一般財団法人上月財団
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第7回(1999年)上月情報教育賞研究発表大会審査講評


審査委員長 清水康敬

東京工業大学教授

  昨年12月及び本年3月に学習指導要領が出され、新たに「総合的な学習の時間」が設けられ、中学校では「情報とコンピュータ」が必修となりました。また、高等学校普通科では新たな教科「情報」が必修となるなど、今年は大事な年に当たるわけであります。
 ご承知のとおり、上月教育財団では、情報教育の推進のための研究助成と顕彰とを行っておりますが、研究助成につきましては、既に1月に決定し、研究活動が始まっております。情報教育賞については、1月の段階で上月教育賞の候補を2件選ばせていただきまして、本日のプレゼンテーションを踏まえて賞を決めるということになっております。昼休みに審査会を開きましたが、それぞれに特徴のあるご発表でありましたので、情報教育とは何ぞやという議論まで出て「侃々諤々」の審査会となりました。それだけ情報教育については、まだはっきりした線が出ていないこともありますし、また幅広い学習活動に対して助成するということかと思います。最終的には、両者とも優秀賞ということになりました。それぞれ最優秀賞にも匹敵する良いプレゼンテーションであり、内容であったと思いますが、これからの教育賞としての在り方と継続的意味も踏まえて優秀賞にさせていただいた次第でございます。
 さて、西浦東小学校山本先生のご発表につきましては、情報教育の目的に合わせた活動をされております。情報教育では、実体験の重要性ということも協力者会議の報告の中でも記述していますが、野外活動をした上で、「情報活用の実践力」を育成する活動が明確にされている点が高く評価されました。ただ情報教育の最も重要な点は生徒が主体的に活動することにあります。この活動については、指導する形態をとっておられることが気になるとの意見もありました。
 情報教育では、正しい情報だけとか客観的な情報だけを集めてくるということではなく、あらゆる情報を的確なチャンネルで集めた上で、見方によっては解釈、結論が変わることもしっかり理解してもらうことが、重要なポイントになります。多くのデータをもとに、ある見方をすれば、こういう結論になる、別の見方をすれば、こういう結論になるということも大きなポイントになっています。従って、「野外に咲いた花」とか正しい情報だけを求めることだけではないと思います。整理した後、積極的に発信するということも重要な活動でありますが、発信というのはただホームページに載せれば誰かがレスポンスしてくれるだろうという考え方は、好ましくないと考えます。あくまで相手がいることを意識して発信する必要があります。相手といっても特定の人ではなくて、例えば親に出すとか、同じ年代の他学校の人達に出すとか、遠くの人達に出すとか、あるいは専門家の意見を求めるために出すとか、対象を明確にした上で、相手の状況を踏まえて行っていただきたいと思います。また情報とは何かという点で、議論されましたが、要は結論を急ぎすぎているとの意見もありました。ただ授業活動が限られた時間の中で実施するという点を考えますと、このご発表の内容につきましては、非常に優れていると高く評価がなされました。授業をされました山本先生がプレゼンテーションをなされば、もっと子供達が主体的にどう活動したのかという発表になったのではないかと思います。本日の受賞を機会に更に発展していただきたいと思います。
 次に湯島中学校での金井先生のご発表は、離島の中で先生の魅力がぴったりと一致した活動であり、子供達と一緒に考え、子供達が主体的に行うためには、先生達がどのようにサポートしていけば良いのか、「先生はサポート側だよ」という意識が非常に出ており、感動するご発表でありました。あくまで離島にこだわって子供達と一緒になって活動し、いろいろな主張をされているところが評価されました。ただ情報教育の目標をもう少し明確に打ち出していただければ他の先生方のご参考になると思います。7名の児童が居る離島という小さな社会での成功例ですが、この度、先生は大規模校に行かれましたので、大規模校において今後どのように実践されるのか審査委員一同関心をもっております。小規模校と大規模校の違いは非常に大きいものがあります。今までの努力を生かして大規模校に於いても、ますます情報教育の進展を図っていただきたいと思います。受け取られた賞金を島の子供達にも少しはメリットがあるように使っていただきたいという意見もありました。
 現在、高校の教科「情報」の免許取得が非常に大きな問題となっています。来年から3カ年かけて9千名の教員の免許取得講習会を行うたためのテキスト作りを行っております。12月には公表され、来年1,2,3月中に全国を5ブロックに分けて、講習会で指導する先生に対する協議会を開催することになっております。関西地区は、神戸大学で2月28日から行う予定であります。このように体制作りが遅れておりますが、2003年から高等学校普通科における教科「情報」がスタートできる体制を作りたいと頑張っております。
 上月教育財団のお陰をもちまして、我が国の情報教育がますます発展し、世界に負けない情報教育を受けた子供達を育てられればと考えております。
 本日は、上月理事長を始め関係者の方々およびお集まり下さいました皆様方に厚くお礼申し上げ、講評とさせていただきます。

1999年8月21日


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