W.考 察 1.成 果 以上のように今回の実践は,3つのコンセプトのもと,学習計画を工夫し,3校の異学年で互いの企画について話し合う共同学習を行った。このことにより次の点が成果として挙げられる。 (1)問題意識の深まり 共同学習では,互いの企画をプレゼンテーションし,良い点や問題点の解決を共感的に話し合った。この共同学習により,学習に取り組んだ当初の「目の不自由な人はかわいそう」「盲導犬はすばらしい」という漠然とした意識から,「これならみんなで目の不自由な人に役立てる」という意識へと深めることができた。 (2)情報活用の実践力の高まり 本共同学習では,相手に自分たちの考えをわかりやすく伝え,一緒に活動に取り組んでもらうことが児童にとっての課題であった。 そのため,伝える順番を考えたり,図などを示したり,相手のことを意識して問いかけたりと,これまでの学習で養ってきた力(先行経験)を発揮してプレゼンテーションを行うことができた。 また,予め自分たちの企画に対する問題点を明らかにし,それに対する解決策を話し合って共同学習に臨んだ。このことにより,相手の質問に応じて自分たちの考えを伝えることができ,互いの企画を充実させることができた。 (3)共生意識の深まり 今回の学習は,前述の「例えお金が集まらなくてもいいんです。私たちは心を集めたいんです。」との発言が象徴するように,「盲導犬を増やして目の不自由な人に役立ちたい。」との意識をもち,深めていく活動でもあった。この意識は,中教審答申が「豊かな人間性」として示す,「様々な人と共に生きる心情」の表れであると考える。 また,三校の児童が連帯感をもったり,互いの考えを共感的に深め合ったり,互いの企画を参考にしたりして,それぞれの活動に取り組む姿も,「様々な人と共に生きる心情」の表れであると考える。 今回の「心・ネットワーキング」の実践は,映像や音声という情報をリアルタイムに送受信できるネットワークメディアを使って,互いに情報を発信し合い,相手の情報を自分たちの活動に生かす取り組みであったといえる。その意味で情報教育は,21世紀を生きる児童にとってますます重要な位置を占めてくると考える。 2.課 題 (1)対立する問題から共感的結論へ 今回は互いに共感的な立場で問題解決していく学習形態であった。今後は,今回のコンセプトのもと,対立する立場から共感的な結論に至る共同学習の在り方について小学校段階における学習ストーリーを設定し,検証していきたい。 (2)ネットワークメディアの整備 本実践ではネットワークメディアとして,Web検索,メール,テレビ会議システムなど,インターネットの様々な機能を活用した。 しかし,回線の速度の問題や,使用できるソフトウェアやインターネットのサービスなど,それぞれの地域が有する様々な制約が加わった。その結果として,テレビ会議における画像や音声の品質が落ちる結果となった。また,三校で同時に接続して協議しあう場面を設定することができなかった。これらはネットワークメディアの成熟に伴って近い将来実現可能であると考える。 <実施場所> 江東区立第三砂町小学校 江戸川区立南葛西第二小学校 江東区立数矢小学校 <参考資料> 平成11年度文部省調査研究委嘱 「新しいメディアに対応した教科書・教材に関する調査研究」 財団法人教科書研究センター 平成12年度文部省調査研究委嘱 「新しいメディアに対応した教科書・教材に関する調査研究」 財団法人教科書研究センター |