第1章 生徒に身につけさせたいプレゼンテーション能力

1.1 各教科で培われるプレゼンテーション能力

プレゼンテーション能力は各教科のいろいろな学習場面の中で培われる。特定教科の特定単元で扱われる能力ではない。相手に伝えたい情報に最も適した伝達手段を選択し、正確に情報を伝える努力が求められる。そこでは国語・数学・社会・理科・芸術・・・すべての教科の学習成果が実を結ぶ。各教科の学習の成果がバランスよく機能して、まとまりのあるプレゼンテーションとなる。
日々の学習活動の中で大切にしたいことの一つに、「表現力のたかまり」を挙げることができる。国語や美術・音楽をはじめとして、体育での創作ダンスによる身体表現や英語科のスピーチコンテストや模擬国連等の活動は、各教科学習の枠組みの中で「表現力のたかまり」を実現する成果をあげてきている。
生徒に求められるものは「プレゼンテーションのスタイルやスキル」の習得ではなく、表現力や説得力の工夫や実践力といえる。そのためには発表の場を少しでも多く設け、自己評価と相互評価による学習へのフィードバックを与えるシステム構築が求められる。
生徒のもつ表現力は未解発な部分がたくさんある。「うまく伝えたい」と思う気持ちは誰しもが持つ純粋な気持ちであり、「きちんと知りたい」という聞き手の気持ちを満たすプレゼンテーションがそれに応えてくれる。生徒の稚拙な発表も上手なプレゼンへの第一歩。プレゼンテーションの機会をなるべく多く設けることによって、「うまく伝えたい」と思う気持ちはどのようにすれば実現することができるのかが見えてくる。
また、優れたプレゼンに接する機会を持つことも重要で、教師がプレゼンテーターとしての技量を高めて置く必要がある。資料をどのようなスタイルで提示するか、表現の工夫として何が可能か、起承転結をふまえた口頭発表の準備ができているか等、教師が自ら生徒のよき手本となるべきである。

1.2 コンピュータを使ったプレゼンテーション

プレゼンテーション作品を制作する段階でコンピュータは大きな力を発揮する。文字情報・画像情報・音声情報を組み合わせたマルチメディア表現を実現しやすく、テキストを表示するときの効果や画面切り替えの効果、サウンド効果なども用意されているので、より効果的なプレゼンテーションが簡単に実現する。電子化されたデータの編集や再構成は短時間で効率よく行え、画面のイメージの印刷や配布資料の作成もごく短い時間と労力で完成する。別のスタイルでのプレゼンテーション資料への変換も容易であるという特性を生かして、統一感のあるまとまりのあるプレゼンテーションを実現することができる。技術革新による明るいデータプロジェクターの登場によって、室内の照明を落とさずに大画面に投影できる時代を迎え、コンピュータ利用のプレゼンテーションはいろいろな場面で用いられるようになった。周辺機器の接続や事前の準備も含めてリハーサルを重ねることが求められる。また、機器不具合等の不測の事態に備えて、代替手段を用意することも大切な指導ポイントとなる。
Webページで情報を発信し「自分の思い」や「目で見たこと・調べたこと」を伝えるといった表現活動もコンピュータを利用すれば実現する。こうした表現活動にコンピュータやネットワークを道具として活用し、資料提示発表の表現力と口頭発表の説得力の育成をはかる実践が各教科に期待される。
本プロジェクトのプレゼンテーション用の機器設置や操作は生徒で分担して行った。

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