津島小学校,教諭

 藤田 雅子,岡山市立芥子山小学校,教諭

才田 文子,岡山大学教育学部附属小学校,講師

佐々木 弘記,岡山県教育センター,指導主事

小寺 邦彦,岡山県教育センター,指導主事(主任)

巖谷 忠明,岡山大学,学生

 森井 強,プログラマー