一般教科の情報化に関するカリキュラム開発及び実践研究
−一般教科「国語・社会・美術」での実践を通して−
研究者 斎藤 貢市
市川 恵也
市川 由布子
目次
1−1 実践報告にあたって
2−1 国語の実践報告概要
2−2 国語実践報告1 現代文分野 「雑誌作り」・「取材の仕方」 (中学3年生 / 16時間)
2−3 国語実践報告2 古典分野 「古典を題材にした創作劇の制作
『御伽草子』」 (中学/ 12時間)
2−4 その他の国語実践報告
3−1 社会の実践報告概要
3−2 社会実践報告1 公民・核軍拡競争と核軍縮への道(中学3年生 / 9時間)
3−3 社会実践報告2 政経・企業、経済活動の研究(高校2年生 / 10時間)
4−1 美術の実践報告概要
4−2 美術実践報告1 マイ・グレート・アーティスト 〜自ら描くことで理解する美術史年表〜
(中学2年生 / 6時間)
4−3 美術実践報告2 パブリックアート模型を使った景観シミュレーション (中学3年生 / 9時間)
4−4 その他の美術の実践報告
研究者 斎藤 貢市
要 約
小学生、中学生の早い時期に「情報リテラシー」を習得した生徒にとって次に必要なものは、学校生活や社会生活で実践的に応用できる「情報活用能力」の習得ではないかと考える。そこで、教科「情報」以外の教科においても情報機器を活用した授業を展開し、それをとおして生徒の「情報活用能力」の向上をはかることを目指すことにした。本研究はそのために3教科(国語・社会・美術)で取り組んだ情報機器を活用しての新しい授業モデルの開発研究である。
国語では朗読や作文、劇作や雑誌制作、あるいはホームページ作成などにおける表現発表の可能性と媒体の研究を中心に行ってきた。他にもマルチメディアを利用した視覚教材の利用と作成、国語科を始め他教科と共用できるテンプレート・教材の作成、ネットワークを活用した生徒制作物の回収や閲覧を行った。
社会ではマルチメディア教材やデジタル機器の利用の可能性を研究してきた。具体的には、用語の整理・解説作業と捉えがちになってしまう授業を脱し、政治や経済の仕組み・機能等についてイメージの伴わせることによって、より内容理解を深められる授業にしていく方法を研究した。また、自己表現力・論理的思考力、取捨選択能力の習得に有効な道具としてどう有効かを研究した。
美術では素材や道具によって変わる表現方法や可能性の1つのツールとして、情報機器の効果的な利用法を研究した。美術教育は、手を動かし、からだ全体を働かせて、主体的に考え、創造活動することを大切にしている教科である。コンピュータそのものや、操作法にとらわれて本来の学習活動から外れてしまう事のないように留意し、手仕事の良さを忘れず、コンピュータの特性を生かした思考力と表現力を高める教材のあり方について研究をした。
勤務先 戸板中学校・女子高等学校
1−1 実践報告にあたって
本教育実践は、一般教科における情報機器の有効な活用を追求すると共に、教科「情報」との連携を計ることによって、新しい授業モデルの開発・定型化を目標としたものである。本校の情報教育委員会は、従来光ファイバー網を使ってのインターネットの効果的な活用研究を行ってきた。それは文字・音声・動画等の大容量の情報を高速で伝送できる利点を生かし、中学総合学習での教科「情報」のスタートし、株取引のシミュレーション、教員・生徒のホームページ、調べ物などでの活用へと発展した。この実践は、当初から一般教科と情報科とが連携を密にし、学校や社会生活で実践的に活用できる様々な「情報活用能力」と「情報リテラシー」の習得させることを目指すものであった。
今回の研究は、デジタルコンテンツの利用や本校で重視しているプロジェクト学習、視覚的なものや社会ツールの擬似的な表現、生徒が直感的な操作を繰り返しイメージの具現化ができることなど、学習目標を効果的により早く学習することに主眼をおいた。そして情報科の領域や一般教科同士の学習内容の重複、情報スキルの教え方の統一、ネットワーク知識の必要性など、教員側の問題も考えてきた。今後、様々なメディアからの情報との付き合いは、より一層複雑で高度なものとなるであろう。また、生徒のスキル、リテラシーの向上といった社会の変化に全教員が対応しなくてはならない時代がくる。そういった問題をも委員会で共有し、改善しながら研究を進めてきた。
今後は教科活動を飛び越え、コンピュータを使用した教育活動を可能とする環境の提案、コンピュータを教育で利用するスキル獲得方法の提案、マルチメディア教材やネットワークを利用した教材提示と回収、様々なテンプレートの共通化などといった研究を進めようと考えている。
以下、教科の実践報告をまとめていく。
2−1 国語の実践報告概要
情報教育の利点と方法を利用した「国語」の研究や授業は、今日多くの成果を上げるにいたった。視聴覚教材を利用することは以前より有効であったが、加えて現在は個から集団だけでなく、個と個の相互情報伝達を目的とした様々なマルチメディア教材やネットワークが発達している。教材も市販のもの、公のもの、学校・教員独自のものが混在している。インターネットでの調べ物、レポートなどのデータファイルでの提出、メールや掲示板の類での批評や発表など、活用の場も広がった。そのような情報の成果を国語科担当として、授業にどう有効活用できるか研究を進めてきた。加えて「国語」も表現について学ぶ割合が増え、メディアリテラシーへの役割も大きくなったことを考えると、情報教育の中での役割を、今以上に意識する必要があると考える。
教科としての情報教育への取り組みは以下の4点を念頭に行った。
@ マルチメディアを利用した視覚教材の利用と作成
A 国語科を始め他教科と共用できるテンプレート・教材の作成
B ネットワークを活用した生徒制作物の回収や閲覧
C 朗読や作文、劇や雑誌、そしてホームページなどでの表現発表の可能性と媒体の研究
情報教育の成果と方法を取り入れた授業展開は、多様なメディアに接している生徒にはなじみやすいようだ。教材の身近さや表現のバリエーションは、学習目標の広がりと達成の早さという著しい効果をあげた。変化する社会に対応した、国語教育の可能性を考えてきた。
以下実践事例を報告する。
2−2 国語実践報告1 現代文分野 「雑誌作り」・「取材の仕方」 (中学3年生 / 16時間)
■概要
様々なメディアの違いを理解し地域情報誌を作って表現をする「地域情報誌を作ってみよう」というプロジェクト学習を行った。最近はDTPのデザインや作り方を説明する雑誌やホームページが豊富である。雑誌というメディア媒体の活字による情報とその他の情報とのバランス、あるいは文章について学んで欲しい授業だが、まずは「美術」や「情報」との学習項目の重複に注意をした。今回はほぼ自分の考えたとおりにやらせてもらったが、本来は他教科との細かな打ち合わせが必要になってくる。その点で「総合学習」での応用、表現の一手段としても有効であると考える。
雑誌の想定読者と内容を考えるためにも、まず雑誌研究から始めた。購読している雑誌と色々なジャンルの雑誌の構成要素や文章、特徴などを分析することで、メディアの意図も分かり、生徒自身の社会の中での位置までわかる。生徒たちは普段読んでいる雑誌を、面白そうに分析していた。続けて地域情報誌との比較を通して、どのような記事が多く、どういうものがあったらいいか考えた。
実際の制作に入っていく。内容以外のものを勉強する。プリントとパワーポイントを使ってレイアウト・配色・背景・テキスト・タイトル・写真について学ぶ。
次は取材である。写真と記事の関係、音楽と記事から取材した記事をまとめる学習をし、表現の難しさと面白さ、取材の仕方を知る。校外での取材になるので、取材方法とマナーに気をつけるように指導をすると共に、事前に取材相手にも依頼をし、質問項目もチェックするようにした。地域の商店や会社、街頭インタビューやアンケートなど協力をしていただいた。どのような構図の写真が必要で、それをどう使うのかも細かく準備してから撮らせる。
メンバーと企画を詰めながら、緊急な仕事として1時間で「スポンサーから広告の依頼」を作る授業をする。裏表紙に載せる戸板中学校の好きな施設を企画してもらう。生徒達はここから実際に作っていく面白さにひきつけられていった。
取材と並行してパワーポイントでの雑誌作成へと入っていった。パワーポイントでA4の縦のテンプレートを作っておいた。文字のポイントや基本レイアウトなど、雑誌研究からの結果を受けて事前に設定し、設定は生徒にも知らせてある。生徒は注意をして問題なく取材をし、時間との戦いの中、分担して次々とページを作り上げていった。
■学習の狙い
l
メディアの特性を理解し、効果的な表現方法を工夫する。
l
共同作業で1つのテーマを多角的に捉え、視野を広げる。
l
様々な取材、調べ方を考え、それぞれを適した文章にする。
l
地域商店街などへの取材、アンケートを通じて、情報の収集について学ぶ。
l
雑誌の編集・制作を通じて、情報発信について学ぶ。
■使用ソフト
Microsoft
PowerPoint、PaintShopPro
■授業の流れ
1. |
情報と向き合う単元でメディアについて理解する。 【1時間】 |
2. |
文体研究(1)と表現(写真からの空想) 【1時間】 |
3. |
文章研究(敬体と常体) 【1時間】 |
4. |
班の係決めと雑誌の内容選定 【1時間】 |
5. |
文章研究(ミュージシャンへの取材練習) 【1時間】 |
6. |
裏表紙の広告依頼に対する会議 【1時間】 |
7. |
雑誌特集内容の確定、取材対象の決定 【1時間】 |
8. |
レイアウト・文字・写真の勉強と練習(3種の説明プリント 省略) 【1時間】 |
9. |
取材依頼の仕方や質問項目を決定し、取材依頼を開始 【1時間】 |
10. |
取材シートの確認 【1時間】 |
11. |
制作手順の確認と広告の編集 【1時間】 |
12. |
レイアウト案作成・雑誌タイトル・編集許可 【1時間】 |
13. |
記事のチェックと雑誌作成(1)/分担を決め、文章を入力する 【1時間】 |
14. |
記事のチェックと雑誌作成(2)/写真を入れ、全体のバランスやロゴなどをチェックする 【1時間】 |
15. |
記事のチェックと雑誌作成(3)/続きの作業 【1時間】 |
16. |
記事のチェックと雑誌作成(4)/続きと印刷・製本 【1時間】 |
■デジタルコンテンツの利用による効果
実際のメディアと視覚的に近いものを作ることで、擬似的にメディア作成の体験をすることができる。
普段意識していないメディアの作られ方、危険性をも体感できる。
視覚を意識することで、現代的なメディアに対する理解の手助けとなる。
学習シートが一通り完成することで、教員によるさまざまな応用や展開応用できる共通教材が出来た。協力してくれた人や文化祭で見てくれた人が、制作物を既存のものと比較し、評価しやすくなる。
■実施教員の感想
概ね楽しそうに相談しながら作っていた。中学3年生の生徒の読む雑誌のデザインや配色が、とてもポップなものであった。急遽対象年齢を設定し、落ち着いた文字の色やフォントで作るようにした。雑誌のデザインが対象世代によってこれ程までに異なるのかと驚いた。生徒にとって情報誌はよく読むものであるため、授業の予測がつき、とてもスムーズに進めたようだ。取材は総合学習〔課題学習〕でも経験しているためか、礼儀正しくスムーズに出来たようだ。パワーポイントでは生徒のイメージがおおよそ表現できたようだ。総合学習〔情報〕でスキルを修得しているため、幾つかの作業を教えるだけですんだ。中学生のコンピュータのスキルは年々上がり、すぐにコンピュータに関することを教えることなく国語の授業を行えるようになるだろう。文化祭や学校説明会などで展示をし、多くの方に見ていただいた。取材先の方々に文化祭での展示を見に来て頂いた。実際に多くの方が来校してくださり、喜んで見てくださった。中にはお店に展示していただいているものもある。
■生徒たちの感想
「とても面白かった。取材をしてお店の人に良く説明してもらってためになった。」
「雑誌のデザインがいろいろあるのに気がついた。」
「雑誌が細かいところまで計算されていることに気がついてよかった。」
「歌手のインタビューの記事を書いたりしたのは面白かった。またやりたい。」
「授業を受けてから、町の中や雑誌に使われているフォントや色をみるようになった。」
「天気で写真がこんなに変わるものかと、気づいた。もっと時間が欲しかった。」
「みんなで編集会議をしたり、取材に行ったりと楽しかった。」
「私の班は他と比べて写真が多くて、読むところが少なかった。」
「雑誌と新聞の記事が違う書き方で出来ているのは発見だった。」
「みんなに表紙を誉められて、工夫をしたかいがあった。合成は面白い。」
「印刷されて、取材したお店に持っていったとき、喜んでもらってうれしかった。」
など、様々な局面で目新しさと関心を持てる教材だったようだ。
■生徒作品
■参考文献
『レイアウトアイディア見本帳』 石田恭嗣編 エムディエヌコーポレーション 2003
2−3 国語実践報告2 古典分野 「古典を題材にした創作劇の制作
『御伽草子』」 (中学/ 12時間)
■概要
今回のプロジェクト学習は「小学生低学年向けの古典劇をつくろう」というものだ。表現と分かりやすさを大切にし、面白いものにしたいと依頼した。生徒(プロダクション)に教員(テレビ局)が依頼をしたというものにし、不十分な部分はその視点から批判をし、作り直させた。
古典の表記、読み方を復習し、『平家物語』「敦盛の最期」を学習し終えたところからこのプロジェクト学習を始めた。ひきつづき用意した古典作品(『御伽草子』)の文学史的知識と時代を説明。班を決め担当場面を分担する。分担場面の読みを深める。シートを使って読み込みを深める。文章の理解、物語の構成、盛り上がる場面の朗読をしながら班での理解の助け合いを行う。
一方、映像化のために、脚本と絵コンテの学習をする。教材としては、脚本と絵コンテ、そして映像の関係を見せるため、黒沢明監督の『羅生門』と宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』を使用した。『羅生門』はカットの長さやアングル、絵コンテの動きを学習した。『千と千尋の神隠し』では絵コンテの書き方とセリフとト書きなどを勉強した。
初めにシナリオを作る。以前担当作品のあらすじと構成を分析しているため、それに基づいて設定を変えてストーリーを作るのは得意なようだった。そこから場面・人物設定の変更、セリフ、絵コンテという順に準備をすすめた。シナリオ化した部分以外は分かりやすく要約する。要約されたものをナレーションや文字情報とし、シナリオの部分を古典劇にする。古典劇を映像に記録し、背景や小道具をインターネットや写真で用意する。衣装などの実物の小道具も準備する。今回は映像で作ったため、ビデオ編集のスキルは生徒に無く、教員の仕事となった。(現在では中学3年生はこのスキルを持っている。)
完成作品は上映会を開き、鑑賞をする。お互いに評価をすることで、表現方法について理解を深めることができた。同時に発表会に参加をしてくれた教員にも評価をしてもらう。
また、文化祭での発表を通して、より多くの人に見てもらい表現の楽しみを知る。
■使用教材
『御伽草子』 日本古典文学全集 小学館
「浦島太郎」「瓜姫物語」「のせ猿草子」「猫の草子」
『東京都版 国語便覧』 浜島書店 2001
■使用ソフト
Microsoft
PowerPoint、Premier LE
■学習の狙い
l
古典を読解するスキルを養う
l
文章の構成を理解する
l
劇の創作を通して、表現の工夫を探る
l
班で協力することで人の意見や考えを聞き、協調してものを作る喜びを知る
l
新しい学習目標である映像表現スキルを習得する
(中学2年生では、読解力だけでなく、ポスター作成やビデオ制作などにより表現力を養う授業を展開したい)
■授業の流れ
1. |
古文の読み込みと理解 【2時間】 |
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2. |
シナリオと絵コンテ、映像の関係を学ぶ 【0.5時間】 |
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3. |
御伽草子を題材にして、現代版の創作物語の脚本を考える 【1.5時間】 |
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4. |
脚本をもとにして、絵コンテを配布されたプリントを利用して完成させる 【3時間】 |
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5. |
脚本と絵コンテに従って、ビデオ撮影をする 【3時間】 |
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6. |
撮影した題材をコンピュータに取り込み、編集作業を行う 【教員による作業】 |
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7. |
発表 【0.5時間】 |
|
8. |
評価 【0.5時間】 |
■デジタルコンテンツの利用による効果
l
古典を始めとする文章理解だけではなく、ビデオ制作などを通じて映像表現スキルを身につける授業を展開することができた。
l
自分で制作する経験を持つことで、メディアからの情報を冷静に批評的に取り入れるメディアリテラシーを身につけることができる。
l
今回作成したシートの共有によって、今後同様な教科での授業を簡単に出来るようになる。
■実施教員の感想
表現能力と意欲を引き出すのは、生徒が協力的なために容易であった。班単位での活動になるため、個人個人の参加状況が気になる。仕事の分担と作業途中で任意に呼び出し、進捗状況を確認することで参加していない状況を作りづらくした。ストーリーボード作りから生徒の活発な発想が伸び、どんどんとアイディアが涌いてくる。それはいいことだが、本来のセリフの読み方や内容をまとめたり伝えたりする部分が軽視されないように注意が必要だ。放課後残って次々と準備をすすめたのはいいことだが、懲りすぎていつまでも終わらないので、活動時間を制限する必要があった。
■生徒たちの感想
発表での他班の評価の後に、自分自身の反省と感想を何項目か書いてもらった。以下は抜粋である。
1.自分自身のこと
l
「大きな声や体を使ったりといった演技が、恥づかしくて上手くできなかった。」
l
「コンピュータが苦手なので、大変だった。」
2.共同作業について
l
「班の中に意見の食い違いがあった。班長が良くまとめてくれた。」
l
「分担が上手く出来て、みんなが協力してくれてうれしかった。」
l
「うまく演技できないことがあって、迷惑をかけてしまった。」
3.作品について
l
「背景を集めるのに苦労をした。」
l
「効果音が入れられなかった。他の班を見てもっと分かりやすくできたと思った。」
l
「撮影よりその前の準備がこんなに大変なんだと知った。」
l
「説明(文字)が大きかったり小さかったりするだけで分かりづらくなるんだと思った。」
l
「絵コンテを書くのが大変だった。作品に文字がほとんど無かったが、もっと使えばよかった。」
l
「登場人物の心が伝わったのか、心配だ。」
4.いつもの授業と違い、コンピュータを使ったりすることについて
l
「とても面白かった。みんな良くがんばっていた。」
l
「古典がとても身近で面白く感じることができた。」
l
「色々な古典の話が分かりやすく知れてよかった。」
l
「こういう授業は初めてなので、大変だったけど、楽しかった。やっぱりみんなで物を作るのは、すごく良いことだと思う。良い経験になった。みんなや先生の協力があってここまでできた。」
l
「またパソコンで編集などをしてみたいと思った。今度はすべて自分でやってみたい。」
l
「すごく楽しかった。1人1人の個性が出ていて良かった。これをやったことによって協力してやることなどが勉強できた。他の班もみんないいところがあって、とても良い経験になった。この経験を生かして、人に見せることに注意していきたいと思った。
■生徒作品
■参考文献
映画 『羅生門』 大映 1950
『黒沢明作品画集』 エフエム東京 1992
『全集黒沢明 第3巻』 岩波書店 1988
映画 『千と千尋の神隠し』 東宝 2001
『千と千尋の神隠し スタジオジブリ絵コンテ全集〈13〉』 宮崎 駿 2001
『'01年鑑代表シナリオ集』 シナリオ作家協会編 映人社 2001
2−4 その他の国語実践報告
従来より視聴覚教材として、ビデオやスライド、図版などがあり、古典の世界のイメージを想像させて関心と理解を深めるために利用してきた。情報化が進み、優れたマルチメディア教材(CD-ROM.DVD他)やたくさんのホームページがある。それらにパワーポイントで作った質問形式の教材を加え、コンピュータを利用してリンクでつなぎ、ネットワーク上に置くことで、校内のあらゆる場所で容易に利用できるようにする。すべての教材のリストを作り、授業の予習復習の教材として、生徒の自習用の教材として、教材の共有の提案をした。マルチメディア教材『伊勢物語』『源氏物語』が完成したが、今後順次主要古典作品の教材を作成していく予定である。他にもネットワークを利用してプリント等の教材を共有している。プロジェクト「ニュース番組を作ろう」のテンプレートや「短歌の創作と鑑賞」の集計システムの開発などの実践を行った。また、教材のみでなく、「レポートの書き方」や「調べ物の仕方」様々な学習方法を、教科をまたがった形で共同で作っている。
3−1 社会の実践報告概要
公民分野においては現実社会の基本的構造を理解することを第一目的としているが、その過程において論理的思考と現代社会に対する基礎知識を身に付けることは必要不可欠なことである。しかし、アナログ式(文字を中心とした情報伝達形式〔講義形式〕)の授業だけでは用語の持つ仕組みや機能を生徒に理解させることはきわめて難しく感じ、結果的には未消化な授業になっているのではないかという思いが強かった。
これまで、自作プリント・資料集による図解や既成のビデオ教材を利用してきた。それぞれの利点はあるものの自作プリント・資料集などは視覚的なアピールに欠け、既成のビデオ教材はオールインワンの内容となっている場合や映像の長さの問題などから1コマ45〜50分の一般的な授業では使いにくいという状態であった。
以下の報告は、上記の授業展開上の問題点を解決する一手段である。もすると、用語の整理・解説作業と捉えがちになってしまう授業を脱し、政治や経済の仕組みや機能についてイメージを伴わせることによって理解の進度を深めさせる。そうした授業を目指したものである。マルチメディア教材やデジタル機器の利用の有効性が多少なりとも成果を表しているのではないかと思う。
また、本校の社会科(地歴・公民科)として掲げる自己表現力・論理的思考力、取捨選択能力等の育成について、授業の過程に調べ学習とPowerPointを利用した発表を盛り込むことでどのような効果があるのかという視点でも振り返ってみた。
以下の4点は授業実践の結果、今後、留意しながら進めていく必要があると考えられる項目である。
l
生徒の能動性を重視するあまり、予定以上に授業時数を費やしてしまう場合がある。
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PowerPointを利用することで視覚的にはわかりやすい発表となるが、その機能に依存し生徒がPowerPoint画面の作り込みに時間をかけてしまう。
l
生徒のコンピュータ操作の細かいスキルチェックがない場合にコンピュータ操作の解説に終始することになる。
視覚的な刺激が強く、興味を維持しやすい一方、生徒個人の手元に授業で得た情報が残りにくく、結果としてどの程度記憶をする作業の手助けとなるか疑問の残るところである。
3−2 社会実践報告1 公民・核軍拡競争と核軍縮への道(中学3年生 / 9時間)
■概要
国際社会の情勢や核をめぐる国際政治など複雑な部分をデジタルのボードゲーム形式にすることで、生徒に対し視覚的に動機付けができ、授業の導入としては非常に使いやすいものとなった。アニメーション上で語り部さんを登場させ、生徒への質問を投げかけるという擬似的体験学習という要素を盛り込んだことで、どのくらい生徒にとっての実感を得られるかということを1つの課題として取り組んだ。
ビデオ映像からの興味に沿った発表内容を決めさせ、1度、事前に作っておいたボードゲームで核軍縮の道のりを大雑把に把握させた。その後、調べ学習・pptを利用した発表・ボードゲーム内の問題の作問・2度目のボードゲームの実施という流れの中で、特に2つめのボードゲーム内の問題作成というかたちで生徒がボードゲーム作成を通じて主体的に参加し、責任感と達成感を持てるように留意した。
その後、知識の獲得のためにまとめというかたちで軍縮の流れを追うプリントによる講義を行い、パネルディスカッションを行った。
■学習の狙い
l
今までの社会(公民)の講義中心の授業内容を改め、生徒自らが積極的に学び、参加する授業内容を実現する。
l
核兵器というイメージの持ちにくいテーマを生徒に受け入れやすくするためにゲーム、アニメーションを使ってわかりやすく表現し、理解させる。
■使用ソフト
Microsoft PowerPoint
■授業の流れ
1. |
ビデオを見る 【1時間】・チェックシートを記入し、感想を書く (NHK「映像の世紀」の終戦期から冷戦構造までのビデオ教材) |
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2. |
電子ボードゲーム1回目(核について興味を持たせる) 【2時間】 l
紙のボード(A4サイズ)とパソコンを使ってボードゲームを実施 l
紙ボードゲームの目的は、 l
ボードゲーム用ワークシートへボードゲーム中の知識の書き込み |
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3. |
調べ学習 【2時間】・ワークシートに調べる項目内容を記入しパワーポイントにまとめグループ発表をする |
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4. |
グループ発表 (パワーポイントによる電子プレゼンテーション) 【1時間】 |
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5. |
(調べ学習のまとめ) 【2時間】 各グループの発表内容から生徒が問題を作り、ボードのマスに入れる。自分の調べたところや友達の調べたところがボードのマスの内容になるため、興味を持って学習することができる。 |
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6. |
パネルディスカッション 【1時間】 |
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■デジタルコンテンツの利用による効果
従来の授業は、NHKのビデオ教材を見てから講義を行っていた。この形式では、映像にはとても興味を持つが、講義の方では集中力に欠けることがよくありました。
情報機器、デジタルコンテンツを取り入れた授業での学習効果
l
コンピュータ上に自分の作った問題がすぐ反映されて、出題されるのでおもしろい。
l
3人一組の小グループ学習で全員が積極的に授業に参加する。
l
生徒同士が教えあう、知恵を出し合う共同学習により達成感も高い。
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核兵器に関する難しいテーマでも、ボードゲームにすることでおもしろく、能動的に知識を吸収できる。
■実施教員の感想
今回、核兵器の拡散状況に関する学習項目をゲーム形式で擬似的な体験学習・視覚的アプローチとして取り扱った。このゲームのプログラミング・アニメーションの作成については多摩美術大学の楠先生及び先生のゼミの学生の方々に協力を得たことで成り立っており、この場を借りて感謝の意を表したいと思う。ゲームの作成過程には核の恐怖やその後遺症に苦しむ人々の深い思いが軽んじられるのでは、との核問題をゲームとして取り上げることの是非を問われる場面もあった。しかし、複雑な内容やタブー視される問題を形式的に「そういうものである」というような伝え方では生徒にとって実感としては残らず思考も浅くなるはず。また、実感を持たせるために広島や長崎への修学旅行などを前提とした学習形式も本校での実施は難しいと考えるならば、今回のようなゲーム形式での擬似的な体験学習ができるデジタルコンテンツへの取り組みは有意義と思われたため計画を進めていくことにした。結果、生徒の反応としては下記の感想・アンケート結果のように概ね良好であった。さらに、学習の効果としては、生徒がこれまではなかなかイメージできなかった核の恐怖への理解や、世界各国が核の恐怖をなくそうとしてきた努力とその過程への理解を深めたことなどがあげられる。一方で新たに核を持ち、国威を世界に示そうとする国の出現に単純に疑問を持ち、怒りを感じている姿の見られたことも成果の1つであろう。総じていえば、戦後から1990年代までの核をめぐる国際政治の動向を“出来事”としてではなく現実として捉え、その解決方法を探る生徒や核廃絶を考える生徒、あるいは逆に核抑止の強化を訴える生徒など、各自が「自らが考える」という立場に立ち、未来への希望や不安を抱いたということである。
これまでのビデオ映像→プリント配布→講義→感想というオーソドックスな形式との比較をすると、デジタルコンテンツを利用することで家庭用ゲームなどに慣れている世代の生徒たちにとって「楽しいもの」という少し遊びの感覚があることで興味を持続し易いこと。視覚的で平易なイメージで国際政治の流れを追うことができること、あるいは、デジタル(ゲーム形式)によって視覚的効果と内容に対する興味を持続させながらアナログ(書き取り)で知識として獲得させることに効果があることがわかった。しかし、視覚的効果の落とし穴である知識の定着・定着のための反復がしにくい部分については予定していた小テストが実施できなかったため、どのような効果があったのかの予測はできない。
■生徒たちの感想
3−3 社会実践報告2 政経・企業、経済活動の研究(高校2年生 / 10時間)
■概要
企業活動の目的が「利潤」にあることを広告戦略に関する映像を見せることで明確に理解させた。
シミュレーションソフトを利用し疑似体験的に企業経営の綿密な部分を確認した。授業前半で視覚的要素を多く盛り込むことで強い動機付けがなされ、興味が持続すると考えた。その後、決算書の見方を学習し、実際に研究対象とする企業のホームページで決算書を読ませ、企業ポリシーの確認を行う。研究企業は女子の生徒にとって身近にありながら縁遠い牛丼産業を対象とすることにした。牛丼産業に着目した理由は1つ目に顧客ニーズ(本校生徒)と企業側の顧客ターゲット(本来の顧客)のズレが大きいほど生徒が思考するスペースが広くなるのではと考えたこと。また、多くの生徒が牛丼屋に行ったことがなかったことでフィールドワークに強い興味を持たせることができると考えたからである。
フィールドワーク後、グループ毎の報告書を作成させ、他のグループとの意見交換をした後に自分たちの感想・意見が一般化できるかの検証のためにフィールドワークで得た自分たちの感想をもとに全校アンケートを行った。まとめとしてはアンケート結果の集計とその分析、生徒が企業経営をする際の視点を獲得できているかを確認するために定期テストに自分の「一坪ショップ」の出店計画というかたちで出題した。
■学習の狙い
l
企業活動を理解する。
l
自分でお店を作るなら、こんなことを考える、というアイデアを出してみる。その活動を通じて、企業活動が実際にどのように動いているかを理解する。
l
フィールドワーク、調査活動を実施する。
■使用ソフト
Microsoft Excel
■授業の流れ
1. |
コンビニエンスストアへ行って、棚の作り方を研究する。自分の思う理想の棚と現実のコンビニエンスストアの棚とを比較する。 【0.5時間】 |
2. |
「やってみ店長」というシミュレーションソフトを使って、企業努力を理解、体感する。 【1時間】 |
3. |
実在の企業の決算書を見て、企業の利益について確認する。 【0.5時間】 |
4. |
グループに分かれ、課題とする業種の競合企業の概要を、各社のホームページから調べる。 【1.5時間】 |
5. |
調査対象になっていた企業のポリシーをグループごとに発表する。 【0.5時間】 |
6. |
フィールドワークで、企業ポリシーについて調査した企業が運営する店舗を訪問する。客層、駅からの距離、客の滞在時間、客単価などを店員に質問する。 【2時間】 |
7. |
フィールドワークの成果をレポートにまとめる。 【0.5時間】 |
8. |
疑問点などをまとめ、クラス内で共有する。その疑問についての答えをグループ内で議論する。 【0.5時間】 |
9. 10. |
疑問点について、中学校1年〜高校3年までの全クラスで、20項目ほどのアンケートを実施し、議論から考えた疑問への答えが一般化できるのかを確認する。 【2時間】 Excelを用いてアンケートの結果を集計する。この結果を用いて、再びグループごとに議論をする。 |
11. |
試験で、「一坪ショップを自分で作るならば、どんな場所に作るか・どんな店を作るか・どんな商品を扱うか・どんな客層をターゲットにするか、などを説明して書きなさい」という問題を出題し、企業活動について理解するという目標が定着しているか確認する。 【1時間】 |
■デジタルコンテンツの利用による効果
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シミュレーションソフトは、即座に視覚的にわかりやすい結果が出るので、使いやすい。
l
シミュレーションソフトを利用することで、企業活動において利益を出すことの難しさを体験することができてよい。
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ホームページを利用して、手軽に情報収集をすることができる。
l
収集したデータを自分たちなりに加工することができる。
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視覚教材として、デジタルコンテンツを利用することは、生徒たちの理解を深める。具体的、現実的な情報を与えることができる。
■実施教員の感想
本校が女子高であることを生かしながら企業研究を進めていく方法はないかという視点で研究する企業を選定し、身近にありながら縁遠い牛丼産業に着目することした。その結果、各企業の顧客ターゲットの違いを意識することになり、企業経営の根幹である「顧客」という部分に視点を向けることができたようである。また、シミュレーションソフトを導入することで生徒にとって「企業の活動ってけっこうおもしろい!」という感覚が生まれ、主体的に研究・調査を行っていた。また、企業のホームページを閲覧する作業などによって一定の時間に、一定の情報を集めることで情報収集能力を試すことができた。さらには、グループ毎に発表し、情報の共有化を図ることで生徒は逆に自らの取捨選択能力を確認することができたと思われる。
課題として対象生徒が情報科のカリキュラム移行の過渡期にあるため、担当教員の認識と生徒のスキルにズレがあったことがあげられる。その結果、生徒自身がエクセルデータの処理をできず、アンケートデータをグラフ化できないという結果になった。今後の留意点としては情報科との連携を密にし、対象生徒のスキルチェックを詳細に行っておくことが挙げられる。
4−1 美術の実践報告概要
情報化時代において、美術文化や美術教育も大きな影響を受け、コンピュータを活用した授業実践は珍しいものではなくなった。
美術の世界では使用する素材や道具によって表現方法や可能性はまったく別ものになる。そのひとつの道具として、コンピュータならではの手法や表現力に目を向けて有効に活用したいと考えてきた。美術教育は、手を動かし、からだ全体を働かせて、主体的に考え、創造活動することを大切にしている教科である。コンピュータそのものや、操作法にとらわれて本来の学習活動から外れてしまう事のないように留意し、手仕事の良さを忘れず、コンピュータの特性を生かした思考力と表現力を高める教材のあり方について研究してきた。
今後も、メディアアートや画像処理、各種のデザインワーク、さらにはネットワークでの発表・鑑賞、そして作品管理など様々な展開が可能である。その際の「情報科」をはじめ、他教科との連携、さらには他教科の授業に対する「美術科」としての関わりや貢献の必要も実感している。
4−2 美術実践報告1 マイ・グレート・アーティスト 〜自ら描くことで理解する美術史年表〜
(中学2年生 / 6時間)
■概要
美術史の学習では、生徒は受動的な活動が主になりがちであるが、コンピュータを利用し、能動的な活動を通して、時代の大きな流れをつかむと同時に美術作品に対しての思い入れを深め、愛着をもてるよう配慮した。実際の授業では、導入時に生徒はスクリーンに提示された作品テンプレート(輪郭線のみ描かれた線描テンプレート)の中から感覚的に好む作品を選び担当作品を決定した。描画ソフトを利用して自由に着色活動を行う中で、作品と向き合い、隅々まで深くみつめながら、作品の主題や時代を考え、構図の魅力について理解を深めた。ここでの準備段階として、クラス人数に合わせて美術史上の代表作を選んでおき、最終的に全員の作品が揃うと、おのずと流れのある年表が制作できるようにしておいた。着色が終わったところで、インターネットのイメージ検索を利用して、実際の作品と対面することになる。ここではじめて画家の色使いに触れるわけだが、コンピュータ上で短時間に着色した自分のオリジナル作品と実際の作品との奥深さの違いに生徒は大変驚かされることになる。そこで次のステップとして、作品や画家について、また時代背景などについてインターネットや図書館の資料などを使い分けながら各自が調べ学習を進め、パワーポイントにまとめさせた。さらに、各個人が調べたことを制作年で並べながら時代様式ごとにグループ分けをし、共通項などから時代の特性を探るグループ学習をし、パワーポイントを使っての発表となる。
■学習の狙い
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各自が1人の画家を担当し、描画ソフトを利用して作品に着色する体験を持つ。この体験を通じて、描画手法を学ぶ。
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グループ学習で時代背景などを調べ、ホームページと印刷媒体で発表するオリジナルの美術史年表を作成する。
■使用ソフト
Microsoft
Internet Explorer・Microsoft PowerPoint・ペイント
■授業の流れ
1. |
自分の想像力を働かせて着色してみる 【0.5時間】 |
2. |
作品・作者について調べ、まとめてみる 【2.5時間】 |
3. |
発表原稿の作成 【1時間】 |
4. |
発表を評価する 【1時間】 l
声の大きさ l
内容の構成 l
表現力と工夫 以上の3項目を5点満点で採点する。 |
5. |
発表を評価する 【1時間】 |
■デジタルコンテンツの利用による効果
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描画ソフトを利用することで、短時間で作品の様式を把握できる。
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各自がコンピュータに入力したデータは自動集計され、その場で結果が発表される。クラス全体での評価をリアルタイムでフィードバックできる。
■実施教員の感想
美術史学習は生徒にとってはなじみの薄い題材であるが、今回の授業の中では、表現活動や調査・発表活動など能動的に動いていく作業を多く含んだことで、大変意欲的に取り組んでいた。また、鑑賞活動として「みるだけ」ではなく「描いてみる」ことの体験により、作品により深く接し、愛着を持つようになわけだが、コンピュータを使用することで、通常の授業の道具とは比べ物にならないほどの時間短縮ができ、また、人間の手仕事の表現力とコンピュ-タの能率制、それぞれの特性を改めて実感することができたようだ。
発表のための原稿をワークシート上で作成したり、生徒同士が発表を評価しあった結果を自動集計するなど、作業の効率化を図ることが可能になった。さらに、生徒の制作したオリジナル作品を使っての年表作品は、生徒の手による生徒のための教材となり、手持ち資料として、また教室掲示用として大変効果的に活用できた。
■生徒たちの感想
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時代が違うと絵もかなり違うなと思いました! どの絵もそれぞれインパクトがあっていいなと思いました。今度はもっと時間があるといいなと思います!
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美術の授業でパソコンを使うのは、珍しいのでちょっと難しかったです。でも、楽しかったのでまたやりたいな〜と、思いました。モナリザの秘密が分かって良かったです。もう少し詳しく調べれば良かったかな?と思いました。
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いろんな時代の絵を見比べてみると、同じ人物画でも色使いとか感じが違うものなんだなあと思いました!時間が全然足りなくてきちんとまとまらなかったのがちょっと残念でした。
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初めて美術の授業でパソコンを使いました。初めてのことだったのでなにをしていいのかわかりませんでした。しかし、だんだんやっていくうちに作者について、絵についてよくわかりました。また、他の授業でもやりたいです。
4−3 美術実践報告2 パブリックアート模型を使った景観シミュレーション (中学3年生 / 9時間)
■概要
環境デザインの題材から、パブリックアートの提案を取り上げた。学校や地域社会の一員として身近な校内と最寄り駅というパブリックな空間に目を向け、より良い環境のための工夫・改善の提案をしながら、アートの役割を実感させるように計画した。
導入では、参考資料やインターネット上でパブリックアートの設置例を提示しながら、その役割と作者の表現意図を確認した。そしてワークシート上で実際に担当する現場の現状分析を行い、「アートなベンチの提案を」というプロジェクトに入る。現状の分析結果から、自らの表現意図を固めコンセプトを決定し、手仕事による多くのアイデアスケッチを作成した。素材やサイズを決定して最終案を紙粘土と着色材で模型制作する。完成した模型をブルーバック画面で写真撮影し、実際の現場写真と合成することでバーチャルな世界を作り上げた。
■学習の狙い
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駅や学校といった公共の場所に設置するためのパブリックアートを粘土で作成し、それと制作後の結果を比較し、完成度を確認する。
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コンピュータの画像合成機能を使うことで、現実に近い形での出力結果を確認できるようにする。
■使用ソフト
Microsoft
Internet Explorer・PaintShopPro
■授業の流れ
1. |
インターネットや教材などを利用して、パブリックアートについて紹介する。 【0.5時間】 |
2. |
パブリックアートを置くために選んだ場所の印象、長所・短所を調査する。また、利用者の特徴を考え、どのようにその景観を改善したいかを分析する。 【1時間】 |
3. |
制作するパブリックアートのイメージを、キーワードやイメージからふくらませていく。コンセプト用紙を用いて、複数の計画案から可能性を探り、計画意図とコンセプトを整理し全体計画を決定する。 【1時間】 |
4. |
素材・サイズなどを実際の計画に合わせてデザイン画を作成する。 【1時間】 |
5. |
紙粘土を使って模型を制作する。ポスターカラーで着彩し完成する。 【4時間】 |
6. |
ブルーバックで撮影したパブリックアートの模型を、コンピュータを使って、パブリックアートを置く場所の写真に合成する。 【1時間】 |
7. |
他の生徒が制作したパブリックアートを鑑賞し、意見交換する。 【0.5時間】 |
■デジタルコンテンツの利用による効果
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シミュレーションを行うことで、生徒たちの学習意欲を刺激すると同時に、実際の効果を実感することができる。
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道具としてのコンピュータを造形的な表現手段として活用する能力を養うことができる。
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自他の作品をリアルタイムで鑑賞することができる。
■生徒たちの感想
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制作したベンチを、実際の場所に設置してみた画像がつくれて、見ることができてよかった。
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合成してみたら、もう少し色彩のグラデーションをはっきりさせればよかったと感じることができた。
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実際に現場にベンチを設置したら、中庭が華やかになったような気がして良かった!
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ベンチの模型を作っているときは、「じゃまかな?」と、思っていたけれど、合成してみたら以外に環境に合っていて良かったと思った。
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模型を制作しているときは、ひとつのつもりだったけれど、合成画面上で複数設置することの効果が良くわかった。
■実施教員の感想
環境デザインの授業として、試作モデルの制作にとどまらず、実際にバーチャルな世界を作り上げて効果を確認できたことは大変意義あったと実感している。生徒は非常に意欲的であり、今回の画像合成表現などのコンピュータスキルに、様々な活用力があることを体験できていた。また、事前に「情報科」と使用スキルが確認でき、協力を得られたことでスムーズに進行できた。
生徒は、分析・企画・発想・制作・発表などの表現プロセスを理解して、大変積極的に活動していた。
4−4 その他の美術の実践報告
その他のプロジェクトとしては、以下のものがある。
「視覚デザイン CDジャケットデザイン」(中学3年生 / 8時間)。視覚デザイン分野の課題として、生徒が日常の中でよく目にしているCDジャケットを取り上げた。中身は、生徒達のこれまでの美術作品集である。CDジャケットを分析することからはじめた。今回はコンピュータを使っての表現活動ということで、画像を加工してゆくことをテーマとしたので、様々な分野のCDジャケットをいくつかのグループに分けて、それぞれの表現手法を提示した。また、配色の効果についても様々な例を使って示した。そして、各自が「美術作品集」の表紙としてのコンセプトを決定し、手仕事でのアイデアスケッチを描き、デザイン画を作成した。昼休みや放課後を使って写真撮影を行い、いよいよ加工に入る。通常の素材(絵の具)と道具(筆など)ではなく、コンピュータ上での表現により、画像加工が簡単に可能であることを体験し、画面構成や色彩効果のための多様な実験や試行錯誤を、積極的に行いながら完成にさせた。
「マークデザイン」(高校1年生 / 8時間)マークデザインの課題として、今回は地図記号のリ・デザインをテーマとした。さまざまな記号やマーク、ピクトグラムなどの表現について学んだ後、それぞれの担当記号を決定し、分析・調査を開始した。マーク化するにあたり、3つの考え方を提示した。具体的モチーフ、抽象的なイメージ、文字の3つを元にして、組み合わせを加えるなど工夫をしながらの表現方法である。
「表現技法・イラストレーション」(高校1年生 / 8時間)表現技法研究として、さまざまな手法を身に付けさせる課題の中のひとつとしてコンピュータでの手法を経験させた。鉛筆デッサンを基本にして、その明暗表現を単純化した階調表現(本題材)、さらにモザイク表現、ミクストメディア表現など、同じモチーフを数種類の全く違った方法で表現する中で、それぞれの特色を実感させる。
協力者
為田裕行 (フューチャーインスティテュート梶j
実施場所
戸板中学校・女子高等学校
参考文献
各節の最後に明記