開発研究テーマ
「 算数学習ソフト『演劇で算数』 」
代表者名
糸井 登
目次
要約・・・・1
1.「演劇で算数」の目指すもの・・・・2
@小学校の教室での実態から
Aまず、楽しいということ
2.「演劇で算数CD版」ができるまで・・・・4
@CD化することのメリット、デメリット
A会議を重ねる中で
3.これからの「演劇で算数」が目指すもの・・・・6
@教室でのプロジェクター活用などを視野に入れて
Aプリント学習をアニメーション化していく必要性を感じつつ
開発研究テーマ
「 算数学習ソフト『演劇で算数』 」
代表者名 京都府宇治市立平盛小学校 糸井 登
要約
算数の学力低下が声高に叫ばれている現在、学校現場において、子ども達の基礎基本の定着は切実な問題となっている。
そのために、計算練習の反復練習などの必要性が説かれているが、現場で問題になっていることに「子ども達の算数離れ、関心意欲の低下」ということがある。
算数の問題を見ただけで拒否反応を起こす子ども達、与えられた公式に当てはめることはできるが、内容を詳しく考えることのできない子ども達等々、問題は深刻なのである。
そこで、私達が考えたのが、算数の学習の導入部分に、演劇を取り入れるという方法である。まず、算数の世界に子どもたちを引き入れる。そして、子どもたちの考えを引き出していきながら、算数のテキストを含めた演劇を進めていくのだ。
子どもたちが、まず、楽しく算数に向き合える状況を作り出す。そういう状況を作り出しつつ、計算練習の反復練習なども取り組んでいくことが必要なのではないかと教室の実態から考えた次第である。
今回、考えたのは、演劇部分をコンピュータ版にしてしまえないかというでした。ただ、見るだけならビデオでもいいのだろうが、コンピュータ版にこだわったのは、双方向性を持たせることができるという点にある。ただ、見るだけでなく、自分で選択、操作できる部分を取り入れていきたいということである。
2005年からは、小学校の各教室に、プロジェクターとコンピュータが設置されると聞いている。プロジェクターを使って大きく投影できれば、演劇部分もかなりインパクトのあるものに仕上がるのではないかと思えたのである。
実際の制作に当たっては「リアル感」「児童が楽しめる完璧なシナリオ」「参加型」という三つのキーワードを大切にしていったつもりである。
プロジェクターが、どの教室でも活用されることを視野に入れて、今後も研究を進めたい。また、プリントも映像として映し出すことを考え、今後は1単元全てをプロジェクターを使って授業していけるようなソフトにしていくことを目標としたい。
1.「演劇で算数」の目指すもの
@小学校の教室での実態から
算数の学力低下が声高に叫ばれている現在、学校現場において、子ども達の基礎基本の定着は切実な問題となっている。
そのために、計算練習の反復練習などの必要性が説かれているが、現場で問題になっていることに「子ども達の算数離れ、関心意欲の低下」ということがある。
算数の問題を見ただけで拒否反応を起こす子ども達、与えられた公式に当てはめることはできるが、内容を詳しく考えることのできない子ども達等々、問題は深刻なのである。
そこで、私達が考えたのが、算数の学習の導入部分に、演劇を取り入れるという方法である。まず、算数の世界に子どもたちを引き入れる。そして、子どもたちの考えを引き出していきながら、算数のテキストを含めた演劇を進めていくのだ。
子どもたちが、まず、楽しく算数に向き合える状況を作り出す。そういう状況を作り出しつつ、計算練習の反復練習なども取り組んでいくことが必要なのではないかと教室の実態から考えた次第である。
Aまず、楽しいということ
4月、子どもたちに「好きな教科・嫌いな教科」といった簡単なアンケートをとってみた。好きな教科の第1位は「体育」、嫌いな教科の第1位は「算数」であった。「算数」を嫌いと書いた子どもの数は9割を超えていた。ダントツの第1位だったのである。
そんな中、6月に「演劇で算数」をスタートさせた。多目的室を芝居小屋に想定し、子ども達には、「演劇鑑賞会と紹介する。事前にチケットを配る。」などして、「算数の授業」という感覚をなくして実施してみた。
事後の子ども達の感想には「楽しかった。また見たい」との声が全員から寄せられていた。
ただし、事後研では、様々な意見が出された。その中で、次の課題と考えたのは「この演劇が次の時間の授業へ、どのようにつながっていくのか。たんなるイベントに終わってしまうのではないか。」といった意見であった。
この後、試行錯誤しながら、演劇を導入部分に取り入れた算数の授業を展開していた。その結果、3月に子どもたちに書かせた「思い出・年間ベスト5」に、運動会や林間学習などの行事とともに、堂々「演劇で算数」が入ったのである。
以下、子どもたちが、最後に劇団の方に送ったお礼の手紙を紹介する。
一昨日の「円」についての劇は、すごく面白かったです。デビーのランドセルがすごく小さく見えて笑ってしまいました。 劇を見て勉強する方法になってから、私は、春とくらべて「勉強の楽しさ」っていうのを実感した気がします。プリントも楽しくできて、とってもよかったです。 今まで、算数の教科書なんて、面白くなくて見たこともなかったけど、プリントにしてもらうと、ストーリーがあって、読んでいても楽しいです。 これからも、私は劇団衛星さんの劇を見ながら、楽しく勉強を進めたいです。 |
試行錯誤する中で、算数の導入部分の内容を演劇で勉強し、その後の内容は、劇の続きのストーリーを組み入れたプリントで進めていくという方法をとるようになった。以下、実際に使用したプリントを一枚紹介する。
このように、演劇、そしてストーリー性のあるプリント学習へと続けていくという一定の方向性が見えてきた段階で、次の課題として捉えたのが、どのようにして他の学校へと広げていくかという点であった。
そこで、考えたのが、演劇部分をコンピュータ版にしてしまえないかということだった。ただ、見るだけならビデオでもいいのだろうが、コンピュータ版にこだわったのは、双方向性を持たせることができるという点にある。ただ、見るだけでなく、自分で選択、操作できる部分を取り入れていきたいということである。
2005年からは、小学校の各教室に、プロジェクターとコンピュータが設置されると聞いている。プロジェクターを使って大きく投影できれば、演劇部分もかなりインパクトのあるものに仕上がるのではないかと思えたのである。
早速、千葉大学の藤川大祐先生に、相談し、藤川研究室の学生の協力を得て、試作版を作成していただくことにした。また、コンピュータ版では、実際の演劇で取り入れている教師のヒントといったものを組み入れられないので、ヒントカードのようなものの可能性を探るべく、ヒントカードの試作版を阿部隆幸先生(福島県大村小学校)にお願いし、作成していただいた。これらは、以下のサイトで見ていただくことができる。
*「動画試作版」 http://www3.to/mathpro
*「ヒント試作版」 http://www.abetaka.jp/flash/jacky-test.html
このような研究を進めていく中で、地元の「京都新聞」にも、大きく、「演劇で算数」の取り組みを紹介していただいた。以下が、その記事である。
2.「演劇で算数CD版」ができるまで
@CD化することのメリット、デメリット
今回、「演劇で算数コンピュータ版」を作成するにあたって、まず、考えたことは、そのメリット、デメリットということであった。
いうことであった。
コンピュータ版にすることのメリットとは何だろう。
それは、どの小学校でも「演劇で算数」を取り入れた授業が可能になるということである。
では、デメリットとしてはどんなことが考えられるだろう。
まず、リアル感がなくなるのではということであった。更に、子どもたちの様子を見ながら臨機応変シナリオを変えていくということができなくなるということ。もう一つは、参加型の演劇という点が活かせなくなるということであろう。
つまり、「リアル感」「完璧なシナリオ」「参加型」。この三つの課題を何とかクリアしていきながら、どの小学校でも楽しく使えるコンピュータ版を作成していくことを考えた。
A会議を重ねる中で
まず、「完璧なシナリオ」を作るために、いろんな学校で「演劇で算数」を実施し、子どもたちの反応を見ることが必要であると考えた。
そこで、千葉大学の藤川大祐先生のお世話になり、千葉市内の二つの小学校(千葉県旭市立富浦小学校・千葉県旭市立琴田小学校)で、「演劇で算数」を実施してみることにした。
どちらの小学校でも、子どもたちの反応は上々で、楽しい授業が展開された。その後の授業でも、私が作成したプリントを使用していただいたが、特に問題なく、授業を進めていただくことができたようだ。
このことから、シナリオ作りは、本校の児童の様子を見ながら作成していけば、他の学校でも同じように楽しく展開していけるという確信を得ることができた。
次に、シナリオ作りについて、様々な先生の意見をいただくために、8月の「授業づくりネットワーク千葉」に参加し、約100名の先生方の前で、今回CDに収録した6年生・体積の「演劇で算数」を上演した。
先生方からいただいた意見は大きく二つあった。
一つは、「教師が演劇に入る意味を明確にすること」であった。学校で行ってきた「演劇で算数」では、担任教師も演劇に出演してきた。その意味は、大きく二つあった。
一つは、担任が入ることで、子どもたちがより興味を持って演劇を見ることができるのではないかということ。
もう一つは、担任が入ることで、子どもたちのやりとりの中で、臨機応変に、算数としての説明を入れたり、子どもの状況を見て指名したりできるということである。
しかし、今回、先生方を相手にした「演劇で算数」であったため、これら二点の必要性が弱くなってしまったのである。しかも、やはり素人が演劇に入るということで、演劇の質を低下させるというデメリットも見えてきたのである。
この意見から、コンピュータ版では、予想される児童へのヒントなどを組み入れておき、劇団の方のみで演劇を作っていった方がいいのではという方向性が見えてきた。
もう一つの意見は、子どもたちを演劇に参加させる場合、意見を言うだけでなく、具体的な活動を取り入れた方がいいのではないかという意見であった。
せっかく目の前で劇団の方が体を使って話を進めているのだから、できれば子どもたちも前に出て、実際に測ってみるとか、数えてみるなどといった活動ができた方がいいという意見である。
この意見については、実際に、コンピュータ版を使う場合の方法として、反映していこうとという確認をした。
これらの意見をもとにして、実際に、「リアル感」のある映像を、どのようにして撮っていくかを話し合った。当初、学校で実施する「演劇で算数」をビデオで撮り、それを編集するということを想定していたが、それでは到底リアルな画像は撮れないことを確認。
スタジオを借りて、ブルーシートの前でカットごとに撮影し、後でバックを合成したり、より楽しめるように編集していくことにした。
また、参加型のものにしてくために、問題部分を作り、実際に子どもたちが、答えを選択し、クリックしていけるようなものにしていくことにした。また、実際の「演劇で算数」では、子どもたちが答えられない時に、教師がヒントを出していくようにしていたので、代わりにヒントカードが出てくるように作成していことにした。
以上のような経過を経て、仕上がったのが、「演劇で算数 6年・体積」である。
3.これからの「演劇で算数」が目指すもの
@教室でのプロジェクター活用などを視野に入れて
2005年には、各教室にプロジェクターとコンピュータが導入される。実際には、まだ本校には導入されていないが、教室にプロジェクターを運び込み、使用する機会は増えた。映像を大きく見せることだけでも、子どもたちの意欲は確実に高まることを実感している。今回、作成した「演劇で算数コンピュータ版」は確実に子どもたちの心を捉えるものだと思っている。
プロジェクターかがどの教室でも活用されることを視野に入れて、今後も、継続して研究を進めたい。
Aプリント学習をアニメーション化していく必要性を感じつつ
プロジェクターが導入されれば、現在、印刷して使用しているプリントも映像として映し出したい。簡単な動きや音声も取り入れアニメーション化を進めていけば、更に子どもたちが楽しんで学習に取り組めるものになるのではないかと考えている。
1単元全てをプロジェクターを使用して進めることのできるソフトにしていく必要性を感じている。