家庭,地域連携の手段としての有効性(平成10年度〜)



                      



 「家庭・地域モニタ」制度は,平成10年度より実施している。これは各
学年から3〜5名程度(全学年で15名程度)の保護者にモニタを依頼し,
学校の教育活動に対する意見,質問,家庭・地域の情報を得るもので
ある(図27)。
 寄せられたメールは,メールアドレスをもつ教員に転送するとともに,全
教職員に印刷配布した。職 員朝礼や職員会議で検討することもあった。
 また,当初は「電子目安箱」であったが,インターネットに加入した教職
員が増え,メールの送受信も増え,平成 11年度からは,アドレスをもつす
べての教員も含めた約30人のメールグループができ,「電子会議広場」とな
りつつある。以下は受信メールの一部である。                                   





図27 モニタ制度を伝える記事






先生方の指導に感謝します    H10.6月受信
 一昨日、下校中の生徒三人がジュースを飲みながら歩いているのを外の仕事から  帰られていた先生が呼
び止め指導されていたところを偶然見ましたが、生徒達にと  っても、高中にとってもいい先生がいるなと嬉しく
思いました。家庭での指導もちゃんとしなくてはと改めて考えました。
 昨日の地区懇談会で感じたこと  H10.7月受信
 各学年の現在の様子を学習面、生活面等、各方面を通じて説明していただき、安心した面、家でも話しておか
なければならないと再認識させられたところがありま した。中でも、人の目の届かない所での他人の物へのイ
タズラ、成績(順位,内申書) を気にしての勉強(これをすると成績が上がるのかとの質問)があると言うことは
ショックでした。
 我が家の方針としては、『自分がされて嫌なことは他人へしない。自分がされて嬉しいかったことは、他人へも
してあげる。』『親のための勉強ではない。毎日遠距離通学をして行くのであれば、一つ何か今日の成果となる
ものを身につけて帰る。』子供としては、なかなか実行とまでは行かないにしても、おりに触れて話していれば、
心のどこかに必ず残ると思います。
  《むかつく》《切れる》と言う言葉が子供達の口から平気で出てきている今、家での親子の対話の大切さをもう
少し親としても重要視すべきだと思います。
 しかし平成10年度の反省として,形式面でいえば「電子目安箱」で終わったこと, また内容面でいえば,「単なる
仲良しクラブではだめ」との意見も聞かれた。
 そこで平成11年度からのモニタ制度ではモニタとメール・アドレスをもつ全教員を メールグループとして,全員宛
送信により,ダイレクトでよりインタラクティブな情報 交換ができる「電子メールの広場」とした。以下は,平成11年
9月の体育大会前後の やりとりである。多忙なこの時期に,メールにより5日間ほどのうちに教員,モニタ延べ8人
の意見交換が行われた。

明日は体育会です。 教員A 
  明日は体育会です。〇〇先生からメールが入っていました。文化部のバザーの品物を持って行きたいと思っ
ています。お互い不要な物を交換して有効に使こと、私は主婦でもありますから大賛成ですね。必要な品物に出
会えそうで楽しみです。では明日。
早速にメールありがとうございました。 教員B
  生徒も短い練習期間の中で頑張ったと思います。教員も600mリレーにどの学年も参加し,生徒会のスローガ
ン「自分の限界に挑んで」ということで。ハイ。
  学年対抗,我がクラスは2位。う〜む,残念。でも頑張って全競技に取り組んだり,欠席者を全員でカバーでき
たりしたので,教室ではほめてやりました。明日からまた,切り替えて頑張ろうと思います。事業部の物販,生活
部の駐車場係,その他,Pの皆さん大変お世話になりました。
走る姿が,ほとんどトトロだった○○です。 教員C
 レース後半は,ネコのバスに乗りたかったです。いやいや・・・。体育会前には,いろいろと失礼なことも書きまし
たが,これもみな,印象に残さんがための浅知恵と,お許しください。おかげさまで,文化祭のバザー物品もたくさ
ん集まり,感謝感激です。ありがとうございました。
 明日は,教員だけに代休があって,何だか申し訳なく思ってしまう○○でした。
体育会 お疲れさまでした。 家庭・地域モニタB    
  娘は,ムカデ競走が大成功に終わり,殊の外ご機嫌で帰ってきて「うちらあの先生,泣いて喜んでくれたわ。」と
ますます△△先生への尊敬の念を深めたようです。親である私は,一年生の時,娘の側へ行ったり,出場してい
る娘に手を振ったりとダメ親をしてしまい,それ以来,娘から 体育祭の前になると,冷たく「こんでもいいよ」と言
われてきました。それでも,めげずに行き,しっかり楽しんで帰りました。お弁当作りも,チェックの為か,手伝って
くれました。そんな娘の想いを一行詩にしました。「母よ!頼りない、父は 孫扱い。 だから 私はしっかり者。」
体育会を終えて         家庭・地域モニタC
 体育会当日は 朝,曇っていたので,内心ほっとして出かけましたが、実はとても暑かったですね。皆様ご苦労
様でした。観覧しただけで疲れたと言っては,練習,準備、当日と頑張った子供達や先生方には申し訳ないです
ね。夕方,真っ赤に日焼けした顔でふうふう言いながら帰宅した子供を見てよく頑張ったなと実感しました。熱のこ
もった競技や演技で楽しかったです。特に先生方のすばらしい走りに驚きました。また,ハンディのあるお友達が
頑張っているのを見て本人は勿論,補助をしてあげているお友達にも心打たれました。周囲の人からもそういう声
が聞かれました。
ご存じでしょうか? 家庭・地域モニタD
 いろんな都合で体育会も観覧に来られない御家庭もあったと思うのですがそんな中農繁期で忙しく,観覧は出
来ないが,PTAの役員の務め(決められた時間内)だけに来られた方もおられるのです。役員をすると,子供にと
っても,いい影響が有る事は皆様も体験されてると思います。不平不満の気持ちでされれば別ですが)かといっ
て大変な事でも有り,自分から進んでする人もあまり無いようですね。地区によっては,毎年のように同じ人がし
なければならないところが有ります。この方も毎年のようにされています。「子供は親の背中を見て育つと言うか
らなー!」っといいつつもはりきって,頑張っておられます。こんな方と接していると,役員にぜんぜん当たらない方
を,少々気の毒にも思います。

 学校にかかってくる家庭・地域からの電話は,苦情や注文が多い。ましてや,電話でおほめや慰労の言葉を聞かせ
ていただくことも難しい。手紙は仰々しい感がある。こうした点からも気軽に送れるメールのメリットは大きい。
 家庭・地域モニタの方から,本校の教育活動に対していただいたメールは,アドレスをもたない教員のためにも,翌
朝,洋半紙に刷って全教職員の机の上に置くことで,保護者や地域からの励まし,温かい言葉を伝えてきた。これも,
情報教育部の地道な活動の一つであったが,こうしたモニタからのメールを読んだことがきっかけで,インターネットを
始めた教員も見られた。
 今後も家庭・地域との連携の手段は,家庭訪問や地域での懇談会などが中心になるのは間違いないが,今後,イ
ンターネットが各家庭への普及率(平成11年4月現在本校保護者では約25%)が100%に近づく時代も近いことから
補助手段としてメールを利用した連携の可能性も大きいと考えられる。



終わりに


 地域にそして全国に広がるインタネット活用の土台として,まず校内での位置付けについてふれた。開かれた学校づくり
は,まず校内に開かれているかということであった。
 図28の「高中ホームページ情報」は,新しく作成したWebページや送受信メールの内容,授業で活用できるサイトの紹介
等を掲載し,全教職員に毎月2回程度配布しているものである。   



図28 教職員間の情報共有として

 こうした地道な取り組みを継続していくことで,インターネットの活用や情報教育に対する教員の認識を少なからず変えていく
ことができた。現在,本校では全教員35人中30名が個人でノートパソコンを所有し,15名が個人的にメールアドレスをもち,イン
ターネットをしている(平成11年7月現在)。また総合的な学習の時間などの授業においても,生徒のグループ発表では,教員
がアシスタントとなり,プレゼンテーションソフトを積極的に活用していく方向にある。
 こうした校内の組織作りを進めながら,地域に,そして全国にネットワークを広げていく訳であるが,ここで再認識しておきたい
のは,情報ネットワークは単なる通信ネットワーク(通信環境の整備等)ではないことである。例えば教員間でも,ハイスペックな
コンピュータやネットワーク機器の性能が話題になることが多い。こうした話題も時には必要であるが,忘れてならないのは,ネッ
トワークを使うのは人間であり,そこには人的ネットワークがない限り,本当の意味での生きた活用につながらないことである。三
重県の亀山中学校とは,歴史的な縁をもとにした姉妹校縁組みがあり,また長崎大学附属中学校とは本校が毎年,修学旅行で
長崎を訪れるなどの人的,直接的つながりがネットワークを太く長いものにしている。
 情報ネットワークの「情」の字が示す通り,今後も人的ネットワークも大切にし,地域に全国に,さらには世界に交流の輪を広げ
たいと考える。こうした活動を通し,21世紀を生きぬく生徒像を描き,そのための教育活動を続けることを忘れないようにしていき
たいと考える。


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